2001年8月25日〜27日:弥彦湯めぐり


 毎年この時期に仕事を兼ねて、温泉に宿泊する機会があります。昨年は糸魚川市の焼山温泉でしたが、今年は弥彦温泉です。弥彦山は、新潟平野に暮らす人々にとってはなじみ深い山であり、誰もが一度は登ったことのある山でもあります。その麓に弥彦神社があり、門前町として栄えたのが弥彦温泉です。今回の宿は四季の宿みのや。実は2000年の正月に宿泊し、この温泉日記でも既に紹介済みです。若くて美人揃いで、従業員教育の行き届いたいい旅館という印象だったのを思い出します。

 さて、第1日目の仕事を終え、さっそく入浴です。シースルーエレベーターに乗って8階の展望大浴場に上がります。ここからの眺めはすばらしく、弥彦の温泉街のほか新潟平野が一望されます。これは弥彦随一の展望と思われます。
 浴室は時間による男女の入れ替えはなく、向かって右が女湯、左が男湯です。浴室には、大浴槽のほか露天風呂、サウナがあります。大きなガラス張りで、展望がいいはずなのですが、目隠しシートが貼られ、景色が直接見えないのは残念です。でも、窓を開ければ抜群の眺望を楽しめます。

 ところで、弥彦温泉は、源泉温度25℃の含硫黄-ナトリウム-塩化物泉で、源泉は塩味とともに硫黄味・硫黄臭がするのが特徴です。実は弥彦温泉は隣の観音寺温泉からの引き湯です。源泉温度は低いですから、当然加熱使用していますので、加熱循環しているうちに、ガス性成分は飛んでしまうという弱点があります。
 さて、ここの大浴槽は、石造りで四角形のひとつの角を削ったような形で、球形の石からお湯が注がれています。清潔感あふれる浴槽なのですが、ここの湯は循環式で無色透明無味無臭、残念ながら源泉の面影は感じられません。
 露天風呂は四角形で、木枠に囲まれて和風のたたずまいです。こちらはしっかりと源泉が使われています。循環式で硫黄分は薄く感じますが、塩味がします。ここからは弥彦山頂が眺望され景色はまあまあです。源泉が露天風呂だけというのは残念ですが、後で述べますように、他の旅館を湯めぐりした感じでは、ここの風呂は良心的と言えます。
 

 これで今回の話は終わりではありません。先回の温泉日記にも書きましたが、弥彦温泉に泊まると、組合に入っている旅館のお風呂に無料で入れるという企画があります。全旅館でないのは残念ですが、日本観光旅館連盟弥彦会の会員の、ホテルいずみ、旅館清水屋、四季の宿みのや、弥彦館冥加屋、名代屋旅館、お宿だいろく、弥彦グランドホテル、旅籠新風楼、割烹の宿櫻家、ホテル上州苑の10館のお風呂が無料で入れるほか、その他の館内利用のサービスを受けることができます。ただし入浴は15:30〜21:30に限られます。ホテルのフロントに頼むと、宿パスという当日のみ有効のパスポートを発行してもらえます。それを持って他の旅館に行くとスタンプを押してもらえ、記念にもなります。この宿パスを持ってさっそく湯めぐりです。
 

 まず、最近浴室を増設した弥彦グランドホテルに行きました。フロントに宿パスを提示すると快く浴室に案内してくれました。ここは従来からの「たまゆらの湯」に加えて、新しく「まほろばの湯」が新設され、是非行ってみたいと思っていました。
 まほろばの湯は、「おぼろ」、「あけぼの」に分かれ、「おぼろ」には露天風呂、ぬる湯、寝湯、大風呂、歩行浴、打たせ湯、釜むし風呂、「あけぼの」には、幻想パノラマ露天風呂、ジャグジー、大風呂、寝湯、マッサージ浴、ボディシャワー、ハーブ湯、ハーブサウナ等があります。今回は、男湯は「おぼろ」でした。
 浴室は思ったほどは広くなく、長細い浴室空間に各種浴槽が配置されていて、狭苦しく感じます。和風の造りですが、広々感がないため、落ち着いた雰囲気は乏しいように思いました。浴槽の充実度は弥彦随一であろうと思われましたが、源泉を使った浴槽は「ぬる湯」という小さめな浴槽だけなのは残念です。逆に言えば、源泉にこだわらなければ、健康ランド並に楽しめるということでもあります。

 
 次はお宿だいろくです。建物は交差点の角ギリギリに建っていて、一見旅館らしくないのですが、玄関は左手奥に落ち着いた雰囲気であります。チェックインの客で忙しそうでしたが、女将は快く迎えてくれてホットしたあたたかい気分を感じました。
 ここの風呂は、大きな樽の露天風呂が名物であり、ガイドブックやパンフレットにはこの写真ばかり出ていますが、貸し切り露天風呂のようで利用できませんでした。それでも明るくきれいな浴室で清潔感がありました。ただし、大浴槽のお湯は源泉の趣はなく、無味無臭でした。しかし、横に源泉が掛け流しされた小さな浴槽があり、これは硫黄臭・硫黄味がしてしょっぱい、まぎれもない弥彦温泉の源泉そのものです。ここに入りたいところですが、実はA4版程度の小さな水槽であり、片足を入れるのがやっとなのです。でもせっかくですから、洗い桶に汲んで体を流して、いわゆる「みなし入浴」としゃれ込みました。
 
 
 次にもう一軒だけということで、たぬきの置物が名物の冥加屋に行ってみましたが、今日は混んでるからということで、あっさりと玄関払いされてしまいました。あまりに簡単に断わられてしまい、他の旅館が親切だったこともあって、びっくりしてしまいました。初日はこれで終わりにしました。
 
 
 2日目の仕事を終え、夕食前に再び湯めぐりに出かけました。
 
 まず名代家に行きましたが、ここも快く受け入れてくれました。ここは、玄関の構えは小さいのですが、奥に6階建ての客室棟が隠れています。
 2階に浴室がありますが、大浴槽があるのみです。浴室に窓はなく、残念ながら景色は楽しめません。四角形の浴槽の中央にお湯の噴き出し口が設けられていますが、お湯は無色透明無味無臭で、源泉の趣はありません。掲示された成分表・効能書きが虚しく感じられます。脱衣場の床が木で、これは気持ち良いものでした。
 
 
 次は清水屋。玄関先はひっそりしています。声をかけても誰も出てきませんが、ようやく女将さんが出てきてくれました。入浴を頼んだところ、女将は家庭風呂程度の小さな浴室だと恐縮しておられましたが、気にしないでくださいとこちらが慰めたりしちゃいました。
 フロント奥に、小さいながらもきれいな浴室がありました。浴槽がひとつのみでしたが、小さな旅館としてはそれなりの大きさと思われます。ここのお湯は淡黄色と呈し、源泉を期待しましたが、他の旅館同様に、加水・循環されていると思われ、源泉の雰囲気は失われていました。
 
 
 そしてまた冥加屋に再挑戦です。今回は空いている時をねらって行ったのですが、今回もあっさり断られてしまいました。玄関先に入浴を受け付けているとの看板も出ていたんですが、タイミングが悪かったようです。諦めるしかありません。
 
 まだ巡れる旅館はありますが、歩いて行くにはちょっと遠そうなので、今回はこれでおしまいです。総じて言えるのは、湯量は乏しいらしく、どの旅館も源泉を味わうには不十分ということです。どの旅館も成分表をしっかり掲示しているだけに、成分表と実際の湯の性状のギャップにちょっと残念に思いました。新しい源泉でも見つからない限り、この現状は変わらないんでしょうねえ。
 

 さて、みのやに戻ります。2泊3日同じ宿で過ごしましたが、前にも書いたとおり、ここの従業員は若くてきれいだというのは感動ものです。団体の低予算の宿泊でしたが、料理は十分なものでした。館内の清潔さ、何気なく飾られた客室の生け花、ロビーに置かれたオルゴールの調べなど、女将の人柄がしのばれます。ロビーにはしっかりと禁煙コーナーが作られているのもたいしたものです。また宴会棟から眺める弥彦神社の杜はすばらしく、この旅館ならではの楽しみと思われます。また、宴会後に食べたラーメンは美味しい味を出していました。他の客の出発を見送る姿を眺めていましたが、車が交差点を曲がるまで、お辞儀し続けている姿を見て、少し感動してしまいました。今後のますますの発展に期待したいと思います。
 
 以上、弥彦湯めぐりのお話でした。