全国各地にたくさんのジュニア・オーケストラがありますが、その中で全国公立ジュニアオーケストラ連絡協議会に加盟し交流を続けている団体が、新潟に集まって練習と交流を深めて演奏会を開催するというイベントがジュニアオーケストラ・フェスティバルです。
2001年に新潟で開催されて以来、3年ごとに新潟または浜松で開催されてきて、今回は8回目の開催です。新潟での開催は、2016年以来6年振り6回目になります。
今年の参加団体は、みたかジュニア・オーケストラ、ジュニアオーケストラ浜松、岡山市ジュニアオーケストラ、仙台ジュニアオーケストラ、豊田市ジュニアオーケストラ、新潟市ジュニアオーケストラ教室、ティアラこうとうジュニアオーケストラ(フェスティバル・オーケストラのみの参加)の7団体で、7団体合同のフェスティバル・オーケストラの演奏も行われます。
ジュニアオーケストラの大ファンである私は、これまで2007年、2010年、2013年、2016年と聴かせていただいており、今回の6年振りの新潟開催も是非聴かせていただきたいと思い、チケット発売早々にネット購入して楽しみにしていました。
しかし、新型コロナ感染の第7波は拡大を続け、ジュニアオーケストラ浜松と岡山市ジュニアオーケストラは急遽参加を断念するという事態になりました。
新潟県でも連日4000人超えの感染者が報告され、どうなるのかと危惧されましたが、参加団体が減ったものの予定通りに開催されることになり何よりと思います。
今日のコンサートに先立って、8月19日(金)に開会式・オリエンテーション・ウェルカムコンサートが開催され、8月20日(土)にはリハーサルと交流会が開催されています。
今日のメインコンサートは、各団体の30分ずつの単独演奏の後に、7団体の選抜メンバーによる合同フェスティバル・オーケストラの演奏が行われます。
昨日は雨が降ってあいにくの天候でしたが、今日は天候が回復し、青空が広がり、爽やかな日曜日になりました。天もフェスティバルの開催を祝っていくれているかのようです。
早めに家を出て、某所で昼食をとり、りゅーとぴあ入りしました。ロビーをうろついて時間をつぶしましたが、お馴染みの顔が多数あり、私と同様に楽しみにしていた人も多いようでした。
開場とともに入場して、この原稿を書きながら開演を待ちました。次第に客席は埋まりましたが、私の横はズラリと空席で、密になることもなく、ゆったりと音楽に臨むことができました。
開演時間となり、最初は「みたかジュニア・オーケストラ」です。代表が2人登場して挨拶と曲目紹介があり、団員が入場しました。
今回の出演団体の内で、新潟のA合奏を除けば最も小さい編成で、弦5部は8-6-4-4-3で、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。団員は33人と自己紹介していましたが、ステージ上には、私の目視では42人おられました。賛助出演があるのでしょう。指揮は内藤佳有さんですが、2001年からこのオケを育てているそうです。
演奏曲はベートーヴェンの交響曲第2番ですが、制限時間の関係で第3楽章は演奏されませんでした。昨年から取り組み、既に演奏会で演奏している曲とのことで、こなれた演奏でした。
軽快でキビキビした第1楽章、弦のアンサンブルの美しさが際立った第2楽章、そして、第4楽章は颯爽と走り抜け、気分爽快の中に終演となりました。
次は「ジュニアオーケストラ浜松」「岡山市ジュニアオーケストラ」と続くはずでしたが、コロナ禍で出場辞退となりましたので、続いては「仙台ジュニアオーケストラ」となりました。演奏曲はガーシュウィンの「パリのアメリカ人」です。
ステージが大きく転換されている間に、代表者による挨拶と曲目紹介がありました。編成は大きくなって、弦は私の目視で9-10-8-8-9。弦に比して管がやたらに多くてアンバランスで、ファゴットが5人、ホルンは10人もいました。
指揮者は何と太田弦さんです。この5月の東京交響楽団第125回新潟定期演奏会で、鮮烈な新潟デビューを果たしたばかりであり、再びの新潟登場です。
編成が大きいだけあって、サウンドはゴージャスそのもの。トランペットのソロが素晴らしく、ジャジーな味わいもたっぷりで、爽やかな気分で楽しめました。
休憩がとられ、続いては「豊田市ジュニアオーケストラ」です。挨拶の中で、8月7日に原田慶太楼さんを指揮者に、OBである東響コンマスの水谷晃さんをソリストに迎えての定期演奏会を開催したことなどを紹介してくれました。
今日の演目は、その演奏会で演奏されたストラヴィンスキーの「火の鳥」です。オケの編成としては大きくはなく、弦は私の目視で10-7-7-6-5でした。指揮は原田さんではなく井上京さんです。
出だしの低弦の地を這うような響きの素晴らしさに耳を奪われました。大きくはない編成で、これほどの音を出すとは、その実力が伺われました。
「火の鳥」といえば、われらが新潟市ジュニアオーケストラが2018年の第37回演奏会で素晴らしい演奏を聴かせてくれたことが記憶に残っていますが、今日の演奏はそれを髣髴させるものであり、ジュニアとは思えない聴き応えある演奏でした。さすがに原田さんが鍛え込んだ直後の演奏だけあって、ジュニアの演奏であることを忘れて、眼前に広がる音楽劇に引き込まれました。
ステージ転換され、いよいよ「新潟市ジュニアオーケストラ教室」です。全国にあるジュニアオーケストラのほとんどは、オーディションにより団員を選抜していますが、新潟は全くの初心者から受け入れて、単科教室→A合奏→B合奏と進級試験を経て進むという独自のシステムをとっています。これは都会は別にして、地方でのやり方としては全国に誇るべき方法だと思います。
まずはA合奏ですが、私が聴いた中で、これまでの最少と思われる編成で、弦は2-2-3-4-2です。この弦の少なさに反して、フルートは4人、オーボエ1人、クラリネット1人、トランペット4人、ティンパニ1人という非常にアンバランスな編成でした。少子化で弦が少ないのかと心配になりました。
藤井裕子さんの指揮でエルガー(ウッドハウス編)の「威風堂々」のテーマが演奏されましたが、この編成でオーケストラのサウンドになっているのには驚きました。不思議なものですねえ・・。
ステージが整えられて、いよいよB合奏です。弦は私の目視で10-12-7-6-4です。曲目はチャイコフスキーの「幻想序曲
ロミオとジュリエット」です。指揮は今シーズンで新潟を離れる永峰大輔さんです。
演奏は期待通りに見事であり、切れの良いスカッとした演奏でした。アンサンブルの乱れもなく、ジュニア離れした見事なサウンドは、さすがB合奏と唸らせるものでした。最後は全員で礼をして終演となりましたが、2週間後に迫った定期演奏会が楽しみになりました。
以上で各団体の個別演奏は終了し、休憩後は各団の選抜メンバーによるフェスティバル・オーケストラの演奏です。
開演前に、今回は団体としてではなく、フェスティバル・オーケストラにだけ参加する「ティアラこうとうジュニアオーケストラ」の団員による挨拶とオケの紹介があり、その後にフェスティバル・オーケストラへの参加者が入場しました。
ステージから溢れんばかりのオーケストラは視覚的にも壮観であり、否が応でも気分は高まります。指揮者は永峰大輔さんです。
最初は、お馴染みの「スターウォーズ」のメインテーマです。さすがに臨時編成のオケであり、アンサンブルのほころびはありましたが、大編成のオケは迫力満点であり、気分爽快に文句なく楽しめました。
オケのメンバーが退場してステージが整えられ、別の編成となって、今度はシベリウスの「フィンランディア」です。指揮は再び永峰大輔さんです。
これは臨時編成のオケとは思えない素晴らしい演奏でした。アンサンブルの乱れもない大編成のオケから創り出される音楽は、聴く者の心に迫り、子供たちの熱い情熱が伝わってきました。コロナ禍に苛まれている社会に力を与え、戦い抜く元気を与えてくれたように思いました。
感動の拍手は鳴り止みませんでしたが、最後は新潟市ジュニアオーケストラ教室に習って、全員で礼をして感動のコンサートは終演となりました。
コンクールではなく、点数を競うものではありませんが、各オケのメンバーは互いの演奏を聴き、刺激を受けて、今後に活動の糧になったものと思います。そして、素晴らしい夏休みの思い出になったに違いありません。
どの演奏も素晴らしいものでしたが、フェスティバル・オーケストラの「フィンランディア」が最高でした。個別の演奏では、豊田市ジュニアオーケストラの「火の鳥」が一番良かったかなと思いました。
せっかく新潟に来てもらったのですが、音楽が目的であり、外に観光に出る機会はなかったものと思います。交流会も例年通りには開催でなかったものと想像しますが、少しでも新潟の夏を味わい、楽しんでもらえたらうれしいなと思います。
ホスト役を務めた新潟のメンバーも大変だったと思いますが、無事にフェスティバルが開催できたことを祝い、関係者に敬意を表したいと思います。
いよいよ9月4日には、新潟市ジュニアオーケストラ教室の定期演奏会が開催されます。コロナが落ち着き、安心して開催されることを切に望みたいと思います。
(客席:2階C6-11、¥2000) |