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                 星印が一つのクレームとも思える指摘は、次の2点に集約されている。 
                
                (1)「初心者向けである」ことについて 
            明治以来、営営として軍事関係の辞典や用語集か編纂されているわけだが、果たしてこの中に初心者向けではない本格的なプロ向けのものが何点あったかとなると、ごく僅かであるか、あるいは全くなかったかのいずれかであろうと思う。 
            理由は単純で、「プロ」にとってみれば、その類の辞典や用語集は不要であり、辞書を引きながら業務を遂行することは、まずないと考えてよい。 
            加えて、小集団で使用される極めて専門性の高い用語は、部外者は触れる機会がなく、その必要性もない。またこのような用語は秘密性が高い場合があり、外部に出てくることはまれであろう。(簡易的な用語集が内部資料としてあるかも知れないが) 
            そうした意味合いにおいては、プロを満足させ得る用語集の編纂は極めて困難であり、仮に用語が収集できたとしても、単なるスラングであるかも知れず、用語を確定できないと言う問題もある。 
                私自身も別途で3万語程度の顧客対応の用語を収集しているが、顧客先からは別に公開しても構わないとの話をいただいているものの、職業的倫理感あるいは用語学的観点から公開するつもりはない。 
                あるベテランの通訳が、ある部隊の訓練を支援するために派遣されたのだが、現場用語と略語の入り交じったスピーディーな会話にはついていけなかったと嘆いていた。 
                本来なら、このような場面に役立つ用語集についても編纂すべきであろうが、需要はわずかであろうし、努力に比したペイは絶対に見込めないから、これは自主的な活動に委ねるしかないのだろうと思う。 
                総体的に、全員が最初は初心者であることを考えれば、この部分を手厚くカバーするのが常に先決事項にならざるを得ないのだと思っている。 
                (2)「価格が高いこと」について 
                印刷・製本の費用や編集の人件費を考慮すれば、これぐらいの価格にならざるを得ない事は、出版関係者であれば納得してもらえるものと思う。 
                もちろん利益も考えてのことであるが、これを否定すると企業活動は成り立たない。 
                費用対効果については、このように考えてはどうだろう。事務所に『最新軍事用語集』を一冊準備することで、用語の検索に費やす時間が10時間削減されたとすると、これで充分に元が取れているのではないだろうか。 
                個人で所有するには確かに高額であると思うが、ほぼ完売状態に近いことを考えれば、一定の需要には応えたのだろうと思う。 
                発売開始後、すでに数年を経ているにもかかわらず、中古価格も8500円程度で値崩れしておらず、こうしたことを勘案すれば常用されていることがうかがわれ、これはこれで有り難いことだと感謝している。 
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