毎年この時期に恒例の、新潟大学管弦楽団のサマーコンサートです。今回は回を重ねて第46回となります。昨年の第45回サマーコンサート(指揮:阿部未来)に引き続いて聴かせていただくことにしました。このオケを聴くのは昨年12月の第61回定期演奏会(指揮:河地良智)以来7か月ぶりになります。
今回の指揮者は、常任指揮者の河地良智さんではなく田中一嘉さんです。田中さんはプロオケのほか、アマオケやジュニアオケの指揮でも実績のある重鎮でいらっしゃいますが、2016年8月のジュニアオーケストラフェスティバルで新潟に来られて以来になるかと思います。
今回のメインプログラムは、ラフマニノフの交響曲第1番です。新潟大学管弦楽団でラフマニノフの交響曲が演奏されるのは、交響曲第2番は何度かあり、直近では2019年12月の第56回定期演奏会(指揮:河地良智)で演奏されていますが、交響曲第1番は今回が初めてです。
そのほかのオケを含めても、私がこの曲を生で聴くのは初めてですので、早々にチケットを買って楽しみにしていました。おそらく新潟初演ではないかと推測しますが、いかがでしょうか。
梅雨の最中というのに雨は降らず、毎日暑い日が続いています。いつものルーチンワークを終えて、暑さ厳しい中に家を出て、白山公園駐車場に車を止めましたが、何か行事でもあるのか、子供たちの団体がたくさんおられました。
白山神社を抜けて上古町へ行きましたが、白山神社では多数の露天が出ていて賑わっていました。楼蘭でいつもの冷やし中華をいただき、りゅーとぴあへと向かいました。
途中の白山神社の池では、蓮の花が咲き始めていて、ピンクの花がきれいでした。りゅーとぴあに入りますと、すでに開場待ちの列ができていました。
インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、列に並んで開場とともに入場し、2階正面に席を取りました。ステージ周りのブロックは使用されませんでしたが、客の入りとしましてはまずまずでしょうか。
ロビーではロビーコンサートが始まり、弦楽合奏(ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ2、コントラバス1)によりブランデンブルク協奏曲を美しいアンサンブルで聴かせてくれました。
至近距離で聴かせていただきましたので、弦が順にひとりずつメロディーを受け渡して行く曲の構成が良くわかって楽しめました。
客席に戻りますと、ほどなくして開演時間となり、拍手の中に団員が入場しました。最後にコンマスが入場して大きな拍手が贈られて、チューニングになりました。弦は通常の配置で、ステージ中央に密集するように配置されていました。弦5部は
13-15-12-11-8 です。
曲ごとにメンバーが変わるのがこのオケの特徴で、全員参加できるような配慮がされているものと思います。受付で渡されたプログラムに各曲ごとの出演者と並びの図が書かれた紙が挟み込まれていました。
1曲目は、サン=サーンスの「サムソンとデリラ」から「バッカナール」 です。田中さんがゆっくりと登場して指揮台に上がり、演奏開始です。
弦が弾かれて、オーボエのアラビア風のソロで始まり、イスラエルを舞台にした歌劇の酒宴の踊りの様子が眼前に繰り広げられました。オケの演奏は乱れもなく、様々に変化するアラビア風の音楽世界を見事に表現し、演奏にに引き込まれました。
ステージの照明が落とされ、団員の入れ替えがあり、弦5部は 14-14-10-10-7 に変わりました。コンマス・次席、チェロ・ヴィオラ・コントラバスの主席には変更がありません。
田中さんがゆっくりと登場して指揮台に上がり、2曲目はメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」から4曲が演奏されました。
第1曲のスケルツォは、速いパッセージを乱れもなく美しく演奏してくれました。第2曲の間奏曲は、しっとりとした音楽から軽やかに明るい音楽へと変わるさまが美しく表現されていました。
ここで次のソロに備えてホルンが入念に準備し、その間田中さんはじっと待ち、しばしの沈黙の後に第3曲の夜想曲となりました。長大なホルンのソロや二重奏が聴かせどころですが、ゆったりと情感豊かな音楽を、緊張感を感じさせながらも渾身の演奏で楽しませてくれました。
そして最後はお馴染みの「結婚行進曲」です。トランペットが高らかに歌い上げ、これまでの緊張感から開放されたかのように、のびのびと明るい音楽を奏でて、多少の乱れもなんのその、若き演奏家たちのエネルギーを爆発させて、聴衆を明るい気分にさせてくれました。カーテンコールでは真っ先にホルンを起立させ、その頑張りを讃えていました。
休憩後の後半は、いよいよラフマニノフの交響曲第1番です。グラズノフの指揮で初演されたものの大失敗に終わり、ラフマニノフは精神を病んだといういわく付きの作品です。
弦5部は 13-14-10-10-8 で、前半同様にコンマス・次席、チェロ・ヴィオラ・コントラバスの主席には変更がありません。田中さんが登場して演奏開始です。
第1楽章は、これからの基本となる三連符が特徴的なメロディに導かれて、緊張感のある音楽が始まりました。悲しげな弦楽合奏からオーボエがしんみりと悲しく歌い、そして熱く胸を高鳴らせ、弦のフーガから高らかに、壮大に、力強い音楽を歌い上げました。安らぎの穏やかさから一気に高揚し、唐突に終わりました。
第2楽章は、三連符のメロディに導かれて、足早に音楽が流れ、不安感をかき立て、暗くリズムを刻むもスピードは落ちません。うねりを作りながらも緊張感とスピード感を保ち続け、休みことなく走り続けました。せわしなく駆け足して、スピードを落とし、ゆっくりと終わりました。
第3楽章は、三連符のメロディとともに、クラリネットがホルンとともに悲しげに歌って始まりました。弦が憂いを感じさせ、オーボエが切なく歌い、フルートが呼応し、しんみりとした空気に満たされ、透き通るようなヴァイオリンが心に沁みました。ちょっと危うげな弦のアンサンブルとともに、しんみりと切ない思いを胸に秘めながらも抑えきれずに嗚咽し、静かに、しっとりと楽章を閉じました。
第4楽章は、三連符のメロディとともに力強く始まりました。明るくリズムを刻み、高らかに勝利を宣言するかのようでした。暗雲がかき消すように訪れるも力強い情熱とともに感情を高め、どんどんと熱量を上げました。一旦踏みとどまり、熱き思いはうねりとなって高まり、大波となって、蒸気機関車が走るが如く、躍動感とともに大地を駆け抜けて行きました。スピード感とエネルギーを高めて高揚し、歯切れのよいリズムを刻み続け、ドラが鳴って小休止してスピードを緩めた後、壮大にパワーを上げて、感動と興奮に満ちた怒涛のフィナーレとなりました。
ブラボーとともに大きな拍手が贈られて、学生たちの熱き演奏と、それを導き出した田中さんを讃えました。アマオケですので、ところどころでアンサンブルの乱れはありましたが、大きな音楽の流れの中では些細なことでしかありません。
交響曲第2番のような濃厚な甘いメロディがあるわけでもなく、手持ちのCDを聴いていてもとっつきにくい音楽だと感じていましたが、実際の演奏で聴いてみますと、いい音楽だと再認識することができました。この曲の良さを感じさせ、オーケストラを聴く喜びを感じさせてくれたオケの皆さんに感謝したいと思います。
カーテンコールが繰り返され、指揮者とコンマスに花束が贈られました。弦が増員されて、アンコールにハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のワルツが演奏されました。これまでの緊張感から開放されたかのように、のびのびと演奏してくれて、更に大きな感動をもたらし、最後は全員で礼をして演奏会は終演となりました。
学生オケの宿命として毎年団員の入れ替わりがあり、新陳代謝されていくわけですが、その分枯れることなく若さとパワーは維持されているわけで、これが学生オケを聴く魅力でもあります。
今回も学生さんたちからエネルギーをいただき、大きな喜びと満足感とともにコンサートホールを後にしました。
12月6日に開催される第62回定期演奏会は、河地良智さんの指揮で、フンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲、ビゼーの「アルルの女」第2組曲、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が予定されています。
その前の9月21日にはOBの皆さんによる新潟メモリアルオーケストラの第34回定期演奏会があり、工藤俊幸さんの指揮で、マーラーの交響曲第7番、ワーグナーの「さまよえるオランダ人」序曲が演奏されます。大いに期待しましょう。
(客席:2階C5-11、¥700) |