今日はチェロの新倉瞳さんとピアノの佐藤卓史さんのデュオコンサートです。春の新潟音楽ウィークの一環として開催され、りゅーとぴあ器楽リサイタルシリーズNo.9に位置付けられています。
新倉さんは、スイスを拠点に活動されていますが、日本国内でも活発な演奏活動をされており、音楽番組でお見かけすることもあります。
この新倉さんの演奏を聴いたのは、2013年2月のだいしホールでのリサイタルが最初であり、その後2016年6月の茂木オケのコンサートでは、ドヴォルジャークのチェロ協奏曲を聴く機会がありました。
一番最近は、2020年9月の椿三重奏団として来演したときの演奏で、美しいチェロの響きのほか、その美貌にも感激しました。
2018年12月のりゅーとぴあ1コインコンサートでは、本日共演する佐藤さんとともに出演されていましたが、平日の開催でしたので聴くことはできませんでした。
一方、佐藤さんの演奏は、もしかしたら誰かとの共演を聴いたことがあったかもしれませんが記憶になく、おそらくは今回初めて聴くように思います。
デュオコンサートということで、新倉さんと佐藤さんの2枚看板でのコンサートなのですが、正直言えば、ヴィジュアル的にも魅力がある新倉さん目当てです。
昨日は冷たい雨が降り続きましたが、今日は朝起きましたら、青空が広がっていました。雑務を片付けて、ゆっくりと昼食を摂り、りゅーとぴあ入りしました。
インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、時間がありましたので、外へ出て、やすらぎ堤を散策しました。雄大な信濃川の流れ、川面を吹き渡る春風が心地良く、わが街・新潟の素晴らしさを実感しました。
りゅーとぴあに戻りますと、すでに開場されており、体温チェックと手の消毒をして入場し、この原稿を書きながら開演を待ちました。
開演時間となり、左肩を露出した青いドレスが麗しい新倉さんが登場して、チェロの定番・バッハの無伴チェロ組曲第1番の「プレリュード」を開演の挨拶代わりに演奏しました。音量豊かに、ホールいっぱいに朗々と響くチェロの素晴らしさ。新倉さんの魅力が一気に花開きました。
チェロの音色の良さ、鳴りの良さは、宗次コレクションより貸与されたMatteo Goffriller (1710年製)のためもあるかもしれません。
ここで新倉さんの挨拶があり、佐藤さんが紹介され、二人のトークの後に、定番のサン=サーンスの「白鳥」をしっとりと演奏しました。以後、新潟の話題を交えた二人の楽しいトークと曲目紹介を交えながら演奏が進められました。
トークの間に、楽譜が用意され、譜メクリストが登場して、プーランクの「フランス組曲」が演奏されました。新倉さんの楽譜はタブレットを使用しておられました。
短い7曲からなる組曲ですが、いかにもフランスというような洒落た印象でした。佐藤さんが曲の終わり方が面白いと解説されていましたが、各曲の対比も面白く、楽しく聴かせていただきました。
続く2曲は、佐藤さんのピアノ独奏です。フランスの女流作曲家・シャミナードの「森の精」を、爽やかに、柔らかに演奏し、透き通るような音楽に癒されました。
ここで、シャミナードについての説明がありましたが、佐藤さんが大好きで、力を入れて取り組んでいる作曲家だそうです。当初は楽譜もなくて困ったとのことでした。
続く「エグローグ」も、(男による演奏ではありますが)女性的な優しさ、柔らかさが感じられる抒情的な音楽です。派手さは全くないですが、心にしっとりとソフトに染み渡る音楽に感動しました。
続いては二人の演奏に戻り、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」です。様々な楽器と編曲で、聴く機会の多い曲ですが、チェロとピアノ版は聴き応えがありました。全6曲の対比も鮮やかに、チェロでの超高音や超絶技巧に息を呑みました。
前半最後はチェロの定番であるポッパーの「ハンガリアン・ラプソディ」です。この曲は2013年のリサイタルでも演奏されていますが、抒情的な緩徐部での朗々とした美しい響き、そして急速部での目もくらむような超絶技巧。ブラボーを叫びたくなるような快演に感嘆し、胸を熱くしました。
休憩後の後半は、ショスタコーヴィチです。新倉さんはチラシの写真と同様の白黒のドレスに衣裳替えして登場。佐藤さんもネクタイを緑色に変えて登場し、気分を一新しての演奏です。
まずは、手始めにお馴染みの「ワルツ第2番」を演奏。洒落た中にも、怪しげな雰囲気が漂い、不思議に耳に残る曲です。複雑な思いを心に秘めながら、明るさを装い、ワルツを刻みました。
楽譜が用意され、譜メクリストが登場して、プログラム最後は、今日のメインであるショスタコーヴィチのチェロソナタです。
これまでソフトな印象で、抑え気味で、チェロを引き立てていた印象だった佐藤さんのピアノが、パワーに溢れ、チェロと対等にぶつかり合い、せめぎ合い、切々と胸に迫る音楽に圧倒されました。
美しいメロディラインもあって、うっとりすることもありますが、ソビエト共産党の抑圧下での悲しみ、切々とした祈りが感じられ、今の社会情勢もあって感じることが多くありました。
全4楽章からなりますが、ところどころ、いかにも「ショスタコ」というようなメロディや音の響きがあって、交響曲を聴くような印象を受けながら聴き入っていました。暗さを感じながらの、青白い感動の中に演奏を終えました。
大きな拍手に応えての挨拶で、この曲の後にはアンコールはないほうが良いのではないかと話されていましたが、確かにと思いました。
でも、演奏されたアンコールが素晴らしかったです。スイスを拠点に活動している新倉さんが取り組んでいるという東欧のクレズマーの音楽とのことでした。
2曲続けて演奏されましたが、「祈り」では、新倉さんの天使のような透き通るような歌声に始まり、切なく心に響き、祈りの気持ちを観客全員で共有しました。
続けて「ウクライナの踊り」を演奏し、戦禍に苦しむウクライナの人たちを偲び、エールを贈り、感動のコンサートは終演となりました。
佐藤さんの絶妙なサポートを得ながら、新倉さんの魅力が全開したコンサートでしたが、佐藤さんの独奏によるシャミナードも素晴らしかったです。ショスタコーヴィチでのせめぎ合い、感動のアンコール。良い時間を過ごすことができて良かったです。
感動を胸に外に出ますと、空には雲が広がり、冷たい風が吹いていました。明日は雨の予報。ちょっと気分は暗くなります。
(客席:2階C2-9、¥2500) |