東京グランド・ソロイスツ with 横坂 源
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2021年5月2日(日)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
東京グランド・ソロイスツ
  バンドネオン:三浦一馬  ソロヴァイオリン:石田泰尚 ほか
ゲスト・チェロ:横坂 源
 

〜ピアソラ・ザ・ベスト〜

リベルタンゴ
オブリビオン
ツィガーヌ・タンゴ
ブエノスアイレスの冬 (横坂)
ル・グラン・タンゴ (横坂)

(休憩20分)

デリカシモ
ブエノスアイレス午前零時
現実との3分間
螺鈿協奏曲

(アンコール)
カランブレ
天使の死
アレグロ・カンタービレ (横坂)

 今日の公演は、りゅーとぴあ室内楽シリーズNo.41に位置づけられ、東響新潟定期会員のS会員の特典として開催され、一般にはS会員席以外が発売されました。

 バンドネオン奏者の三浦一馬さんが、ピアソラを演奏するために2017年に結成した室内オーケストラが東京グランド・ソロイスツであり、そのメンバーはソロヴァイオリンの石田泰尚さんを中心に実力者揃いです。
 
 三浦さんは2018年11月に、「三浦一馬 キンテート2018」というコンサートを新潟で開催しており、石田泰尚さんらとともに、興奮と感動のステージを聴かせてくれて、スタンディングオベーションの熱狂を生みました。
 また、石田泰尚さんは自身の弦楽アンサンブルの「石田組」として2016年8月に新潟に来演しており、硬派な外見とは裏腹の流麗で繊細な演奏を聴かせてくれて感動したことを覚えています。
 今回も素晴らしい演奏が期待されますし、新潟公演は新潟が世界に誇るチェリスト・横坂 源さんが共演するということで、注目されました。

 この公演は「歓声・声援が想定されない公演は収容率100%以内」とする政府、新潟県、新潟市の方針に基づいて客席制限は行わずに販売されましたが、横坂さん人気も伴ってチケットの売れ行きはよく、4月24日の時点で9割の販売となり、不安を感じる方には払い戻しに応じるという案内まで出されました。


 GW真っ只中ではありますが、天候は優れず、新型コロナ禍でふさぎこんだ生活が続いています。行楽に出かける状況ではなく、安全対策に注意しながら、昨日に引き続いて音楽を聴かせていただくことにしました。

 休日の朝、ゆっくりと寝ていようと思うのですが、こういうときに限って目が覚めるのが常です。昨日のコンサートの記事を書いて更新し、近くのスーパー銭湯で朝湯をいただきました。ゆっくりと昼食を摂り、小雨が降り、強風が吹き荒れる中に、りゅーとぴあへと車を進めました。
 駐車場に車をとめ、急ぎ足で入館。インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、開場を待ちました。時間となり、開場開始とともに入場しました。
 チケットは自分で切るシステムなので、前の人が入場したタイミングで切ったら、切るのが早いと叱られました。円滑な入場に協力したつもりなんですけれどね。

 この原稿を書きながら開演を待つうちに、客席ははどんどんと埋まり、P席に空席がある程度で、9割以上の入りです。コロナ禍が始まって以来最高の集客じゃないでしょうか。密集・密接状態で心配になりましたが、マスクして無言であれば問題ないでしょう。
 しかし、相変わらず高齢のご婦人方を中心に客席でのおしゃべりが賑やかでした。客席での会話は控えるようにアナウンスが1度だけありましたが、それくらいでは効果はないでしょうね。おしゃべり禁止のプラカードを持って場内を巡回していただきたいです。

 開演時間となり、メンバーが入場。中央に三浦さん。それを取り囲むように、左にソロヴァイオリンの石田さんのほか、ヴァイオリンが6人、中央にチェロ2人、その後方にコントラバス2人、右にヴィオラ2人、その横にエレキギター、右後方にドラムス、左後方にピアノです。
 チェロには昨日素晴らしい演奏を聴かせてくれた西谷牧人さんも出演され、2日連続の新潟での演奏となります。ご苦労様です。

 最初は「リベルタンゴ」。ピアソラの曲では最も知られた曲ですが、軽快に刻むタンゴのリズムで、一気にホールを埋めた聴衆の心を鷲掴みにしました。ソロヴァイオリンの石田さんがコンサートマスターということになりましょうが、大きく足を広げて存在感抜群です。
 その後私が大好きな「オブリビオン」を情感豊かに演奏し、さらに「ツィガーヌ・タンゴ」と、バンドネオンと弦楽アンサンブルの絶妙に絡み合う美しさに心奪われました。

 ここで全員が一旦退場して、三浦さんの席の右にチェロの演奏台と椅子が運び込まれました。その後メンバーが入場し、最後に三浦さんと横坂さんが登場し、大きな拍手が贈られました。
 そして前半最後の2曲は横坂さんとの共演による「ブエノス・アイレスの冬」と「ル・グラン・タンゴ」です。チェロ協奏曲とは違って、横坂さんがメインというということではないですが、横坂さんは音量豊かにメロディを奏で、存在感を発揮していました。特に「ル・グラン・タンゴ」での熱気を帯びた激しい演奏は横坂さんの新たな魅力を知らしめてくれました。

 休憩後の後半は、再び横坂さんなしでの演奏です。「デリカシモ」、「ブエノス・アイレス午前零時」、「現実との3分間」と、激しいリズムと美しい弦楽アンサンブル、時折みせる石田さんの繊細なソロ、哀愁漂うバンドネオンの響きと、ピアソラの魅力を存分に楽しませていただきました。
 そして最後の「螺鈿協奏曲」は3楽章からなるバンドネオン協奏曲というべきものです。三浦さんと石田さん率いるアンサンブルとの絶妙なせめぎ合いに圧倒され、大きな感動の中に予定のプログラムは終演となりました。

 盛大な拍手に応えてアンコールとして「カランブレ」と「天使の死」を激しく情熱的に演奏してホールに感動と興奮をもたらしました。
 これで終演かと思ったのですが、ここで三浦さんの挨拶があり、三浦さんのトークの間に前半と同様にチェロの演奏台が設置され、アンコールの最後として、横坂さんも加わって「アレグロ・カンタービレ」が演奏されました。横坂さんが目立つ編曲ではなく、アンサンブルの一員という感じでしたが、最後を飾るにふさわしい情熱的な演奏で締めくくってくれました。

 横坂さんと三浦さんが退場した後、石田さん(組長)の指示(命令)で、団員がステージの四方に全員で礼をして、サービス満点の中にお開きとなりました。

 横坂さんの出番が少なかったようには思いましたが、三浦さんのバンドネオンの素晴らしさを再認識し、ピアソラをまとめて楽しめた貴重な機会でした。
 そして石田さん率いる弦楽アンサンブルの美しさも特記しなければなりません。特にヴァイオリンのふくよかな音色にうっとりする場面も多かったです。随所に石田さんのソロが出てきましたが、外見に似合わず繊細な音でした。ギターもスパイスのように味付けし、リズムを刻むドラムスもいい仕事をしていました。さすがにピアソラを演奏するために集められた選りすぐりのソリストたちですね。

 ピアソラ生誕100周年の年に、ピアソラを素晴らしい演奏で存分に堪能できて良かったです。外へ出ますと寒風が吹き荒れていましたが、心は熱かったです。
  


(客席:2階C*-*、東響定期会員招待)