SanDo concert vol.175 フルート三重奏
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2025年7月19日(土)15:00 朝日酒造 エントランスホール
フルート:武藤千明、チェロ:片野大輔、ピアノ:飯塚直子
 
バッハ=グノー:アヴェ・マリア

マルティヌー:フルート三重奏曲
   第1楽章 Pico Allegretto
   第2楽章 Adagio
   第3楽章 Allegretto

(休憩15分)

ドビュッシー:夢想
ショパン:ワルツ メランコリック
サティ:Je te veux

ダマーズ:演奏会用ソナタ
   Prelude-Rigaudon-Aria-Intermezzo-Aria-Sicillienne-Gigue

(アンコール)
オッフェンバック:ホフマンの舟歌
 

 昨日新潟も梅雨明けし、今日も朝からギラギラした太陽が照りつけていました。今週末はたくさんの音楽イベントがあり、集客では朱鷺メッセでの「なにわ男子」のライブでしょうが、そのほかとしましては「新潟ジャズスストリート」で新潟市内は盛り上がっているものと思います。

 こんな土曜日なのですが、行きたいコンサートがいくつも重なってしまいました。ジャズストリート以外でも、高嶋ちさ子さんのコンサートも気になったのですが、すぐにチケット完売になってあきらめました。十日町での「クァルテット・イテグラ」もどうしようかと悩みましたが、ちょっと遠すぎですので断念しました。

 結局このコンサート選びましたが、長岡市を中心に活躍され、9月にリサイタルを予定されている武藤千明さんの演奏を聴いてみたいと思いましたし、プログラムにダマーズの曲を演奏するとの情報を伝え聞いたのが大きな決め手でした。
 ダマーズについては、6月7日の「山田磨依ピアノ・リサイタル」で初めて知り、他の曲も聴いてみたいと思っていましたので、このコンサートに出かけようと思い立ちました。
 正直に申し上げるなら、リサイタルのチラシの武藤さんの美しいお姿に魅かれたというのも大きな要因であったことを申し添えておきたいと思います。

 さて、この「SanDo concert」は、毎月第3土曜日に朝日酒造本社で開催されています。「SanDo」というのは第3土曜日に由来します。
 エントランスから奥へと長く伸びる空間が残響豊かなホールとして活用されています。天井が高く、ギリシャ建築のような柱が並び、奥にはステンドグラスもあって、初めてここに入る人は圧倒されるのではないでしょうか。こういう場所を造り、定期的にコンサートを開催している朝日酒造の見識の高さには敬意を表したいと思います。
 この「SanDo concert」には私も何度か参加させていただいていますが、今回は2024年9月以来、10ヶ月ぶりになります。

 いつもの与えらたルーチンワークを終えて、某所で安価な昼食を摂り、期日前投票を済ませて、国道116号線を巻〜吉田〜分水へと南下しました。
 大河津分水を渡って左折して信濃川沿いを進み、与板を抜けて直進し、馴染みの「寺宝温泉」の前を通り、北陸道と国道8号線の下をくぐって南下し、快適なドライブで越路入りしました。信越線の下をくぐって、14時過ぎに朝日酒造本社に到着しました。新潟市からですと、高速を使わなくても快適に到着できるこの経路はお勧めです。
 玄関前の駐車場に車をとめて、しばし時間調整をし、開場時間が近付いたところで玄関前に行きますと、先客が二人おられましたので、その後ろに並びました。暑さは厳しかったですが、ミストを噴射する扇風機が稼動していて暑さを和らげてくれました。
 早めに玄関のドアが開けられて、涼しい館内に移動して開場を待ちました、毎度のことながら、今日出演するはずの片野さんが、朝日酒造の前掛けをして、雑用係をされていました。コンサートのプロデューサー兼プレイヤーということで、いつも大活躍されています。着替えや演奏の準備も必要と思いますので、こんなことをしていて大丈夫なのかと余計な心配をしてしまいますが、毎回のことで余裕なんでしょうね。

 当日券を買って入場し、奥に進みますと、スタインウェイの小型グランドピアノの前に、いつもよりびっしりと密集するように椅子が並べられていました。私は正面中央1列目に席を取りました。もう少し座席間に隙間があると良いのですが、多数の集客を見込んでのことなのでしょう。

 開演時間となり、赤いシャツの片野さんと朝日酒造担当者が登場して、片野さんによる挨拶と、担当者からのお酒の紹介がありました。

 片野さんは一旦下がって、赤いドレスの武藤さん、飯塚さんとともに再登場して、バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」で開演しました。
 残響豊かなホールに響くフルート、チェロ、ピアノ。しっとりとした音楽に心が洗われました。私の席は、片野さんと武藤さんのすぐ前で、手を伸ばせば届くような近さで、さすがに近すぎに思いましたが、3人の演奏をダイレクトに味わうことができました。

 ここで片野さんからの挨拶とメンバー紹介があり、今日のコンサートについての説明がありました。フランス音楽をテーマとしていますが、フランス人の音楽ということではなく、フランスで活躍した音楽家の音楽をプログラムしたとのことでした。以後片野さんのユーモアあふれるトークと曲目紹介を交えながら演奏が進められました。

 1880年にチェコで生まれたマルティヌーについての説明があり、ピアノ演奏を交えながら次に演奏する「フルート三重奏曲」についての解説がありましたが、曲の中に教会の鐘の響きや螺旋階段を下りていくような様子が表現されているとのことでした。ピアノの譜めくりが加わって演奏開始です。
 第1楽章は、軽快に始まり、明るく駆け回りました。第2楽章は、ゆったりとしたピアノに始まり、解説にあったように鐘が鳴り響くような場面がありました。フルートが幽玄にメロディを奏で、チェロがしっとりと歌いました。
 第3楽章は、フルートソロで始まり、軽快に明るく音楽が流れ、螺旋階段を駆け回りました。小休止してゆったりと歌い、再びスピードアップ。緩急を繰り返して熱量を高めフィナーレとなり、大きな感動をもたらしました。大きな拍手が贈られて休憩になりました。

 休憩時間が終わって3人が登場し、片野さんからの曲目紹介があり、次に演奏する3曲についての解説があり、3曲続けて演奏されました。

 最初はドビュッシーの「夢想」です。ゆったりと幻想的に、まさに夢の如く感じられました。誰の編曲かはわかりませんが、ピアノは控えめで、フルートは爽やかに歌い、チェロは朗々と響き、しっとりとした音楽世界に癒されました。

 次はショパンの「ワルツ メランコリック」です。ピアノとともにチェロが悲しげに歌い、フルートが加わって切なく響く音楽が胸に沁みました。胸の高鳴りを抑えながら、もの悲しくワルツを踊りました。これも誰の編曲かはわかりませんが、曲名の如くメランコリックなワルツに、しっとりとした感動をいただきました。

 そして3曲目はサティの「Je te veux」です。明るく穏やかに、パリのエスプリを感じさせながら、ピアノが刻むリズムにのせて、フルートチェロが歌い、洒落たワルツ楽しみ、気分も爽やかになりました。

 片野さんから1928年生まれというダマーズについての説明があり、最後はいよいよダマーズの「演奏会用ソナタ」です。
 「プレリュード」は、ちょっと堂々とした感じで挨拶し、チェロの重低音が快く響きました。「リゴードン」は、軽やかに、歯切れ良くステップを踏み、「アリア」は、しっとりと歌い、「インターメッツォ」は、フルートとチェロが掛け合いながら足早にリズムを刻み、少し激しく走り抜けました。再びの「アリア」は、しっとりとゆったりと歌って、心も癒されるようでした。「シシリエンヌ」は、曲調が変わって、フルートが優しく響き、最後の「ジーク」は、軽快に速足で進み、スピードアップ・ヒートアップして、大きな盛り上がりを見せて、感動のフィナーレとなりました。
 やはり、ダマーズの音楽は現代の曲ながらも親しみやすいですね。3人の渾身の演奏に大きな感動をいただきました。

 片野さんのトークがあり、アンコールとして「ホフマンの舟歌」がしっとりと演奏され、心穏やかな、ゆったりとした気分の中に演奏会は終演になりました。

 最後は、朝日山の銘酒が当たる恒例の大抽選会となり、武藤さんや飯塚さんによりチケットの半券の番号での抽選が行われましたが、今回も外れでした。

 今回の集客は109人だったそうです。冷房は効いているはずでしたが、熱気に包まれて、暑さを感じました。片野さんは、譜面台の下に扇風機を忍ばせていましたが、武藤さんや飯塚さんは汗を流しながらの演奏で、演奏の合間に水分補給をされていました。

 外の猛暑に負けないくらいの、赤い衣裳の3人による熱い演奏に、期待通りの感動をいただきました。片野さんのユーモアあふれるトークにより和やかな雰囲気の中で音楽を楽しむことができました。

 今日の3人は、飯塚さんをトップに10歳ずつ年が離れているそうですが、女性陣のお二人は美しく、ヴィジュアル的にも楽しませていただきました。
 武藤さんはお子様がおられ、育児をしながらの演奏活動だそうですが、9月15日のアオーレ長岡でのリサイタルのご成功をお祈り申し上げます。
 飯塚さんは、おそらく今回初めて演奏を聴かせていただきましたが、落ち着きの中に煌くような音を聴かせてくれて、その燻し銀の実力を示してくれました。
 アンコールは写真撮影可能とのことでしたので、1枚だけ演奏風景を撮らせていただきましたので、載せさせていいただきました。

 帰り道は往路と同様の経路で快適に進み、気分良く家路に着きました。はるばる遠征して来た甲斐があった素晴らしい演奏会でした。
 

(客席:正面中央1列目、当日券:¥1200)