註記:向島町の兼吉にあった観光案内所は廃止されています。そのため、このページの内容はあてはまらなくなっています。(2015年4月)
本州四国連絡橋の尾道・今治ルートが開通して3年が経つ。基本的には産業生活道路であるが、歩行者や自転車も通行できるようになっている。しまなみ海道と通称して観光客増加への期待も高い。
ルート沿線の島々にも、ぽつぽつとではあるが観光案内所ができはじめている。ただ残念ながら大体は無人である。内装もほぼ同じで、パンフレット類が置かれ、ショーケースには特産品のサンプルが陳列されている。壁にはパネル写真が掛けられ、なぜか判で押したようにTシャツや法被がピンで止められている。観光への意気込みは感じられるが、どちらかといえば、とりあえず感が漂う。
開設当初は、掃除や手入れも行き届いていたのだろうが、ほこりが目立つのが普通だ。どことなく薄汚れた感じがする。そういえば生け花を見かけることもない。これでは観光案内所でもないだろうと思うのだが、次第に慣れてしまった。
予算のことなど、それぞれに事情はあると思うが、観光案内所の看板を掛けてしまった時点で、結果は決まっているのだと思う。観光に力を入れているとはいえ、観光客の増減が直接生活に影響する地域住民は僅かだろうから、メンテナンスにも自ずから限界が出てくる。島特有の排他的気分がまだ色濃く残っているとすると、よそ者のためだという意識がどこかで働いてしまう。
こういった施設は、発想を変えて、観光客のためというよりも、まず一義的には地域住民の便利のためにあると考え、運営すべきであろう。コミュニティセンターとして利用してもよい。インターネットの設備を整え、ホットスポットとして活用することも考えられる。パソコンが一台でもあれば、近所の子供たちの学習の場として使える。プロジェクターがあれば、簡単な上映会も開ける。もちろん、これらの設備は観光案内のツールとして役に立つ。とにかく人が集まる方法を講じなければ、運営に支障がでてくる。
島の観光案内所には町では得難い利点がひとつある。大きな島でないかぎり空間としては閉じている。案内所を観光の始点にすると、そこが終点にもなる。島を一周すれば、かならず案内所に戻ってくる。この特性を活かし、たとえば、デジタルカメラを貸し出し、回収すればプリントサービスなどが提供できる。ライフスライスカメラという遊び方もできる。GPS機器を使えば、ジオ・キャッシングやGPSドローイングといった新しいゲームが企画できる。これらは格好の市場調査にもなる。まだどこも取り組んでいないことだろうから、これ自体が話題になる。
さて、この向島にも観光案内所らしきものができた。古い商店を改造してオープンしたので、外観から受ける印象はなかなかよい。正面は渡し場で、尾道水道を行き交う船がみられる。その奥には対岸の尾道の山々が望める。隣には映画のロケセットを利用したバス待合所がある。通りを少し曲がると、そこにはレトロな雰囲気が漂う商店街がある。一息入れるには格好の場所である。
壁紙の代わりに特産の帆布を使うだけでもよい。何か一工夫すれば、ユニークな案内所になるはずだ。
(金森國臣 2002年8月22日)
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