新潟交響楽団第104回定期演奏会
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2019年11月23日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:大河内雅彦
ピアノ:小黒亜紀
コンサートミストレス:松村牧子
 


ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調

(ソリストアンコール)
ラフマニノフ:13の練習曲 Op.32-12

(休憩15分)

チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調

(アンコール)
チャイコフスキー:バレエ「眠りの森の美女」より ワルツ

 今日は待ちに待った新潟交響楽団の定期演奏会です。個人的には、この秋、いや今年で最も注目されるコンサートと言っても良いでしょう。
 その理由は、コンチェルトのソリストとして出演される小黒亜紀さんです。私にとっての新潟のスターは、ヴァイオリンなら加藤礼子さん、チェロは渋谷陽子さん、そしてピアノは小黒亜紀さんです。その小黒亜紀さんが出演され、曲目がラフマニノフの2番とくれば、これは聴かないわけにはいきません。

 新潟には数多くのピアニストが活躍されていますが、その中でも絶大な人気を誇るのが小黒亜紀さんです。愛らしい美貌とは裏腹の、情熱に満ちたパワーあふれる演奏が魅力です。
 多彩な活動をされており、これまで何度も演奏を聴かせていただいていますが、協奏曲を聴く機会は少なく、2017年5月に、新潟室内合奏団とのメンデルスゾーンのピアノ協奏曲を聴いて以来です。

 今日の演目であるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、以前に小黒さんが一番弾いてみたい曲と話されていた曲です。
 りゅーとぴあでのアウトリーチ活動の集大成として開催された2017年1月のリサイタルで、中川賢一さんとともに2台ピアノ版を演奏していますが、そのときの圧倒的な演奏は、今なお記憶の中に残り続けています。
 いつの日かフルオーケストラとの共演で聴いてみたいと夢見ていましたが、それがついに実現するわけですから、期待は高まるばかりでした。これは万難を排して聴かねばならず、指定券まで買ってこの日を待ち焦がれていました。

 今日は朝から快晴の空。小黒さんの晴れ舞台を祝うかのような上天気です。スーパー銭湯で体を清め、気合いを入れてりゅーとぴあへ行きますと、開場30分前に関わらず開場待ちの列が長く延びていました。でも今日は動じません。指定券買ってましたから。

 屋上に上がって遊歩道を一回りし、過ぎ行く秋の日差しを満喫しました。眼下を流れる信濃川。遠くに紅葉に赤く色づく山々。振り返ればくっきりと浮かび上がる佐渡の山並み。陸上競技場ではサッカーの試合が行われ、歓声が賑やかでした。吹き抜ける風は暖かで、気分爽やかです。

 時間を見計らって2階に降り、おもむろに入場しました。開演時間が近づくにつれ、客席は埋まり、かなりの入りとなりました。盛況で何よりです。
 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。最後にコンミスの松村さんが入場して一礼し、一段と大きな拍手が贈られました。

 最初はショスタコーヴィチの「祝典序曲」です。小黒さんの晴れ舞台を祝うにふさわしい選曲であり、素晴らしい演奏に酔いしれました。P席にバンダが登場してのクライマックスでは感動が胸に込み上げ、高水準な潟響の演奏に驚嘆しました。

 照明が落とされた中、ステージにピアノが設置され、いよいよラフマニノフのピアノ協奏曲第2番です。緑がかったブルーのドレスの小黒さんが登場し、演奏開始です。ピアノにより教会の鐘が鳴らされ、壮大で抒情性あふれる音楽がホールいっぱいに花開きました。
 超絶技巧を要求する難曲を、堂々と力強く弾き、娘の晴れ舞台を見守る父親の如く、目頭を熱くしながら聴いていました。やっぱり小黒さんは素晴らしいですね。
 それにも増して、バックを支える潟響の素晴らしさ。こんなにも美しい演奏をするなんて・・。特に弦楽の美しさには息を呑みました。
 新潟のピアニストで、新潟のオケで、これほどまでに感動の音楽を聴けるというのは幸せです。興奮のフィナーレを迎え、力の限りに拍手しました。
 ラフマニノフつながりのアンコールも良かったです。輝きのあるピアノの素晴らしさ。新潟に小黒ありを知らしめてくれました。これからの益々の発展を確信しました。

 休憩後はメインのチャイコフスキーの4番です。冒頭の力強いファンファーレからばっちりと決まり、各パートとも抜群のパフォーマンスを発揮してくれました。この曲の特徴である管楽器のメロディの受け渡しもきれいであり、雄大に流れる音楽に身を委ねました。
 切れの良いピチカートからアタッカで突入する怒涛の第4楽章。迫力満点の音楽に圧倒され、潟響の素晴らしさを再認識しました。
 フィナーレでの大河内さんの煽り加減も素晴らしく、否応なしに興奮させられました。高鳴る鼓動を鎮めてくれたアンコールの美しさも特筆すべきでしょう。小黒さんのことばかり書いちゃいましたが、潟響の素晴らしさ、新潟に潟響があることの喜びを実感しました。

 感動を胸に外に出ますと、夕暮れ時ながらもまだ気温は高く、日没前の夕日がまぶしく照り付けていました。穏やかな勤労感謝の日。天候にも恵まれ、いい休日を過ごせて幸せでした。

 なお、次の第105回定期演奏会は、令和2年6月28日(日)14時開演で、りゅーとぴあコンサートホールで開催されます。指揮は大河内雅彦、曲目はドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、R.シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲、ブラームスの交響曲第1番です。

  

(客席:2階C5-11、指定券:\1500)