今年もこの日を迎えることができました。今日は新潟市ジュニアオーケストラ教室の演奏会です。毎年同じことを書いていますが、私はこの日を楽しみに、歯を食いしばって1年を生きています。
ジュニア・オケの演奏は、疲れた私の心にパワーを与えてくれて、音楽の喜びを、生きる喜びを知らしめてくれます。プロの演奏では経験できない感動がそこにあります。
ベルリン・フィルが来ようが、ウィーン・フィルが来ようが、私はジュニア・オケを選びます。そういう思いは決して揺らぐことはなく、毎年欠かさず万難を排して駆け付けています。
今日は北区文化会館で小林愛実さんのリサイタルの開催が早くから発表されており、実は楽しみにしていたのですが、後からジュニア・オケの開催日が同じ日だと判明しました。でも悩むことなく、当然ジュニア・オケを選びました。
昨年の第40回演奏会は、チャイコフスキーの「悲愴」がメインプログラムでしたが、新潟市ジュニア音楽教室内でのコロナ感染拡大のため、直前になって中止が決定されましたので、今回は2年ぶりの開催となります。
2020年の第39回演奏会は、コロナ禍で練習もままならない状況にも関わらず、「シェエラザード」の神懸かり的演奏で圧倒されました。
今年は気分も新たに、ドヴォルザークの「新世界より」がメインプログラムとなりました。また、今年は8月21日に「ジュニアオーケストラ・フェスティバル」が新潟で開催され、A合奏は「威風堂々のテーマ」、B合奏はチャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」を演奏しましたが、これらも今回の演奏会のプログラムになっています。1度本番をこなしていますので、さらに完成度の高い演奏が聴けるものと期待されます。
なお、メインの「新世界より」は、2015年の第34回演奏会以来7年ぶりになりますが、現在の団員としては初めての演奏になるものと思います。
さて、全国に数あるジュニアオーケストラのほとんどは、団員をオーディションで選抜してていますが、新潟市ジュニアオーケストラ教室は、全くの初心者から受け入れて、単科教室→A合奏→B合奏と、進級していくシステムをとっています。そのため、「ジュニアオーケストラ」ではなく「ジュニアオーケストラ教室」なのですが、この新潟独自のシステムは全国に誇るべきものだと思います。
このような地方のジュニア・オケが、始めから全ての団員をオーディションで選抜している都会のジュニアオーケストラと対等に渡り合い、むしろ凌駕するほどの演奏を聴かせてくれるというのは驚異的だと思います。これも指導者の素晴らしさがあってのことでしょう。
ジュニアオーケストラと言っても、大学生まで団員にしているところも多々ありますが、新潟市のジュニア・オケの団員は高校3年生までです。そして、高校3年生の最後の演奏が今日の演奏会であり、今日が卒団の日となります。そんな特別な演奏会に臨む団員の思いが聴く者の心に伝わり、感動を倍加させるものと思います。
また前置きが長くなってしまいました。新型コロナ感染の第7波は減少傾向にはありますが、まだまだ予断を許さない状況が続いています。緊張を強いられる生活が続いていますが、この日を希望の光として頑張ってきました。
昨日は雨が降って、ジメジメして心も暗くなるような1日でしたが、今日は朝から晴れ渡り、青空が眩しく感じられました。
早めに家を出て、快晴の空の下、気分良く車を進めました。白山公園駐車場に駐車しようと思いましたが、周辺を含めてどこも満車で、かなり遠くのコインパーキングに駐車しました。陸上競技場で陸上競技の大会が開催されていて、そのための混雑のようでした。
上古町の某所で、いつもの絶品冷やし中華をいただき、幸せ気分で上古町を歩き、白山神社を抜けました。まだ時間がありましたので、白山公園の遊歩道を一巡りし、初秋の爽やかな空気を味わいました。陸上競技場からはスタートの号砲が聞こえ、歓声がこだましていました。
りゅーとぴあに入りますと、多くの人たちでロビーは賑わっていました。今日は劇場や能楽堂でも公演があり混雑しているようでした。
チラシ集めをして、ロビーをうろついていますと開場時間となりました。入場の混雑が落ち着くのを待って入場しますと、ほどなくしてステージでウェルカム・コンサートが始まりました。今回はないものと思っていましたので、得した気分でした。
6つのグループがアンサンブル演奏を聴かせてくれましたが、いずれもジュニアらしからぬ素晴らしい演奏でした。特に弦楽四重奏が聴き応えがありました。
開演時間となり、まずはA合奏です。先日のジュニアオーケストラ・フェスティバルのときと同様に、弦の編成は2-2-3-4-2です。弦の人数の少なさが残念ですが、それに比して管は、フルートが4、トランペットが5などと多く、編成のアンバランスさが気になりました。小中学生からなる団員は、いかにもジュニアという感じで、ほのぼのとした雰囲気を感じさせました。
藤井先生が颯爽と登場し、モーランの「トレパーク」で開演です。全く馴染みのない曲ですが、ジュニアにぴったりのほのぼのとした曲で、最初からしっかりとオーケストラの音を聴かせてくれました。
団員による挨拶があって、2曲目は、ジュニアオーケストラ・フェスティバルで演奏した「威風堂々のテーマ」です。エルガーのメロディを元に、ウッドハウスが初級者用に編曲した曲ですが、聴き馴染みのない部分もあって、なかなか楽しめる曲です。先回同様に、初級者なりに良くまとまった演奏でした。
3曲目は、「ファランドール」です。これは素晴らしい演奏でした。このアンバランスな編成のオケから、迫力あるサウンドを聴かせてくれました。藤井先生の指導の賜物と思いますが、ブラボーものの演奏だったと思います。
ステージが整えられている間に団員の挨拶があり、いよいよB合奏です。弦5部は、11-13-7-7-5と、ジュニアオーケストラ・フェスティバルのときより若干多くなっていました。
今回で新潟から離れる永峰さんが登場して、チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」です。ジュニアオーケストラ・フェスティバルのときと同様に、切れのある演奏で、若さとパワーがみなぎり、ジュニアならではの躍動感あふれる演奏でした。ジュニアの枠を外しても高水準の聴き映えのする演奏だったと思います。さすがB合奏と、その実力を再認識しました。
休憩後の後半は、メインのドヴォルザークの「新世界より」です。出だしの低弦による序奏から一気に演奏に引き込まれました。パワーとスピード感を感じさせる演奏で、グイグイとドライブする永峰さんの指揮に見事に応えて、迫力ある演奏を聴かせてくれました。
第2楽章の聴かせどころも何とか乗りきってくれました。イングリッシュホルンは専任ではなく、オーボエのトップが持ち替えで演奏しており、大変ご苦労様でした。
第3楽章もパワーと躍動感に溢れ、アタッカで突入した第4楽章もお見事。これほどワクワクさせるエネルギッシュな演奏は、なかなか聴けるものではありません。
アマオケ、それもジュニアですから、当然ほころびもありましたが、全体としてみれば些細なことに過ぎません。ジュニアならではの生命感・躍動感に溢れる演奏には、プロの演奏からは感じられない何かがあります。それがわれわれ聴衆の心に響き、揺り動かすものと思います。演奏技術を論じることなど意味がないことを、ジュニア・オケの演奏が知らしめてくれます。プロ野球にない感動が高校野球にあるようなものでしょうか。
カーテンコールでは、永峰さんはホルンを真っ先に立たせましたが、確かにいい仕事をしてくれました。各パートを順に讃えて、ホールの熱気は最高潮となりました。
オケのメンバーが追加され、オルガンがスタンバイして、いよいよアンコールの「威風堂々」です。これが本日の一番の楽しみです。
演奏は何も言うことはありません。高校3年生の最後の演奏であり、卒団の曲です。今回は永峰先生最後の演奏でもあります。
そんな思いが幾重にも加重され、言葉では表現しきれない感動が胸に込み上げ、お馴染みの主題が流れてきますと胸は高鳴り、最後にオルガンが大音量で加わりますと、もはや平常心ではいられず、感動の涙がこぼれ落ちてきました。
演奏が終わるとともに、力の限り拍手をして、その演奏を讃えました。最後にコンマスとともに全員が礼をして、興奮と感動の演奏会は終演となりました。
この感動は何なんでしょうね。プロオケを高額な料金を払って聴いても、これほどの感動はめったに味わうことはできません。プロとしての仕事を、当たり前のように業務としてこなすプロオケの演奏と、この日限りの、たった1回の演奏に全力を注ぐジュニア・オケとの違いでしょうか。
今年も期待を裏切らない演奏でした。来年の第42回演奏会を目標に、また1年頑張って生きていくことができそうです。もちろん、その前の3月末のスプリングコンサートも楽しみにしたいと思います。
新潟市ジュニアオーケストラ教室、そしてジュニア音楽教室は、新潟市が全国に誇りうる宝です。次代を担う子どもたちをこれからも応援していきたいと思います。
(客席:2階C5-11、¥700) |