新潟室内合奏団第86回演奏会
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2022年11月5日(土) 18:45 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:喜古惠理香
ピアノ:大瀧拓哉
 
ニコライ:「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

シューベルト:交響曲第3番 D200

(休憩15分)

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15

(ソリストアンコール)
バルトーク:三つのチーク県の民謡(BB 45b Sz 35a)

 今夜は久しぶりに新潟室内合奏団の演奏会に参加させていただくことにしました。演奏会は、土曜日の18時45分の開演であり、私にとりましては行きやすいようでいて行きにくい時間帯であり、行きたくてもいけないことが多いのが実情です。日中の開催ですと、もっと行けると思うのですけれど。まあ、このオケの伝統ですので仕方ないですね。
 ということで、新潟室内合奏団の演奏会は、2021年5月の第83回演奏会以来1年半ぶりであり、久しぶりの演奏会参加となりました。
 今回はソリストとして大瀧拓哉さんが共演し、ブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏するとのことで、これは何としても聴かねばなるまいと考え、スケジュール調整して演奏会に臨みました。

 大瀧拓哉さんといえば、新潟出身の若手ピアニストとしては、最も活躍されておられ、その実力は誰もが認めているものと思います。
 大瀧さんの演奏は2021年1月のリサイタルのほか、これまで何度か演奏会を聴かせていただきましたが、協奏曲の演奏を聴いたのは、2018年3月の新潟セントラルフィルハーモニ管弦楽団特別演奏会(指揮:磯部省吾)が最初で、そのときはショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番とチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏し、神懸り的な熱い演奏に感動しました。
 そして2021年1月の新潟室内合奏団第82回演奏会(指揮: 高橋裕之)では、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を演奏し、美しいピアノの響きで魅了されました。
 協奏曲を聴くのは今回が3回目となりますが、今回はブラームスということで、どんな演奏を聴かせてくれるのか期待は高まりました。

 また、指揮の喜古さんは、2018年6月の第77回演奏会以来4年振りの登場になりますが、前回は聴けませんでしたので、私は今回が初めてになります。煩悩だらけの私としましては、若くて美しい指揮者というのも楽しみでした。

 演奏会の構成としては、プログラム前半に序曲や協奏曲、後半に交響曲を置くのが普通だと思いますが、今回は後半に協奏曲を置かれました。
 ブラームスのピアノ協奏曲をなかなか振る機会がなかった喜古さんと、ブラームスのピアノ協奏曲を演奏したことがなかったオケの希望とが合致してこの曲が選曲され、大瀧さんも快く引き受けてくれて、メインプログラムとして決まったそうです。
 後半が重量級のブラームスの協奏曲となりましたので、前半はウィーンゆかりの軽やかな序曲と交響曲が自然に決まったのだそうです。三者三様の思いがあってのプログラムですが、大いに楽しませていただこうと思います。

 今日は午前中は雑務をこなし、午後はNHK-BSPで放送された「蜜蜂と遠雷」を観て感動しました。夕方5時過ぎに家を出て、某所で早目の夕食を摂り、白山公園駐車場へと車を進めました。
 駐車場に車をとめ、白山公園の歩道で空を見上げますと、月と星が出ていて、寒々とした中にも、清々しさを感じました。水面に紅葉の木々が反射し、思わずカメラのシャッターを切りました。
 りゅーとぴあに入りますと、すでに開場されており、チラシ集めをした後に入場しました。今回は音楽文化会館でなくて、大きなコンサートホールですので、それほど混み合うこともなく、いつもの2階正面に席を取りました。

 配布されたプログラムを見ながら開演を待ちましたが、賛助出演がかなりを占めているようです。オケの配置は通常の並びで、弦5部は、7-6-5-4-2、コンサートマスターは井口歩さんです。

 喜古さんが登場して、最初はニコライの「ウインザーの陽気な女房たち」序曲です。最初の序奏の弦を聴いて、今日の演奏会の成功が確信されました。美しいアンサンブルでメロディを歌わせて、弦も管も美しく、アマオケというのも忘れるほどに、うっとりと聴き入りました。

 ステージ転換されて、管と打楽器が少なくなって、2曲目は、シューベルトの交響曲第3番です。喜古さんが登場して演奏開始です。
 重厚な出だしの後は颯爽と爽やかに演奏が進み、生命感と躍動感を感じさせました。第2楽章は穏やかに優しく、第3楽章は軽快にリズムを刻み、第4楽章はグイグイと加速し、たたみかけるようにフィナーレへと疾走し、否が応でも高揚感を感じさせました。
 全体として速めの演奏で、シューベルト18歳時の作であるこの交響曲の魅力を、明るく躍動感のある演奏で知らしめてくれました。
 これら前半の2曲だけでも十分に満足できる演奏でした。若き指揮者の魅力が如実に示され、具現化したオケの素晴らしさを実感しました。

 休憩後の後半は、いよいよブラームスのピアノ協奏曲第1番です。オケが入場してチューニング。大瀧さんと喜古さんが登場して開演しました。
 重厚な長い序奏が続き、待ちくたびれたところで大瀧さんのピアノが入りました。弦の編成が小さい室内オケですので、音の厚みには欠けますが、ブラームスの世界が十分に醸し出されていました。
 煌めくようなピアノはさすが大瀧さんであり、心を奪われました。美しいメロディを歌わせ、力強い打鍵でオケとせめぎ合い、メラメラと思え上がる感動を与えて、長大な第1楽章をしめました。
 穏やかさの中に、暗さ、胸を締め付けるような切なさを感じさせ、その思いが静かに燃え上がる第2楽章。クリスタルのように透明感のあるカデンツアに魅了され、美しいオケと共に楽章を閉じました。
 そして第3楽章は一転して激しく躍動し、ピアノとオケとが絡み合い、せめぎ合い、高め合い、熱い血潮がみなぎり、高揚感で胸が高鳴りました。これぞブラームスという重厚感と力強さと共にフィナーレを迎え、ノックアウトされました。
 喜古さん率いるオケと大瀧さんのピアノ。今日の演奏会のメインに据えただけある力強い、熱気に満ちた演奏でした。大瀧ワールドの炸裂というべき感動の演奏でした。

 ホールの聴衆に大きな興奮をもたらし、大瀧さんと喜古さんに花束が贈られました。拍手に答えての大瀧さんのアンコールは、お得意のバルトーク。この洒落た選曲は大瀧さんならではでしょう。濃厚なブラームスの後に、爽やかな感動を与えて、白熱の演奏会は終演となりました。

 新潟室内合奏団の素晴らしさ、そして大瀧さんの素晴らしさ。新潟出身でこのようなピアニストがいることは誇るべきですね。今後のさらなる発展を応援したいと思います。次はリサイタルを、このコンサートホールでやっていただきたいですね。次に演奏を聴く機会を楽しみに待ちたいと思います。

 大きな感動を胸にホールを出ますと、この演奏会に来ておられた同業の同級生にばったり。お元気そうで何よりです。今後のさらなるご活躍をお祈りします。
 ライトアップされた公園の木々眺めながら駐車場へと急ぎ、家路に着きましたが、夜が更けて下がった気温とは裏腹に、いい音楽を聴いた感動で心は熱いままでした。
 

 と、素晴らしい演奏だったのですが、残念なことがありました。後半開始前に、前半は無人だったPブロックに子供が1人うろうろしていて、どうしたのかと思ううちに開演時間となり、父親らしき人と共に最前列に着席しました。ステージ周囲のブロックは無人でしたが、P席最前列に父子が二人。いやでも目立っていました。
 ステージ周囲のブロックは前半は無人でしたので、開放されていないものとばかり思い、係員に移動を促されるものと思っていましたが、そのまま後半に入ってしまいました。
 一抹の不安を感じる中にオケが入場し、大瀧さんと喜古さんが登場して演奏が始まりましたが、すぐに開演前に感じた不安は現実のものとなりました。
 Pブロック最前列にいた子供は演奏中に立ち上がり、Pブロックを歩き回っていました。親はたしなめる様子もなく、精神修行の足りない私はイライラ感が募りました。なんせ正面ですから、いやでも視界に入ってきます。転倒・転落の危険も感じさせ、心配になるほどでした。
 ほかに誰もいないPブロック最前列に席を取った理由があったのでしょうが、ホール内で一番注目が集まるあの場所に座るからには、それなりの覚悟と最低限のマナーを持つことが必要だと思います。静かに聴いていられない子供を座らせた親の責任は大きいと思います。
 さすがに第1楽章終了とともに、父子はPブロックから排除されましたが、開演前に係員が席の移動を促さなかったことが悔やまれます。
 開館以来、りゅーとぴあ通いも24年になりますが、こんな事態はこれまでなかったように思います。まさに前代未聞と、こんなことがあったことを、後日の話の種に取っておきたいと思います。

 

(客席:2階C3-7、\1000)