洋楽の夕べ 10人のアーチストによるジョイントリサイタル 
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2014年10月25日(土) 15:00  新潟市音楽文化会館
(司会:村山和子)
土佐美華(チェロ)&庄子麻理子(ピアノ)

  ベートーヴェン:チェロソナタ 第3番 イ長調 作品69

伊藤 舞(ソプラノ)&品田真彦(ピアノ)

  ヘンデル:歌劇「リナルド」より 涙のままに
  ドナウディ:麗しい絵姿
  トスティ:最後の歌
  北原白秋/山田耕筰:待ちぼうけ
  北原白秋/山田耕筰:鐘が鳴ります
  チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より 私は卑しいしもべ

吉井愛貴(ピアノ)

  ラフマニノフ:10の前奏曲 作品23 第2,4,5番
  リスト:葬送(「詩的で宗教的な調べ」第7番)

(休憩15分)

内澤郁子(ソプラノ)&藤井洋子(クラリネット)&栄長敬子(ピアノ)

  シュポア:6つのドイツ歌曲 作品103

市橋靖子(フルート)&青柳佐和子(ピアノ)

  吉松 隆:プレイアデス舞曲集T 作品27 より
        2.ほぼ2声のインヴェンション
        3.アップル・シード・ダンス
        4.水によせる間奏曲
        6.ほぼ3声のインヴェンション
        7.プラタナス・ダンス
  吉松 隆:デジタルバード組曲 op.15 より 
        T鳥恐怖症
        U夕暮れの鳥
        X鳥回路

 

 快晴の空、まさに秋晴れ。朝は冷え込みましたが、気温が上がり、すがすがしい陽気となりました。行楽日和であり、山の温泉にでもと思いましたが、芸術の秋を堪能すべく、このコンサートを選びました。

 「洋楽の夕べ」シリーズは、これまでも何度か聴かせていただいていますが、毎度思うのは「洋楽」という言葉の違和感です。ちょっと前時代的な響きを感じてしまいます。そして、昼間の開催なのに「夕べ」というのも・・。まあ、本質に関係ないことですけれど。

 コンサート前に白山公園の紅葉を楽しみながらウォーキング。紅葉した桜は落葉し、赤い絨毯ができていました。日光をたっぷり浴びて、秋を満喫しました。その後りゅーとぴあでチラシ集めをしていましたら、コンサートホールで某中学校の音楽祭が開かれていて、美しい歌声がロビーにも聴こえていました。

 音分に行き、開場とともに入場。これだけの出演者ですから、混雑すると思ったのですが、開場前に並んでいたのは私を含めて数人のみ。ちょっと寂しかったかな。

 時間となり、村山さんの司会で開演しました。トップバッターの重責を担ったのは、赤いドレスの土佐さんと紫のドレスの庄子さんです。このお二人の演奏を聴くのは、昨年の新潟クラシックストリート以来2回目です。
 ベートーヴェンのチェロソナタの中で、最も有名で、私も好きなこの曲は、春の新潟クラシックストリートでの渋谷陽子さんの名演が記憶に残っています。渋谷さんの弟子でもある土佐さんは、渋谷さんに一歩及ばずというところでしょうか。
 会場のせいもあるのかもしれませんが、ちょっとチェロの鳴りが悪く、線が細く感じられ、ピアノに負けてしまう場面がありましたが、チェロもピアノも頑張って、聴き映えある演奏に仕上げていたと思います。終演後のほっとされたような二人の笑顔も良かったです。

 続いては、伊藤舞さんと品田真彦さんです。伊藤さんは噂には聞いていましたが、歌を聴くのは初めてです。品田さんは先週聴いたばかりで、相変わらずお忙しいようですね。
 伊藤さんは薄いピンクのドレスで登場。歌声は、同じソプラノでも先週聴いたリリカルな鈴木愛美さんとは対称的で、低音に厚みと迫力があり、重心が低く声量も豊かでした。まさにドラマティコという感じです。最初の曲からその迫力に魅了されました。一旦退場して歌った日本の歌曲も良かったです。歌う姿も存在感と華があり、独自の世界を創り出していました。
 そして、品田さんのピアノも良かったです。音量控えめに、緩急、強弱をつけて、色彩感のある演奏で、伊藤さんの歌声をさらに引き立てていました。品田さんの素晴らしさを再認識しました。

 次は、吉井さんのピアノ独奏です。吉井さんは濃紺のドレスで登場。お名前はこれまで存じ上げなかったのですが、迫力あるピアノに圧倒されました。ドラマチックな曲目のせいもあるのですが、スタインウェイを極限まで鳴らしきり、ホールを豊潤な響きで満たしました。パワーの中に詩情も感じられ、粗っぽさの一歩手前で踏みとどまり、劇的な音楽を創っていたと思います。

 休憩後は、赤いドレスの内澤さん、黒とカラフルな水玉模様のドレスの藤井さん、薄いオレンジ色のドレスの栄長さんが登場。ソプラノ、クラリネット、ピアノという珍しい組み合わせです。
 内澤さんの歌声はよくイメージしやすい正統的ソプラノで、透き通るような優しい歌声でした。クラリネットは表現力に溢れ、ソプラノとよく調和し、二重唱を聴いているかのようでした。ピアノの栄長さんの表情も楽しそうでした。
 穏やかな、心和ませる演奏で、ゆったりとした気持ちで聴くことができました。「素敵だなあ・・」というのが率直な印象でした。

 最後は市橋さんと青柳さんです。最初は黒いドレスの青柳さんのピアノ独奏。詩情あふれる吉松の世界を、見事に具現化し、うっとりと聴き惚れました。密かにファンだったりするのですが、何気ない中に大人の色香も感じさせる演奏は青柳さんの世界です。
 続いて黒い衣裳の市橋さんが登場。トレードマーク(?)のグリーンの靴が鮮やかでした。百戦錬磨の市橋さんですので、演奏の素晴らしさは言うまでもありません。深遠なフルートの響きに引き込まれ、幽玄な世界に誘われたかのようでした。
 市橋さんは、明日、私も7月に聴かせていただいたユーフォルビアのコンサートが、湯沢であります。個人で、グループで、活発なご活躍は素晴らしいですね。

 ちょっと拍手が途切れてしまいましたが、最後に出演者全員が登場して挨拶し、終演となりました。今さら気付いたのですが、男は品田さん一人。まさに黒一点だったんですね。ご苦労様でした。

 前半は若手のスリリングな演奏。後半はベテランによる落ち着いた演奏というのが全体的印象です。内容豊富で、楽しめたコンサートでした。
 
  

(客席:9−9、\1500)