今日は、マリン・オルソップ指揮によるウィーン放送交響楽団の演奏会です。今回の来日公演は、人気ピアニストの角野隼人さんとの共演を売りにしており、角野さんの名前を前面に押し出しています。
角野さんは、ブルボンのルマンドのCMに曲を提供したことがある関係からか、新潟公演はブルボン創立100周年記念の特別公演となっています。
それはさておき、ウィーン放送交響楽団は、ウィーン・フィル、ウィーン交響楽団と並んで、日本でも良く知られたウィーンのオーケストラです。その実力はさておき、ベルリンと同様に、名前にウィーンが付くだけでありがたく感じてしまいます。
このウィーン放送交響楽団は、2009年3月の新潟での演奏会(指揮:キタエンコ)を聴いたことがありました。その後、2012年3月(指揮:マイスター)にも新潟に来演していますが、そのときは聴きに行けませんでした。私としましては、今回が2回目ということになります。
一方、角野隼人さんは、2023年2月の演奏会を初めて聴いて、その卓越した演奏と並外れた才能に驚嘆しました。そして、今年の2月に柏崎で開催された「角野隼斗 全国ツアー2024 “KEYS”」に行く予定だったのですが、仕事が入って行くことができず、チケットを無駄にしてしまいました。そんなこともあって、今回は是非とも聴きたいと思っていました。
この新潟公演の主催はBSN新潟放送(特別協賛:ブルボン)でしたが、チケットはSS席が設定され、角野さんシフトというべき座席配分で、ステージに向かって左側3分の2の1階席と2階正面前方はすべて高額なSS席で、2階席のBブロック、Cブロックの残り、Dブロック、Eブロックの半分、3階正面のほとんどがS席の設定になっていました。ここまで極端な座席配分は角野さんならではと思われ、大したものだと感服しました。私は3階サイドのA席でがまんです。
さて、今回の日本ツアーは、9月7日の神奈川県民ホールに始まり、東京、香川、愛知、福岡と長距離移動した後、1日置いて新潟に来演し、その後は長野、大阪、所沢、札幌、広島と公演が続きます。まさに日本列島を縦横に移動し、過酷なスケジュールには驚きです。もっと楽な周り方はないのかと勝手に心配してしまいます。
プログラムは、前半の2曲は各公演で共通ですが、後半はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」がAプロ、第7番がBプロとなっており、新潟はBプロです。
日本ツアーの11公演のうち、ちょうど中間の6公演目が新潟公演であり、演奏もこなれているものと期待します。福岡からの長距離移動ではありますが、1日空いていますので、疲労回復していることを願います。でも、団員の移動はともかく、楽器の搬送は大変と思われ、運送担当者にも同情します。
ということで、仕事を早めに切り上げて、大急ぎで白山公園駐車場へと車を進めました。小雨がぱらつく中にりゅーとぴあに入りますと、ロビーは入場する人たちで賑わっていて、熱気に満ちていました。予想されたことではありますが、角野さん目当ての人が多いようで、圧倒的に女性が多く、若い女性が目立ちました。
インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、急いで入場しました。特別協賛のブルボンの商品が並べられていて、いかにもブルボン関係者と思わしき、スーツ姿の集団が並んでいて、来賓を出迎えているようでした。
販売ブースでは、角野さんのCDのほか、ツァープログラムが販売されていましたが、2000円の物が2種類販売されており、その商魂には驚きました。もちろん、私は買いませんでしたけれど。
ホールはほぼ満員の大盛況です。私の席は、チケット代をけちって、3階の左サイド席です。視界的には良くありませんが、値段相応ということで文句は言えません。
開演時間となり、団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、全員揃ったところでコンミスが礼をして、チューニングとなりました。
1曲目は、弦楽だけで、モンゴメリーの「ストラム(オーケストラのための)」です。有料のプログラムには解説があるのかもしれませんが、どのような趣旨の曲なのかは全く不明です。
弦楽だけでの演奏で、オケの配置は、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、弦5部は、14-12-10-8-6 ですが、日頃よく目にする対向配置とは異なって、ヴィオラが左、チェロとコントラバスが右の配置でした。
オルソップさんが登場して演奏開始です。心地良い弦のピチカートに始まりました。ギターを弾くような持ち方で弾いたりと、意表をつかれました。その後は、ピチカートに弦楽の美しいメロディが上乗し、豊潤な弦楽の響きにうっとりとし、このオケの素晴らしさを実感しました。現代音楽ではありますが、非常に聴きやすい曲であり、楽しめる演奏でした。
ステージが整えられて、ピアノが設置され、管楽器とティンパニが加わって、2曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」です。弦は12型に縮小されました。
角野さんとオルソップさんが登場して演奏が始まり、美しく軽快なオケによる序奏の後にピアノが加わりました。軽快で躍動感に溢れる演奏で、角野さんのクリアで煌くようなピアノが、明るく舞い踊っていました。カデンツァは自作だそうですが、自由闊達に駆け回っていました。
第2楽章は、やわらかく、ゆったりと歌い上げて、軽快なピアノとともに第3楽章へ。切れの良いオケとともに、軽やかで爽やかな音楽の泉が沸き出ました。カデンツァを美しく歌い上げて、フィナーレへと駆け抜けました。
まさに角野さんの真骨頂といいますか、生き生きとした、躍動感溢れる音楽がホールを満たし、聴く者の心を明るくさせてくれました。ホールを埋めた聴衆を熱狂させて、大きな拍手が贈られました。
アンコールは、お得意の「きらきら星変奏曲」か「トルコ行進曲」かと予想していたのですが、なんとガーシュウィンの「スワニー」でした。角野さんが曲名を告げて演奏が始まりましたが、角野ワールドが炸裂しました。ジャズテイストに溢れるノリノリの演奏に、否が応でも興奮させれらて、観客の心を鷲掴みにしました。さすが角野さんですね。人気の理由がよく分かります。オケのメンバーも大きな拍手を贈っていました。
拍手は鳴り止まず、カーテンコールが続きましたが、客席の照明が明るくなって、強制的に前半は終了となり、休憩に入りました。
後半は、ベートーヴェンの交響曲第7番です。最初と同様に、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、全員揃ったところでコンミスが礼をして着席し、おもむろにチューニングになりました。弦は14型に戻りました。
オルソップさんが登場して演奏開始です。第1楽章は、少しゆっくり目に始まりましたが、お馴染みの主題が提示されるところから、グイグイとエネルギーを増していき、少々荒々しく思えるほどにパワーアップして、力強く楽章を盛り上げました。
第2楽章は、低弦によるメロディがしっとりと奏でられましたが、左からヴィオラ-チェロ-コントラバスという弦の並びによる聴こえ方が新鮮に感じられました。速すぎず、遅すぎず、中庸を行くテンポでしょうか。美しい演奏でした。
第3楽章は、軽快に歯切れよく、駆け足するように演奏が進み、速目の演奏で小気味よく感じられました。大きくためを作ってギアチェンジし、猛スピードで駆け抜けました。
アタッカで第4楽章へ。グイグイとスピードアップし、トップギアでパワー全開。フルスピードでフィナーレへと突入し、熱く燃え上がりました。
ホールは熱い熱気に満たされ、興奮のるつぼとなり、ブラボーとともに大きな拍手が沸きあがりました。拍手に応えて、全員でP席にも礼をしていました。
オルソップさんが英語で挨拶し、アンコールを2曲演奏する旨の話があり、2曲続けて演奏されました。1曲目は、このオケのために作曲されたというアイゼンドレの「ダークグリーン」で、ジョン・ウィリアムズの映画音楽のように、色彩感と躍動感に溢れる音楽で、ティンパニが変わった音を出したり、最後は足踏みをしたりと、独創的な演奏効果もあって、大いに楽しめました。
そして、続けてJ.シュトラウスの「シャンパン・ポルカ」が楽しく演奏されました。ティンパニ奏者が筒に詰めたコルク栓を客席に飛ばしたりして客席を沸かせ、最後はオルソップさんも筒を取り出して、コルク栓を飛ばして、大盛り上がりの中に終演となりました。
期待通りの演奏に、大きな感動をいただきました。角野さんの演奏はさすがであり、オケの演奏も快活であり、オルソップさんの創り出す音楽は躍動感に満ちていて楽しめるものでした。
アンコールも含めて、楽しめる演奏ばかりで、芸術性がどうのと議論することは馬鹿らしく、単純に音楽を楽しみ、音楽の喜びを感じることができました。
カーテンコールは、動画はNGでしたが撮影可能とのことで、私も記念に撮影させていただきました。いい音楽を聴いた喜びとともにホールを後にし、ストレスが待つ家へと車を進めました。
(客席:3階J1-13、A席:\8000) |