奥村愛 Plays ピアソラ
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2021年10月31日(日)14:00 長岡市寺泊文化センター
ヴァイオリン:奥村 愛
チェロ:奥村 景、ピアノ:山田武彦、バンドネオン:北村 聡
 
エルガー:愛の挨拶
ウェーバー:舞踏への勧誘
ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ
ハイドン:ピアノ三重奏曲第25番 ト長調 「ジプシー・トリオ」
      1.アンダンテ
      2.ポコ・アダージョ
      3.ハンガリー風ロンド:ブレスト
ファリャ:歌劇「はかなき人生」より スペイン舞曲第1番
ワックスマン:カルメン幻想曲

(休憩15分)

ピアソラ:
 ロカ・ボエミア
 フガータ
 タンゴの歴史より「カフェ1930」
 エスクアロ
 フーガと神秘
 アディオス・ノニーノ
 リベルタンゴ

 ピアソラは今年生誕100周年だそうですね。それを記念してのピアソラプログラムが、新潟を代表するミューズ・奥村愛さんにより演奏されます。共演するのは、弟のチェロ奏者の奥村景さん、ピアノの山田武彦さん、そしてバンドネオンの北村聡さんです。
 このような魅力的なコンサートが、新潟でも長岡でもなく、どうして寺泊(長岡市ですけれど)での開催なのか疑問に思いましたが、せっかくですのでドライブがてらに聴かせていただくことにしました。

 今日は衆議院選挙の投票日。昨日のような青空ではなく、曇り空ではありますが、比較的過ごしやすい日曜日になりました。
 ゆっくり昼食を食べながら、時計を見ますと12時。食べ終わって時計を見ますと、やはり12時。あれ?。時計の電池が切れていたのでした。あわてて時刻を確認しますと何と午後1時。ということで、大急ぎで着替えて家を出たのでありました。

 国道402号線を快適に進み、シーサイドライン経由で寺泊に向かいました。日曜日ということで、道路はそれなりに混んでおり、法定速度遵守で寺泊入りしました。開演に遅れるのは覚悟していましたが、どうにか間に合って、開演5分前に入場しました。

 このホールではロビーミニコンサートが毎月行われており、いつか行ってみたいと思っていましたが、今回初めて中に入りました。平土間式の多目的ホールで、客席は可動式です。全部で606席で、可動席540、固定2階席64、車椅子席2だそうです。
 ホールに入りますと、客席は1席おきになっており、使用できない席にはカバーが掛けられていました。私はぎりぎりに入場しましたが、係員が空いた席を案内してくれて、10列目の右端に席を取ることができました。
 1席おきとはいえ、ホールはほぼ満席でした。寺泊でのコンサートということで、客の入りは良くないのではと予想していたのですが、見事に予想は外れてしまいました。大盛況で何よりと思います。
 ステージには仮設の音響反射板が設置され、メーカーは確認できませんでしたが(ヤマハでしょうか)、フルコンサートピアノが置かれていました。

 時間となり、薄紫のドレスが麗しい奥村愛さんとピアノの山田武彦さんが登場し、挨拶代わりに「愛の挨拶」を爽やかに演奏して開演しました。

 ここで奥村さんの挨拶があり、以後奥村さんのMCで演奏が進められましたが、コンサート名にもなっているピアソラは後半で演奏し、前半は「踊り」に関連した曲を集めたとのことでした。

 山田さんが退席してチェロの奥村景さんが登場。入念にチューニングして、2曲目は「舞踏への勧誘」です。有名曲ではありますが、ヴァイオリンとチェロの二重奏で聴くのは初めてです。
 最初はチェロが重く感じられ、ぎこちないアンサンブルに感じましたが、次第に歌いだし、舞踏の世界へと誘われました。この曲ではよくあることですが、最後でフライング拍手が起きました。

 奥村愛さんが去り、ピアノとフメクリストが登場し、3曲目はチェロとピアノでショパンの「序奏と華麗なるポロネーズ」です。序奏をゆったりと歌わせ、ピアノと共に軽快にポロネーズを奏でました。
 ショパンといえばピアノ曲しか思い浮かびませんが、チェロとピアノの曲を3曲作っているそうです。そんな珍しい曲を聴けて良かったです。

 4曲目は、ヴァイオリン、チェロ、ピアノで、ハイドンのピアノ三重奏曲第25番です。「ジプシー・トリオ」という副題が付いていますが、第3楽章のハンガリー舞曲風の楽想によるものだそうです。
 第1楽章は明るく軽快に、第2楽章はゆったりと優しく歌い、第3楽章は激しくリズムを刻み、まさにハンガリー風の音楽が奏でられました。初めて聴く曲でしたが、楽しく聴かせていただきました。

 続いて5曲目は、バンドネオンの北村さんが登場し、ヴァイオリンとバンドネオンにる「スペイン舞曲第1番」です。ピアノの山田さんの編曲だそうですが、出だしは拍手と足踏みで始まり、素晴らしい編曲と情熱的な演奏に胸が高鳴りました。

 そして前半最後の6曲目は、ヴァイオリンとピアノで、ワックスマンの「カルメン幻想曲」です。ハイフェッツのために作られた曲だけあって、奥村さんの超絶技巧を駆使した演奏に圧倒され、聴き応えがありました。

 休憩後の後半は、いよいよピアソラです。後半の曲は全てピアノの山田さんによる編曲だそうです。最初はバンドネオンの北村さんだけ登場し、当初のプログラムにはなかった「ロカ・ボエミア?」がバンドネオン独奏で演奏されました。甘く切ないメロディにうっとりと聴き入り、バンドネオンの音色の素晴らしさを再認識しました。

 ここで他の3人が登場。奥村さんはピンクのドレスに衣裳替えして艶やかでした。2曲目は、四重奏で「フガータ」です。激しくリズムを刻み、前半とは全く異なる空気にホールが満たされました。

 3曲目は、タンゴの歴史から「カフェ1930」です。ヴァイオリンとバンドネオンが絡みあい、哀愁漂う切なく胸に迫るメロディに涙しました。

 ここで奥村さんからメンバー紹介があり、4曲目は、「エスクアロ」です。再び激しくリズムを刻み、情熱のタンゴで燃え上がりました。

 続く5曲目は、「フーガと神秘」です。速いリズムで畳み掛け、最後は甘いメロディでゆったりと歌い、静かに曲を終わりました。

 6曲目は、「アディオス・ノニーノ」です。ゆったりとしたメロディのヴァイオリンとチェロの二重奏で酔わせ、その後は激しくリズムを刻み、再び甘いメロディが現れたかと思うと熱く燃え上がり、最後はゆったりと曲を終わりました。

 奥村さんの挨拶があり、最後の曲は「リベルタンゴ」です。激しく情熱的なタンゴのリズムで盛り上げて、コンサートの最後を締めくくりました。

 アンコールを期待しましたが、そのまま終演となりました。多彩なプログラムで楽しませてくれた4人に大きな拍手が贈られて、コンサートはお開きとなりました。

 前半も良かったですが、やはり後半のピアソラが良かったですね。奥村さんを始め、いずれのメンバーも素晴らしいパフォーマンスで魅せてくれましたが、特にバンドネオンが素晴らしく、情感豊かにタンゴの世界を創り出してくれました。
 
 ブロックごとの退場で、ホールを出るまでに時間がかかり、さらに駐車場から出るのも時間を要しましたが、いい音楽を聴いた喜びと感動を胸に、シーサイドラインを新潟へと快適に走り抜けました。
 

 
(客席:10-31、¥2000)