2000年8月26日〜28日:西頸城 温泉三昧


 毎年この時期に、仕事で2泊3日出かけなければなりません。たいていは温泉地での仕事なので、温泉好きとしては楽しみな点もあるのですが、仕事は仕事です。土日にもかかるし、拘束されるのはつらいものがあります。今年は糸魚川の焼山温泉に行くことになりました。しかし、ただではころびません。ついでに近隣の温泉巡りもしてきました。

 26日は、昼までに焼山温泉に集合することになっていました。どう巡ったら、効率よく行けるか前の晩から考えていました。私は、西頸城地方はほとんど回っていませんでしたので、行きたいところはたくさんあります。雨飾温泉、蓮華温泉など是非行きたいところですが、時間的に無理があります。国道から遠くない手近な温泉を回ることにしました。

 柏崎を8時前に出発して、まずは能生町の柵口温泉です。目立つ看板が多数あって、道は迷いません。後で大平やすらぎ館にも寄るつもりなので、曲がる交差点をチェックしておきながら進みます。しばらく進むと、対岳荘を初めとする旧来の柵口温泉を通ります。ここにも寄りたかったのですが、まずはメジャーなところをチェックしておこうということで、権現荘に向かいました。少し進んだカーブの先に権現荘が見えてきました。手前に温泉センターがありましたが、まずは本館に行くことにしました。ここまでバス路線が来ているらしく、玄関前の駐車場でバスが出発の時間待ちをしていました。

 受付で820円払って入館。休憩場所など親切に教えてくれました。ロビーは宿泊客で賑わっていました。左手の浴室に向かいます。脱衣場は広めです。まずはいつものように、成分表のチェックです。デジカメに収めて入浴。浴室には長方形の浴槽があり、中央にお湯の注ぎ口があって、湯が循環されていました。左端は浅くなっていて、寝湯として使えるようになっていました。ただ、ちょうどそこが露天風呂の出入り口になっていて、じゃまになりそうでした。露天風呂は岩造りで、かなりの広さでした。下を能生川が流れ、木々の緑がきれいでした。しかし、それほど景色がいいわけではありませんでしたが。他に客もいないので、写真を数枚撮って上がりました。先を急ぎますので、820円はもったいないと思いながら、広間での休憩なしに退散しました。

 このまま次に向かおうと思いましたが、柵口温泉センターも気になりますので寄りました。入浴だけなら310円と格安です。結構賑わっていて、休憩用の広間は老人の方々で混雑していました。浴室も数人の客がおられました。浴槽は丸く、湯は掛け流しされていました。清潔感もあり、気持ちよく入浴できました。成分表は権現荘と若干異なりますが、体感上違いはわかりません。館内は狭く、休憩場所も乏しいので、早めに出てきました。

 ここまで来た道を引き返します。旧来の柵口温泉も気になりますが通過です。ここは冷鉱泉を天然ガスで沸かしているといいます。出直して、いつかまた訪れましょう。しばらくすると、大平やすらぎ館への手書きの看板が目に付きました。来るときにチェックした場所と違うのですが、近道だろうと思い、進みました。細い山道で、車のすれ違いも大変な道でしたが、舗装はちゃんとされていました。この道でいいのかと不安になりながらくねくね道を上っていきます。視界が開けたところに、できたばかりのグリーンメッセ能生がありました。かなり山の上なので、見晴らしは良く、すがすがしい気分です。でも、こんな山の上にゴルフ場を作ることもないのにねえ・・、などと思ったりもしました。町興しのためなんでしょうけど。

 さて、このゴルフ場のクラブハウスも兼ねるのが大平やすらぎ館です。受付は同じなので、ゴルバッグを持ったグループといっしょでした。入浴のみは300円でした。館内は木の香が漂い、木材が豊富に使用されています。材料は間伐材を使っているとの説明書きがありました。浴室に行き、さっそく成分表のチェックです。総硫黄泉? 聞き慣れない泉名だなあ。成分表をみても成分は乏しく、ほとんどただの地下水のようです。しかし、硫化水素イオン、チオ硫酸イオン、遊離硫化水素を合計すれば1mg/Kgを超えるので、総合すれば硫黄泉ということで、総硫黄泉ということなんでしょう。浴室は明るく、窓からの見晴らしも良好です。目張りの柵がなければ、もっといいんですが。さてお湯ですが、無色透明無味無臭。硫黄臭がするかと思ったのですが、何にも臭いません。加熱して硫化水素成分は飛んじゃったんでしょう。少々がっかりです。館内を散策して次へ向かいます。

 今度は、ここまで来た道と反対側に進みます。やっぱりクネクネの細道です。山を下ったところで、島道鉱泉への分かれ道に出会います。島道鉱泉も魅力あるのですが、時間的余裕がなく、今回はパスです。平場へ出て若干広くなった道を行き、権現荘への県道に行き着きました。さらに国道8号線に戻り、糸魚川方面に進みます。時間的にまだ余裕がありそうなので、長者温泉にも寄り道することにしました。木浦川に沿って山に入っていきます。今度はそれほどの距離ではありません。3kmくらいでしょうか。でも山に来たという感じです。集落の中に完全に溶け込んでいて、2階建ての木造の建物は民家そのものです。

 300円払って入浴です。脱衣場で成分表を探しましたが、見あたりません。あとでいいやということで入浴。湯は無色透明無臭。しかし飲んでみると若干味がします。柑橘系というかメンソール的というか、何か味がするんです。温泉本来のものなのか、たまたま石鹸とか不純物が混ざったのか分かりませんが・・。上がった後は、これまでのラフな格好から、仕事用の服に着替えました。浴室を出て周囲を見渡すと、外に成分表が掲げられていました。メタ珪酸泉とありました。要するに温泉法の基準を満たすのがメタ珪酸の項目だけと言うことです。ぎりぎりセーフというところですが。館内はご年輩の方々で賑わっていました。そろそろ時間なので、急がねばなりません。

 再び国道8号線に出て、糸魚川に向かいます。早川橋のところで、大きな看板が出ているので、道は大変分かり良いです。早川沿いに進みます。道は広く整備されています。ほとんどカーブもないなだらかな坂道です。個性的な山々が見え、快適なドライブです。ずいぶん上ってきたはずなのに、家並がなかなか途絶えません。ようやく赤い屋根の焼山温泉が見えました。さらに坂道の奥に、笹倉温泉も見えます。川を渡ったところに焼山温泉がありますが、巨大な看板が異様に威容を誇ります。広い敷地で、赤い屋根がしゃれた感じです。左手にスキー場のリフトがのびていました。実際に入館してみると、結構古くさいことが分かります。ちょっと古ぼけて暗い印象を受けます。入浴客がかなり多く来ていて、私も「入浴のお客様ですか?」と最初声をかけられたくらいです。実は、26日はふろの日で、入浴料無料なんだそうです。

 ここが今回の仕事の場です。どういう仕事かって? 在宅の患者さんが集まって、親睦を深めたり、検診を受けたり、いろいろな相談をしたり、要するにそういう会で、私がスタッフとして呼ばれたわけで、2泊3日、ここ焼山温泉清風館で過ごします。

 さて、初日の仕事を済ませ、夕方入浴です。まずは例によって成分表の確認。単純泉。あまり特徴なさそうだなあと期待せずに入浴。高い天井の開放的な浴室です。大小2つの岩を配した浴槽があり、湯が掛け流しされています。入ってびっくりしました。白い湯花が大量に浮遊していました。肌もすべすべになるし、温まりもよし。飲泉コップがあるので飲んでみると、硫黄味もします。すっかり気に入ってしまいました。とても成分表からは想像できないいい泉質です。窓からは巨岩を配した庭園が見えます。脱衣場から露天風呂に出れるようになっていますが、池の後ろの岩陰にある小さなものでした。これだけの庭の中だから、もっと大きくすればいいのにねえ。ここで重大な発見をしました。女湯の露天風呂も男湯同様に庭先を歩いた先にあるようなのです。男女の仕切は当然あるのですが、隙間があって、女性の通る姿が分かるのです。いつまでも見ていたい気持ちでしたが、スケベ男に思われても何なので、気付かない振りをします。後で聞いたら、女湯からも男の姿がよく見えるんだそうです。お互い様ですね。翌朝、朝風呂にいくと、山々が晴れ渡り、遠く噴煙の上がる焼山まで眺望できました。景色の良さで、ますます気に入ってしまいました。

 2日目の仕事をすませ、夕方若干の空き時間ができました。そこで、すぐ隣の笹倉温泉に行って来ることにしました。なだらかな坂道を、さらに1kmほど進みます。アルペン風の建物が遠くから見えますが、それは裏側で、玄関は反対側にあります。行くと、日帰り入浴の人は隣の千寿荘に行ってくれとの張り紙がありました。千寿荘は旧館で、糸魚川市の老人憩いの家でもあるんだそうです。入り口横に薬師如来が祀ってありました。料金は休日料金で、100円増しの800円でした。館内は質素で、浴室も広くありません。しかし掛け流しの湯はきれいであり、清潔感があります。注ぎ口には飲泉用の柄杓が置いてありました。湯に入ると肌はツルツルです。このツルツルの度合いはかなりのものです。重炭酸ナトリウム含有量日本一と紹介されているだけはあるようです。ここはここですばらしいのですが、本館にも行かないと800円の元は取れません。本館はたいそうきれいです。浴室脇にはラーメン処もあるし、スリッパを脱いで浴室への向かう通路も高級感があります。浴室も御影石作りで豪華です。庭園露天風呂もあります。虫対策のためのネットが興ざめでしたが。この温泉は泉質的に個性的であり、ツルツル感は魅力的です。入浴料が高いのがしゃくですが、いい温泉だと思いました。

 焼山温泉に戻って、夜の仕事を終え、また入浴しました。少々アルコールが入っていい気分で、露天風呂脇の岩の上で気持ちよく一眠りしました。至福のひとときでした。3日目は、昼過ぎで仕事は終了しました。総じて、館内は古めかしく、改修が望まれます。特に洋式トイレが1ヶ所もないというのは、改善が必要だと思いました。障害を持った方には過ごしにくい温泉でした。ロビーに何故かパンダの剥製があります。熊に色を塗ったんじゃないかという人もいましたが、本物らしいです。ワシントン条約が締結される前に購入したものとフロントの人は説明してくれました。

 漸く仕事から開放され、気分晴れ晴れです。帰り道はなだらかな下り坂で、ほとんどアクセルを踏まなくていいくらいでした。山の中だと思っていましたが、時間的にはたいしたこともなく国道に出ます。このまま帰るのも何なので、親不知のまるたん坊に寄ってから帰途につきました。

 何だかんだで、風呂に入りっぱなし。ボーット体中がだるいのは、仕事疲れというより、湯あたりかもね。