東京交響楽団川崎定期演奏会 第45回
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2014年4月19日(土) 18:00  ミューザ川崎シンフォニーホール
 
指揮:ジョナサン・ノット
笙:宮田まゆみ
コンサートマスター:水谷 晃
 

 


武満 徹:セレモニアル −秋の歌−

マーラー:交響曲第9番 ニ長調

 
 

 今シーズンから東響の音楽監督に就任したジョナサン・ノットの就任披露演奏会です。演目が私の大好きなマーラーの9番ということもあり、是非とも聴きたいと思い、スケジュール調整していました。同じ内容の公演は、20日にサントリーホールであるのですが、川崎を選びました。

 マーラーの9番といえば、先月インバル/都響で聴いたばかりなのですが、そちらはインバルがプリンシパルコンダクターを退任するラストコンサートでした。最後を飾るにはふさわしい曲に思います。しかし、今度は音楽監督就任披露コンサート。就任を祝うコンサートには合わないような気もするのですが、私が好きな曲ですので、ありがたいことです。

 ということで、当初は自前でチケットを買おうとしていたのですが、東響新潟定期会員の招待制度があることを思い出し、招待券をいただくことができました。上京するのは大変ですけれど、招待制度はありがたいですね。

 さて、池袋で読響を聴き、急いで川崎に移動しました。ミューザ川崎は久しぶりであり、震災被害からの復旧後は初めてです。このホールは川崎駅西口に直結していて、私のような田舎者でも迷わずに行けるので便利です。

 受付で招待券をチケットと交換して与えられた席は2階席のやや左のS席(9000円)でした。なかなか良い席をいただいて感謝です。
 らせん状の客席は何度来てもわかりづらいですね。自分の席を探すのに一苦労。入り口から客席まで行くのに、階段が多く、デザイン優先で、客のことなんて考えていないんじゃないかと思ってしまいます。改めてわがホームグランドのりゅーとぴあの素晴らしさが実感されます。

 拍手の中楽員が入場開始しましたが、すぐに拍手はなくなってしまいました。コンマスが登場して漸く盛大な拍手が贈られました。拍手が続く新潟方式に東響の皆さんが感激するというのもうなずけます。

 最初は武満の「セレモニアル」です。サイトウキネンでの演奏をテレビで見聴きしたことはありますが、実演は初めてです。
 無音の息詰まるような静寂の中、宮田さんの笙の音が静かに響き、ホールは緊張感で満たされました。2階席後方と3階席両サイドに、それぞれフルートとオーボエが配され、立体感のある神秘的な効果を生んでいました。こういう静かな曲は雑音だらけ、雑念だらけの家では聴くことはできず、コンサートホールでしか楽しめません。あの世にトリップするかのような時間を体験しました。

 休憩なしで、マーラーの9番です。オケは対向配置で、チェロとコンバスが左、ヴィオラが右でした。指揮台に譜面台は置かれていませんでした。

 さて、演奏は・・・。ノットの指揮はキビキビと細かい指示を出しているのが素人目にもわかりました。全体としては若干早めのテンポで、グイグイと進んでいました。いたずらに感情移入することなく、ストレートな表現でした。昨年10月の新潟定期で感じた印象と共通します。
 第3楽章〜第4楽章はアタッカで行ってくれたのは良かったですし、フライング拍手もなく、最後の静寂を堪能できたのも良かったです。
 ただ、私の個人的感想としましては、もっと感情を込めても良かったのではないかと感じました。終楽章の、先月の都響では、弦が荒れ狂うように、感情を高ぶらせた場面も、あっさりと弾いて終わりました。ラストも音が消え入り、無へと昇華するという感じが乏しかったです。
 暗さを排除し、就任を祝う、明るく元気な9番ということで、門出を祝う公演としては良かったと思いますが、もう少し感情の起伏や、心の叫びが感じられたら良かったように思います。

 オケの演奏も万全ではなかったと思います。読響を聴いた直後ですので比較してしまいますが、アンサンブルの精緻さでは読響に負けていました。管のミスも垣間見え、いつもの東響らしからぬ印象がありました。フォルテシモをバシッと音を揃えて決めてくれると良いのですが、ばらけて締りがなかったです。弱音の部分は、もっと音量を落とした方が心に染みるのですが、ラストもある程度の音量が出ていました。明日のサントリー定期では、ミスが修正され、良い演奏になるものと期待したいです。

 と、いろいろな思いはあるのですが、これから名音楽監督スダーンの後を継いで、東響をどう導いてくれるのか楽しみにしたいと思います。
 
   
(客席:2階CB3−8、S席:招待)