な
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鍋蓋山(なべぶたやま)
力士の名乗に擬したるものにて、力量弱く、いつも敵に投げらるる相撲取をいう。「とったら仰向け」との意を鍋の蓋に喩へて言うなり。
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名無権兵衛(ななしごんべえ)
身分の極めて賤しき者を言う。本名としての通称もなき名無兵衛というに権を加えしなるべし。
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奈良次郎(ならじろう)
大和奈良東大寺大仏殿の巨鐘を言う。京都智恩院の巨鐘を太郎と見ての名称ならん。
また畿内にて夏日大和の方に出る雲の峰を言う。丹波太郎の弟雲と見ての名称ならん。
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南無右衛門(なむうえもん)
『俚言集覧』に、此語を載するのみにて、何等の註解なし。日夜阿弥陀仏を念ずる迷信者の異名ならんか。浄瑠璃の女太夫に「六字南無右衛門」と言えるがありたり。この実在人物を言えるにはあらざるべし。
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に
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女左衛門(にょざえもん)
溺死せる女を言う。女の溺死者を男名の「土左衛門」と呼ぶは不当とて「おどさ」と称し、また「嬶左衛門」の例もありとて「土左衛門」を女性化すべく「女左衛門」ともシャレしなり。
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仁清(にんせい)
京焼陶器の古き物を言う。「仁清物」、「仁清まがい」の略なり。元和寛永の頃、丹波の人野々村清兵衛といえる者京にて製陶業に従事し、後世京焼の祖と称せらる。この「仁清」とは同人の号にして、洛外仁和寺村に住居せし清兵衛との義なり。
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仁太夫(にたゆう)
辻咄、辻講釈、祭文語り、万歳、鳥追等。其外編笠を着て乞食する者を「仁太夫」と言えりと『嬉遊笑覧』にあり。其語原を記さず。「仁(に)」は「似(に)」または「にせ」の「に」なるべし。
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ぬ
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沼太郎(ぬまたろう)
菱食といえる大雁を美濃近江にては「沼太郎」と言えり。沼の大物との義なり。
また『猿蓑集』に「広沢やひとりしぐるゝ沼太郎」といえる俳句あり。これは広沢池の大なるを言えるなり。
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脱作(ぬけさく)
愚者を言う。智慮の足らざる人、即ち記憶、想像、判断力等の欠乏を意味するなり。古は「ぬけ作左衛門」と称せり。「抜作」と書きしもあり。
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ぬく太郎(ぬくたろう)
愚者を言う。「ぬく」とは「ぬる湯」などの「ぬるく」して熱気乏しき義なり。鈍太郎(どんたろう)に同じ。
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猫八(ねこはち)
関西にて放下師を言う。昔「猫八」といえる手業の名人ありしに因ると聞けり。
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の
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延助(のびすけ)
「元禄頃の印本〔姥桜〕五の巻、浮世狂いをする者を嘲る詞に「もくぜん十ヶ條の大損あり、先第一はなげ、うつけ、とりん、とられん、なんぴん、のび助、とんてき、北風、かる小判、さぎからす、たくらだ、たるい、おもたひ、どろ作、などと、けがれたる異名をさづかる」と『足薪翁記』にあり。
「浮世狂い」とは色町遊びを言う。のび助とは鼻毛の延びたる男といえる義なり。『色道大鑑』に「のびたる男、鼻毛の延びたるという上略なり、うつけたる事にもいい、又女に惚れ過ぎたるかたちにもいう」とあり。
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野呂松(のろまつ)
江戸の和泉太夫座にて、野呂松勘兵衡といえる者の使い初めし人形あり。頭平く、顔色青黒く、賤しき愚人の態を演ず。これを野呂松人形と称せり。後「ノロマ」と略して愚人の異名に成れるなりと言う。
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呑助 呑平(のみすけ のんべい)
「呑助」とは日夜大量の酒を飲みて、心身に締りなき者を言うなり。普通「のんだくれ」と言うに同じ。地方によりては之を「呑平」とも言えり。
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呑太郎(のんたろう)
「のん太郎−見物人を入れて銭なで込みにする事をいう」と『劇場新話』芝居茶屋の隠し言葉中にあり。木戸銭を窃に横領する者を言うなり。「のん」は「のむ」にてゴマカスに同じ。これを「源助」とも言うこと別項に記せり。
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