東京交響楽団第84回新潟定期演奏会
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2014年6月15日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:ジョナサン・ノット
メゾ・ソプラノ:サーシャ・クック
コンサートマスター:大谷康子
 


ブーレーズ:ノタシオン I−IV (管弦楽版)
        I-IV-III-II (演奏順)

ベルリオーズ:夏の夜 作品7

(休憩20分)

シューベルト:交響曲第8番 ハ長調 D.944 「ザ・グレイト」
 
 
 先月に続いての東響定期です。前回は前音楽監督、今回は新音楽監督の登場です。プログラムを組む上で仕方なかったのでしょうが、前回からまだ3週間しか経っていません。
 新音楽監督のジョナサン・ノットの就任披露公演は4月にあり、私も聴きに行ってきましたが、今日は新潟での就任披露公演となります。ノットは、昨年秋の第80回新潟定期で、すばらしい演奏を聴かせてくれたのが記憶に新しいですが、音楽監督としてどんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。

 今日は、昼に新潟定期の日に恒例のロビーコンサートがあったのですが、仕事のため聴くことはできず、チケットを買っていた北区フィルの定期演奏会にも行けませんでした。でも、この定期には間に合って聴くことができて良かったです。

 客の入りはいつもより若干少なめでしょうか。せっかくの就任披露公演ですから満席になって欲しかったところですが、空席が少し目立ったように思います。今日はさまざまな公演が重なったこともあり、客が分散してしまった面もあるかもしれません。

 最初はブーレーズのノタシオンです。ステージに溢れんばかりの奏者が並びます。弦の編成は18-16-14-12-10と大編成であり、コントラバスとチェロが左に配された対向配置でした。管楽器も多数並び、打楽器も多種・多彩で、とても書ききれません。ハープ3台にチェレスタ、ピアノなど、これでもかというくらいの楽器の数で圧倒されました。これだけ巨大な編成のオケはめったにお目にかかれません。スコアも巨大で、新聞紙を広げたほどの大きさがあり、指揮者用の譜面台から大きくはみ出していました。本日のコンマスは久しぶりの大谷さん。もう名演が約束されたようなものです。
 ノットが登場して演奏開始です。現代曲を聴くのは、精神集中を要求されるので得意ではないですが、比較的聴きやすい曲を、聴きやすく処理してくれて、素人の私も楽しめる演奏でした。
 正直言えば、演奏がどうのというより、これだけ巨大なオケの演奏を聴いたということで満足気分でした。うねるような音の洪水に酔いしれたひとときでした。終曲などは、春の祭典を髣髴させるようなリズムで、結構楽しく聴けました。
 わずか11分ほどのこの曲を演奏するために、これだけたくさんの奏者と楽器を新潟に集めたというのは東響定期ならではです。交通費だけでも相当だろうなあ、などとつい計算してしまいます。空席を勘案しますと、コストパフォーマンスは良くないですね。
 こんな曲は東響定期以外で新潟で聴けるはずはなく、もしかしたら、というより、きっと二度と新潟で聴く機会はないだろうなと思って聴くと感慨もひとしおです。

 編成が小さくなって、2曲目はべりオーズの歌曲です。歌手はジェニファー・ラーモアからサーシャ・クックに変更になりましたが、もともとどういう歌手か知りませんでしたので、変更されても何の問題もありません。
 テオフィール・ゴーティエという詩人の6つの詩に曲をつけた歌曲集ですが、東響の柔らかな弦や管のサウンドも美しく、歌曲に疎い私でも聴きほれるような、しっとりと心に染みるメロディもありました。朗々とホールに響き渡るクックの歌声も素晴らしく、情感溢れる歌声に酔いしれました。この前半だけでも十分満足できました。

 後半はメインの「グレイト」です。冒頭のホルンが少し力不足に感じましたが、その後は良い演奏が続きました。明るく軽快で、透明感のあるサウンドで、グイグイと押して来るような、勢いのある演奏でした。特に終楽章の躍動感には心が高鳴りました。
 ただし、各楽章とも繰り返しをしっかりやっていて、特に第2楽章や第3楽章などはいつになったら終わるんだろうと、「天国的な長さ」を感じました。演奏そのものは良かったですけれど。

 ノットの就任披露公演にふさわしいボリューム満点で内容豊富な演奏会となりました。いずれの曲も良いできであり、東響との新時代の始まりを実感させました。願わくは、満員の聴衆で盛り上げたいところです。
   
   
(客席:2階C*−*、S席:定期会員 \6000)