12月になり、新潟の冬を象徴する鉛色の空が続いています。海岸・平野部の積雪は一時的でしたが、連日の雨模様で、今日も天候は優れません。
こんな週末ですが、新潟の音楽界は活発であり、連日たくさんのコンサートが行われています。昨日も行きたいコンサートがあったのですが、仕事で行けなくて残念でした。
今日も聴きたいコンサートが重なってしまいましたが、ベルガルモの3人のご尊顔が思い浮かび、巻文化会館で開催されたトリオ・ベルガルモのコンサートを選びました。
トリオ・ベルガルモは、12月17日に新潟駅前のマルタケホールでコンサートを開催されますが、その前哨戦といいますか、プログラムを先取りできるのがこのコンサートです。
17日のコンサートにも行きたいところではありますが、私はマルタケホールは好きになれず、このコンサートに絞ることにしました。
さて、今日のコンサートは、巻地区まちづくり協議会が主催する「巻地区まちづくり音楽文化講座」としての公演であり今回が15回目となります。
西蒲区以外には広報されておらず、区外では知らない人も多いものと思います。区民でもない私ですが、2017年8月の第1回から参加させていただいております。
出演者は毎回異なり、多彩な演目で楽しませてくれましたが、2019年3月の第11回からトリオ・ベルガルモが出演され、その後、第12回は聴くことはできませんでしたが、2020年10月の第13回、2021年10月の第14回と参加させていただいています。
最近は「秋の音楽会」として開催されてきましたが、巻文化会館の改修工事が行われた関係で、今回は12月で「冬の音楽会」として開催されました。
今日は朝から風雨が強く、出かけるのもはばかられるようであり、心身の疲労も蓄積して、休養しようかとも思いましたが、昼前には雨も止みましたので、思い切って出かけることにしました。
ゆっくりと昼食を摂り、1時前に家を出ました。混雑することなく車を進め、ほどなくして巻文化会館に到着しました。このホールは住宅街の中にあって、アクセス道路が細くて分かりにくいのですが、迷わずにたどり着くことができました。工事中で
フェンスで囲まれており、その間から玄関に入りました。
館内に入りますとすでに開場されており、チケットを買って入場しましたが、まだピアノの調整中とのことで、ロビーでしばらく待った後、ホール内に入りました。
本日はビジュアルも重視しますので、前方に席を取り、この原稿を書きなから開演を待ちました。地元のご婦人方を中心に、次第に客席が埋まってきましたが、それなりの入りというところでしょうか。
このホールは、この秋に長期に休館して、改修工事が行われていました。客席そのものは変わりないようですが、天井や壁、音響反射板がこぎれいになり、床の絨毯も張り替えられたようです。ステージ中央には、先ほどまで入念な調律が行われていたスタインウェイが置かれ、開演を待っていました。
1000席もある大きなホールで、客席の余裕は十分すぎるほどにあるのですが、地元のご婦人方は密集して席を取り、おしゃべりの声がホール中に響いていました。おばさんパワーには降参です。
私は開場とともに入場して席を取っていましたが、後から来られた客は、十分な空席があるにも関わらず、私を取り囲むように密集して席を取り、間隔を空けてよと叫びたくなりました。こんなにも空席があるのにねえ・・。
さて、今日のプログラムは、前半は本格的なクラシックプログラムで、17日のコンサートでも演奏される曲が含まれています。後半は一般向けになっています。
地域住民を対象にしたコンサートなのですが、毎回前半に本格的なプログラムを組むところがベルガルモらしいところです。
けたたましいブザー音とともに開演となり、主催者代表の挨拶がありました。主催者の巻地区まちづくり協議会は、巻地区コミュニティ協議会に名称変更したこと、これまでの15回の音楽会のうち、5回がトリオ・ベルガルモであることなど、お話しされていました。
続いて、毎回お馴染みの、賑やかなご婦人のMCがあり、ベルガルモの3人がステージに呼び出されました。渋谷さんは水色のドレス、庄司さんはダークグリーンのドレス、石井さんはブルーのドレスです。
挨拶代わりに、リストの「愛の夢」をしっとりと演奏しました。まず、ホールの音の響きの良さに感激しました。改修によって残響が豊かになったようで、チェロがふくよかに響き、ヴァイオリンもピアノも美しく響きました。
ここで、庄司さんによる挨拶があり、以後庄司さんによる曲目紹介により演奏が進められました。結局最後まで渋谷さん、石井さんのお声は聞くことができませんでした。
2曲目は、17日にも演奏されるリストの「悲哀、オーベルマンの谷」です。もともとはピアノ曲ですが、リスト自身がピアノトリオ用に編曲したものです。
重厚なピアノに導かれてチェロの悲しげなメロディが歌い、ヴァイオリンに引き継がれ、以後切なく胸にしみるメロディに胸を熱くしました。豊潤にホールに響くチェロの低音の美しさは特筆すべきであり、ヴァイオリンもピアノも美しく、ホールの響きの良さとともに、3人の素晴らしさを再認識しました。この曲を聴けただけでも今日来た甲斐があったと思えるほどでした。
3曲目は、17日の演奏会でメインの曲として演奏されるフォーレのピアノ三重奏曲から、全3楽章のうち第1楽章のみが演奏されました。
ピアノに導かれて、チェロが朗々と歌い、ヴァオリンが絡み合い、静かで穏やかな曲調の中にも情熱も垣間見えました。3人の魅力が凝縮されて次第に熱を帯び、曲を閉じました。
素晴らしい演奏に全曲を聴きたくなりましたが、全曲は17日の演奏会で演奏するので聴きに来てほしいと庄司さんが話されていました。
前半最後は、サン=サーンスの「女神と詩人」です。この曲も17日に演奏されます。静かに始まるピアノに引き続いて、ヴァイオリンが悲しげに歌い、チェロが心に響くメロディで切々と歌い上げました。
3人がそれぞれに切なくも美しいメロディを奏で、そして絡み合い、穏やかな響きに身を委ねました。哀しみとともに、激しい感情の波が大きなうねりとともに押し寄せ、心打つ音楽に聴き入り、フィナーレでは高揚感に胸が高鳴りました。
前半最後を飾るに飾るに相応しい曲であり、演奏だったと思います。10数分の曲でしたが、大曲を聴いたという満足感を感じました。
さすがベルガルモ。前半だけでも大きな満足感をいただき、このような演奏をたった500円で聴かせていただいて良いのかと思えるほどでした。
休憩後の後半はリラックスしたプログラムです。今日は「冬の音楽会」ですので、冬にちなんだ曲を集めたそうです。庄司さんによる曲目紹介を挟みながら、楽しい曲が演奏されました。
「白い恋人たち」「ラルゴ」という定番曲に引き続いて、「冬のソナタ」でうっとりとさせ、「津軽海峡冬景色」「北酒場」でホールを和ませました。ベルガルモによる演歌もいいものですねえ。
最後は「ブエノスアイレスの四季」からの「冬」で〆てくれましたが、情感溢れる演奏にうっとりと聴き入りました。
プログラム最後は、毎回演奏している「ボレロ」です。ベルガルモの十八番といえましょうか。最初は小さなスティックで弦をたたいでリズムをとり、次第に音量を上げながらメロディを奏で、たった3人で「ボレロ」の楽しさを具現化してくれました。何度も聴いていますが、楽しいですね。
大きな拍手に応えて、アンコールに年末恒例の「歓喜の歌」を演奏し、楽しくも内容の濃い演奏会は終演となりました。
司会のご婦人が再登場して客席に待機していた花束要員の若者が3人ステージに呼び寄せられ、花束贈呈が行われました。
アットホームな和やかな雰囲気の中に、「冬の音楽会」は終了となりました。次回もトリオ・ベルガルモをお呼びするそうですので、来年も楽しみにしたいと思います。
(客席:7-14、\500) |