横坂 源 チェロ・リサイタル
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2021年5月16日(日)14:00 柏崎市文化会館 アルフォーレ 大ホール
チェロ:横坂 源
ピアノ:加藤洋之
 
メンデルスゾーン:無言歌 作品109

シューマン:アダージョとアレグロ 作品70

メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 作品58

(休憩15分)

フォーレ :エレジー
      ロマンス
      蝶々
      夢のあとに
      シシリエンヌ

ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ 作品3

(アンコール)
サン=サーンス:白鳥
フォーレ:ロマンス
 

 新潟市出身で、活発な演奏活動をされている横坂源さんのリサイタルです。横坂さんは、2020年12月23日に2枚目のCD「シューマン&メンデルスゾーン」をリリースしましたが、その録音は2020年12-14日、柏崎市文化会館アルフォーレで行われました。そのCDリリース記念として、収録したホールでリサイタルが開催されることになりました。

 アルフォーレは世界的ピアニストのツィメルマンが絶賛したことで知られており、ツィメルマンもこのホールで収録したCDを発売しています。
 その音響的に素晴らしいホールで、CDに収録したプログラムを聴けるという貴重な機会であり、柏崎に遠征して聴かせていただくことにしました。
 しかし、当初は仕事の予定が決まらず、最近までチケットは買っていませんでした。コロナ対策で座席数を減らしてのチケット販売でしたので、チケットが買えるか心配しましたが、幸いネット購入できました。

 さて、私が横坂さんの演奏を聴くのは、5月2日の「東京グランドソロイスツ with 横坂 源」以来2週間ぶりですが、その前は2018年7月の「東京交響楽団東京オペラシティシリーズ第104回」以来ですので、3年ぶりになります。

 また、アルフォーレでのコンサートを聴くのは2019年2月の「クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル」以来2年ぶりになります。
 ちなみに、アルフォーレは2012年7月に開館し、9月30日に開館記念コンサートとしてNHK交響楽団演奏会が開催されましたが、そのときに共演したソリストが何と横坂さんでした。横坂さんとアルフォーレとの関係は深いですね。

 柏崎といえば、13年間単身赴任生活を送り、その後も10年間週1回定期的に仕事で通った思い入れの強い町です。その柏崎の駅前にアルフォーレがあり、隣には市役所が移転してきました。駅から近いですので、JRや高速バスで来ても便利な場所です。

 早めに家を出て、小雨が降るなか、国道402号→352号と、通い慣れた海岸沿いの道路を南下。途中某所に寄って休息し、アルフォーレ入りしました。
 この道は、新潟市からですと高い高速料金使うより便利です。私の家からでは安全運転で1時間半ほどで到着できます。寺泊から先はただ直進するだけです。柏崎市街地に入ってもひたすら直進を続けるとアルフォーレに着きますので、柏崎市内の道が分からなくても迷うことはありません。

 駐車場に車をとめて入館。2階のロビーに上がりますと、すでに10人ほどの客がおられました。その後自然に列ができ、この原稿を書きながら開場を待ちました。新潟市からの遠征組のお顔もちらほら見られました。

 時間となり、手の消毒、検温の後に、自分で半券を切って入場。自由席でしたので、前方左寄りの見通しの良い場所に席を取りました。ステージ中央にスタインウェイ、その前にチェロの演奏台が設置されていました。
 席は1席おきになっていましたが、その分大きな声でご婦人方はおしゃべりしておられました。どこへ行っても同じですね。
 混み合うものとばかり思っていたのですが、さすがに大きなホールですので、余裕をもって着席できました。早く来て並ぶ必要もなかったようです。ホールはチェロリサイタルにしては大きすぎかもしれません。

 開演のチャイムが鳴り、横坂さん、加藤さん、譜メクリストが登場して演奏開始です。1曲目はメンデルスゾーンの「無言歌」です。まず、朗々と響き渡るチェロの音量の豊かさに驚きました。爽やかなメロディの曲ですが、重厚感も感じさせ、ふくよかな音色に感銘しました。この曲の印象が、そのまま今日のコンサート全体の印象と重なったように思いました。

 続いてはシューマンの「アダージョとアレグロ」です。ゆったりとしっとりとアダージョを演奏し、速いパッセージのアレグロへ。低音から高音までがふくよかで美しく、ロマンあふれる音色で楽しませてくれました。

 ここで一旦ステージから去り、横坂さんのみ出てきて挨拶と曲目の解説がありました。その後再びステージから降りてひと休みし、ピアノと譜メクリストとともに再登場し、前半最後は今日のメインともいうべきメンデルスゾーンのチェロソナタ第2番です。
 第1楽章は、軽快なピアノとチェロとが絶妙に絡み合いながらロマンあふれるメロディを歌い上げました。第2楽章は、軽やかなピアノとともにピチカートが美しく音楽を刻み、第3楽章は、甘いピアノとともにゆったりと歌い上げました。そして第4楽章はスピードアップし、ピアノとチェロがせめぎ合いながら明るく軽快に音楽を奏で、熱を帯びながら駆け上がりました。なかなか聴き応えがある曲であり、演奏でした。

 休憩時間が終わり、開演のチャイムが鳴ってしばらくしてステージに登場しました。後半最初はフォーレの小品が5曲です。
 「エレジー」は、物悲しくしんみりと、切々と訴えるチェロの低音の美しさにうっとりしました。「ロマンス」は、揺れ動く心を情熱的に奏でました。「蝶々」は、明るくスピーディであり、蝶というより蜂が飛んでいるかのような軽快感を感じました。「夢のあとに」は、美しいメロディをむせび泣くように演奏し、せつなく心に迫りました。「シシリエンヌ」は、しっとりとゆったりと歌わせましたが、甘くなりすぎず、秘めた情熱も感じさせました。

 ここで一旦退場してひと呼吸置き、最後はショパンの「序奏と華麗なるポロネーズ」です。ゆったりと美しくメロディを歌わせた序奏に続いて、明るく軽やかにポロネーズを歌い上げて、プログラム最後を飾るに相応しい感動を与えてくれました。

 大きな拍手に応えて、アンコールとしてサン=サーンスの「白鳥」をしっとりと演奏し、さらに鳴り止まない拍手に応えて、加藤さんと相談の後、後半に演奏したフォーレの「ロマンス」をもう1度演奏して終演となりました。

 音量豊かに朗々としたチェロ。軽やかに、美しく透明感のあるピアノ。それぞれがうまく絡み合っていました。熟練のピアノは自己主張を過度にすることはありませんでしたが、存在感を失うことはなく、しっかりとチェロをサポートし、聴き応えある音楽を創り出していました。

 ただし、多彩な曲が演奏されたはずなのですが、印象はどれも共通した感じであり、一本調子かなとも感じられなくもなく、もっと演奏の幅があったらさらに良かったかなと感じました。
 でも、素晴らしい響きのホールと相まって、低音から高音まで、チェロの響きの美しさは特筆すべきであり、ピアノも美しく響いていました。

 素晴らしいホールでの素晴らしい演奏。いい音楽を聴き、大きな満足感をお土産に、新潟へと海岸の国道を北上しました。

 

(客席:1-9-13、¥3000)