東京交響楽団第80回新潟定期演奏会
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2013年10月14日(月・祝) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:ジョナサン・ノット
ソプラノ:クリスティーネ・ブリューワー
コンサートマスター:大谷康子
副指揮:宮嶋秀郎
 


R.シュトラウス:4つの最後の歌

(休憩20分)

R.シュトラウス:アルプス交響曲 作品64
 
 

 スケジュールの都合なんでしょうが、9月23日以来3週間で、再び東響定期です。今回は次期音楽監督のジョナサン・ノットの登場。そして、メインがアルプス交響曲ということで、大いに期待が膨らみます。

 今日は体育の日。朝起きたら快晴の空。心地良い、絵に描いたような秋晴れです。心もウキウキ、気分爽やかです。所用を済ませ、りゅーとぴあに行きましたら、すでに開場されていました。ホワイエには、次期音楽監督・ジョナサン・ノットの大きな写真が飾れていました。

 開演時間となり、拍手の中団員が入場。最後に大谷さんが登場して、一段と大きな拍手が贈られました。オケの配置は、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。コントラバスが一番左、中央にチェロ、右にヴィオラが並び、ハープとチェレスタが一番右という配置です。

 貫禄のあるブリューワーと、格好のいいノットが登場して、いよいよ開演です。まず、オケの音の良さに驚きました。ふくよかで、温かみのある音で、フワーっと包み込まれるような、ビロードのようなサウンドです。弦のアンサンブルの美しさは、天に昇るようであり、言葉で表せないくらいです。
 ブリューワーの歌声は重心が低く、声量豊かに、ホールいっぱいに響き渡りました。大谷さんの甘く切ないソロも心に染みました。
 これまで聴いたことのないような、極上のオーケストラサウンドと、心を揺り動かすようなブリューワーの歌声に、唖然と聴きほれてしまい、前半から満足感でいっぱいになりました。

 休憩後は、いよいよメインのアルプス交響曲です。この曲が新潟で演奏されるのは、2004年1月の第24回新潟定期(指揮は飯森さん)以来です。ステージいっぱいに配置されたオケは壮観です。前半同様に、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置です。
 この曲は、弦5部が最小でも18、16、12、10、8 という指示があり、管楽器も多数。ホルンだけみても、ステージ上に8、ステージ外に12という大編成です。カウベルやウインドマシーンなど、様々な打楽器が使用され、オルガンまで加わります。当然ながらエキストラが多数参加することになります。
 こんな贅沢な編成のオケを、新潟のような地方都市で聴けるなんて、幸せなことと思います。東響新潟定期ならではのプログラムであり、感謝しなければなりません。

 演奏はくっきりとした輪郭のある、透明感のあるものでした。これ見よがしの派手な演出はなく、冷静さを保って、節度あるものでした。大音響にもかかわらず、音が飽和することはなく、解像度の高い演奏でした。アルプスの景色が目に浮かぶような、色彩感のある演奏であり、音の饗宴に酔いしれました。弦は前半同様に美しく、管も打楽器も、渾身の演奏だったと思います。オルガンも加わって、オケを聴いたという満足感でいっぱいになりました。

 ノットは暗譜での指揮であり、東響から、これまでにない音を紡ぎだしてくれました。今日で80回を数える東響新潟定期の歴史の中でも、屈指の名演奏ではなかったでしょうか。

 次期音楽監督・ノットの新潟初登場という記念すべき今日の公演は、ノットの実力を知らしめるに十分すぎるもの
であり、東響の新時代到来を予感させるものでした。今年のベストコンサート候補は間違いありません。

 さて、これから東響の皆さんは木曜の夜まで新潟での日々が続きます。飯森さんの指揮で、新潟市内の小学5年生が全員参加する「わくわくキッズコンサート」5公演と一般向けの「特割コンサート」があります。ご苦労なことと思いますが、新潟の子供たちに、オーケストラの素晴らしさを教えていただきたいと思います。

  

(客席:2階C5−**、S席:定期会員:¥5500)