奥村 愛 & 山宮るり子 デュオリサイタル | |
←前 次→ | |
2024年8月31日(土) 14:00 ラポルテ五泉 多目的ホール | |
ヴァイオリン:奥村 愛 ハープ:山宮るり子 |
|
エルガー:愛の挨拶 マスネ:タイスの瞑想曲 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番 シュポア:ソナタ・コンチェルタンテ Op.113 (休憩15分) サン=サーンス:幻想曲 スメタナ / トゥルネチェク:モルダウ バルトーク:ルーマニア民族舞曲 加藤昌則:ケルト・スピリッツ (アンコール) マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲 |
|
今日は、新潟出身で全国で活躍しているヴァイオリンの奥村愛さんと、ハープの山宮るり子さんのデュオリサイタルです。 最近までこのコンサートの存在を知らず、当初は行く予定にしていなかったのですが、時間が取れましたので、急遽聴きに行くことにしました。 いつものルーチンワークを終えて、某所で昼食を摂り、バイパスは通らずショートカットの道を通って五泉入りしました。快適なドライブで、五泉市街の外れにあるラポルテ五泉に到着しました。 ここは道の駅的な複合施設なのですが、この中に客席収納式の500席の多目的ホールがあります。このホールでの演奏会を聴くのは、昨年9月の笛田博昭さんのコンサート以来です。 開場待ちで混雑しているかと思ったのですが、物品販売や子供の遊び場の喧騒と相反して、ホール前は閑散としていました。本当にコンサートがあるのか心配しましたが、開場時間が近付くに連れて、人が集まりだして、開場待ちの列ができました。 13時15分に開場となり、私も当日券を買って入場し、ヴィジュアルを重視して、正面3列目に席を取りました。前に他の客はおられませんでしたので、視界は抜群です。この原稿を書きながら開演を待ちましたが、ホールは次第に埋まってきて、かなりの盛況となりました。 開演時間となり、薄いパープルのドレスの奥村さん、モスグリーンの柄入りドレスの山宮さんがステージに登場。期待通りのお二人の美貌に演奏前からうっとりしました。前方に席を取って良かったです。 挨拶代わりにエルガーの「愛の挨拶」を演奏し、美しいヴァイオリンとハープの音色で魅了し、一気に会場の空気をつかみました。眼前数メートルでの演奏でしたので、私の席では直接音がメインですが、ホールもいい響きでした。 二人による挨拶があり、以後トークをはさめながら演奏が進められました。2曲目はマスネの「タイスの瞑想曲」を、ハープの美しい調べに乗せて、ヴァイオリンがしっとりと歌い、心にしみる音楽にうっとりとしました。 山宮さんが退場し、3曲目はヴァイオリン独奏で、イザイの「無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番」です。奥村さんにより解説がありましたが、クライスラーに献呈された曲だそうです。 第1楽章は、シーンと静まり返ったホールに、心をえぐるような、研ぎ澄まされたヴァイオリンが響き渡りました。第2楽章は、ピチカートで始まり、ゆったりと歌い、切なくも、しっとりと染み入る高音の美しさに酔い、ピチカートで終わりました。第3楽章は、激しく速いパッセージに圧倒され、たたみかけるように、どんどんと熱を帯びて、心を揺さぶりました。 山宮さんが戻ってきて、4曲目は、シュポアの「ソナタ・コンチェルタンテ」です。演奏前にトークがありましたが、ホールの湿気が強くて、演奏中にその対策に思い巡らしていたこと、シュポアはヴァイオリンの顎当てを発明した人であること、シュポアの奥さんはハープ奏者で、この曲は2人での演奏を想定して作られたであろうことなど、楽しく拝聴しました。 第1楽章は、明るく始まり、ハープの速い指使いに乗せてヴァイオリンがゆったりと歌いました。第2楽章は、優しいハープとともに、ヴァイオリンが美しく舞い、憂いを秘めた爽やかな音楽にうっとり。第3楽章は、軽やかにステップを踏み、明るく楽しげに舞い踊りました。ヴァイオリンと超絶的なハープとが伍してせめぎ合い、寄り添い、二人の魅力が余すことなく示された素晴らしい演奏でした。 休憩後の後半の1曲目は、サン=サーンスの「幻想曲」です。ヴァイオリンとハープのためのオリジナル曲で、この組み合わせでの定番曲だそうです。 水面に水滴が落ちて小さな波紋が広がるように、音が静かに広がり、ひと呼吸おいて雄弁に歌いだしました。激しくリズムを刻んで情熱的に歌い、そして、ゆったりとした静けさの中に音楽の泉が湧き上がりました。 ハープとヴァイオリンが寄り添い、静けさの中で胸に染み入る音楽は、やがて熱く燃え上がり、緩急を繰り返して、波打つハープとともに、静かに曲を閉じました。 二人の卓越した演奏技術に支えられて、聴き応えある演奏で聴衆を魅了し、この曲の素晴らしさ、音楽の素晴らしさを知らしめてくれました。 奥村さんが退場して、譜面台は片付けられて、続いてはスメタナの「モルダウ」です。オーケストラ曲をハープ奏者のトゥルネチェクがハープ用に編曲したもので、山宮さんの定番曲であり、これまでにも何度か聴かせていただいています。 演奏前にハープの解説があり、7本のペダルがあって、3段階で音を調節していることなど実演を交えて説明してくれて、客席からは「オー」という声が上がりました。今年はスメタナの生誕200周年なんだそうですね。入念なチューニングの後に演奏が始まりました。 湧き出た泉が流れとなり、やがて水量を増して大きな川となりました。超絶的な手さばき、足さばきもお見事であり、雄大なモルダウの流れが眼前に広がり、客席からはブラボーが贈られました。 山宮さんが退場し、再び譜面台が設置されました。二人が登場し、続いてはバルトークの「ルーマニア民族舞曲」で、6曲の短い曲が切れ目なく演奏されます。 重厚なハープとヴァイオリンに始まり、軽やかにリズムを刻み、幻想的にメロディを奏で、そして激しく歌い、軽快に踊り、激しくリズムを刻んで、熱を帯びて終わりました。これも聴き応えがありました。 そして、最後は加藤昌則の「ケルト・スピリッツ」です。スカボローフェアに始まり、グリーンスリーブス、ロンドンデリーの歌など、なじみのあるメロディが次々にメドレーで現れて、まさにケルト的な響きで魅了されました。ホールの聴衆に大きな感動をもたらし、二人の好演に大きな拍手とブラボーが贈られました。 アンコールに「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲をしっとりと、染み入るように演奏し、極上のデザートとともに、感動の演奏会は終演となりました。 安定感のある二人の素晴らしい演奏に酔い、こなれたトークも楽しめました。年齢を積み重ね、その美貌も熟成し、新たな魅力を醸し出していました。生み出された音楽だけではなく、煩悩だらけのジジイはヴィジュアル的にも魅了されたのでした。 スマホの着信音を鳴らしたごく一部の聴衆はおられましたが、聴衆も素晴らしかったです。演奏中は真剣に聴き入り、演奏が終わると大きな拍手で応えて、ブラボーも湧き上がりました。皆さん本当に気持ちよく音楽を楽しんでおられ、期待以上の素晴らしさに満ちた演奏会でした。 楽しいひとときを過ごし、大きな満足感を胸にホールを出ますと、複合施設ならではの賑わいの空間となっていて、すぐに現実に引き戻されました。でも、かしこまらない、この生活感にあふれた庶民的な空間もいいですね。 (客席:C-19、\2000) |