いよいよ2019年も終わりです。1年の終わりはやっぱり「第九」ですね。新潟のオケと新潟の合唱団による新潟のための「第九」。毎年欠かさず聴いていますので、今年も聴かないわけには行きません。もう年中行事ですものね。
　先週はキエフ国立フィルハーモニー交響楽団による「第九」があったのですが、諸般の事情によってパスして、この「第九」に臨みました。

　昨年の指揮者は伊藤翔さんでしたが、今回の指揮者は、今年6月の定期演奏会から新潟交響楽団を指揮し、11月の定期演奏会でも素晴らしい演奏を引き出してくれた大河内雅彦さんです。「新潟第九」は初登場であり、どんな演奏を聴かせてくれるのか期待が高まりました。

　また、独唱陣は毎回異なり、これもまた楽しみです。今年はバリトンに、小鉄和弘さんが登場。かつて毎年春先に行われていた「りゅーとぴあオペラ劇場」のプロデューサーとしてすっかりお馴染みでしたが、2017年を最後にそのシリーズがなくなって、久しぶりの来演です。なお、アルトは当初は有田真恵さんの予定でしたが、松本やすこさんに変更になりました。

　スーパー銭湯で汗を流し、昼食を摂ってりゅーとぴあ入りしました。ちょうど開場時間となり、早めに入場しました。毎度ながら、強気にSS席まで設定されている人気公演ですが、例年通り今回も3階正面後方の、S席のすぐ後のA席です。
　客席の各所とステージ上には公演を収録するテレビカメラがありました。開演時間が近づくにつれ、客席は埋まり、ほぼ満席のホールは壮観です。
　ステージ周りに、左からEブロックにソプラノ、Pブロックにテノールとバス、Aブロックにアルトと、合唱団が開演15分前頃から着席してスタンバイしていました。

　拍手の中に潟響の皆さんが入場。最後にコンミスの松村さんが登場して大きな拍手が贈られました。弦の編成は、13-11-8-7-7と若干小振りです。

　大河内さんが登場してモーツァルトの「劇場支配人」序曲で開演しました。テレビ朝日の「題名のない音楽会」のテーマ曲として聴きなれたメロディが軽快に奏でられ、「第九」の前の前菜としましては、上等すぎる演奏だったと思います。

　休憩なしに「第九」の演奏開始です。第1楽章、第2楽章とも、大河内さんは、ちょっと速めのスピードで、軽快にグイグイとオケをドライブし、爆発するようなティンパニの頑張りもあって、緊張感溢れる中にも爽快感を感じさせる演奏でした。管楽器の聴かせどころも抜かりなく決めて、聴く側に息つく間も与えず、楽章間に咳をする人もいないほどでした。

　ここでティンパニ以外の打楽器奏者が入場し、その後に独唱者4人が静かに入場して、オケの後方に着席しました。

　第3楽章はゆったりと穏やかに歌わせ、これまでの緊張感から解きほぐし、嵐の前の静けさの中に、安らぎの美しいメロディで癒しを与えてくれました。

　そして第4楽章へ突入。各楽章のテーマが奏でられ、それを否定する低弦の響き。その後チェロとコントラバスで奏でられる「歓喜の歌」のメロディにヴィオラが加わり、さらにヴァイオリンが加わって、オケ全体で「歓喜の歌」を高らかに歌い上げました。
　バスの小鉄さんが起立するとともに、合唱団も一斉に立ち上がり、合唱団席に照明が当てられ、否が応でも胸が高鳴りました。
　小鉄さんの歌声はお見事でしたが、他の3人はもう少し存在感がほしかったかなというのが正直な印象です。合唱団はお見事でした。しっかりと練習が積まれ、美しいハーモニーでホールを満たしました。
　大河内さんはこれまでと同様に、オケを力強くドライブし、フィナーレへ向かってアクセルを踏んでスピードアップしました。アンサンブルが乱れることなく全速力で駆け抜けるオケの素晴らしさもあって、興奮のフィナーレを迎えました。

　カーテンコール、花束贈呈の後、ソリストもオケ後方の席に戻って、アンコールは「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。興奮を鎮める美しいハーモニーで聴衆を癒してくれました。

　新潟交響楽団と新潟第九合唱団の頑張りにより、期待にたがわぬ感動をいただきました。1年を締めくくるにふさわしい演奏だったと思います。

　新潟交響楽団による「第九」の演奏は1969年に始まり、今年で50年にもなります。その後いろんな主催形態での「第九」演奏を重ね、現在の実行委員会による自主公演の「新潟第九コンサート」になってからも20年の節目を迎えました。
　市民の手作りによる市民のための「第九」は、演奏技術でプロにかなうわけはありませんが、プロの演奏でも味わえない感動をいただけます。これからも歴史を積み重ね、新潟の伝統として次代へとつなげていただきたいと思います。

　コンサートの模様は、12月31日午前8時55分からBSNテレビで放送されますので是非ご覧ください。

　と、カラヤン指揮ベルリンフィルのＣＤを聴きながら原稿を書いていますが、今日の演奏とそれほどの大きな差は感じません。アマチュアながらも素晴らしい演奏だったことを再確認しました。 　

（客席：3階：I 7-27、A席：￥2000）