東京都交響楽団スペシャルコンサート
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2022年4月29日(金) 15:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:大野和士
オーボエ:広田智之
 

R,シュトラウス:オーボエ協奏曲 ニ長調

(休憩20分)

マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

 BSN新潟放送開局70周年・新潟日報創刊80周年(創業145年)記念事業としてのコンサートだそうです。記念演奏会にしては東京都交響楽団というのは地味に感じますが、身の丈にあった選択でしょうか。もっとも外国のオケは呼べる状況ではありませんが。

 東京都交響楽団の新潟への来演は、2009年4月の演奏会(指揮:インバル)以来ですので、13年ぶりです。個人的には、2014年3月に、インバルの指揮によるマーラーの9番を聴きに横浜まで行って以来で、8年ぶりです。

 指揮の大野和士さんは、都響の音楽監督のほか、バルセロナ響の音楽監督、新国立劇場の芸術監督を務めるほか、本年の9月からは、ブリュッセル・フィルの音楽監督に就任するそうですので、活躍ぶりは素晴らしいですね。記憶は定かでないのですが、新潟での指揮は今回が初めてのように思います。どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。

 プログラムは、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲とマーラーの交響曲第5番です。マーラー好きの私としましては、マーラーを聴けるのはありがたく思ったのですが、7月の東響新潟定期でノットの指揮で演奏されますし、9月の長岡での東京フィル長岡特別演奏会で、バッティストーニの指揮で演奏されます。偶然なのでしょうが、続くときは続くんですね。
 ということで、マーラーの5番はありがた味がないのですが、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲は聴いたことがありませんので、これを楽しみにしたいと思いました。

 チケットは発売早々に買ったのですが、チケットの設定が理解しがたく、通常のS席エリアがSS席に設定され、A席がS席、B席がA席という感じです。
 どうでも良いといえばどうでも良いのですが、私はSS席というネーミングが嫌いで、1000円安いS席ということで、3階正面2列目に席を確保しました。

 さて、今日からGWが始まりました。せっかくの休日なのですが、天候は悪く、冷たい雨が降る中にりゅーとぴあへと向かいました。
 音楽文化会館で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあに入館してチラシ集めをし、6階のラウンジで遅めの昼食を摂って2階に降りますと、開場が始まっていましたので入場しました。

 配られたプログラムは、A5サイズで小さく、細かい字でびっしりと印刷されていました。老眼の目には嫌がらせにしか思えませんでした。ワンサイズ大きくしても、経費はそんなに変わらないと思うのですけれど。

 今日のプログラムは、前日に東京芸術劇場で開催された定期演奏会の演目と同じで、リヒャルト・シュトラウスとマーラーです。私のようなマーラー好きには興味深いですが、一般の人には馴染みにくいかもしれません。
 そんな要因もあってか、チケットの売れいきが良くないとの噂を聞き、直前までテレビや新聞で宣伝していましたが、結果としては、それなりの集客のようでした。
 しかし、SS席エリアの2階の両サイドは空席が目立っていました、せっかくの記念演奏会なのですから、空いた席は、次代を担う若者に安く提供するなり招待するなりすれば、BSNや日報さんの株が上がるのに、などと夢想しながら開演を待ちました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場しました。オケは小型の10型で、弦5部は10-10-8-6-3、ヴァイオリンが左右に別れる対向配置ですが、ヴィオラが左、チェロとコントラバスが右でした。遠目で確認できませんでしたが、コンマスは矢部さんでしょうか。

 白シャツ白チョッキの広田さんと大野さんが登場して、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲です。広田さんは都響の主席奏者であるほか、独奏者としての活動も活発で、クラシックに留まらず、ポップスやジャズでも活躍されているそうです
 モーツァルトのオーボエ協奏曲と並んで、オーボエ奏者にとっては欠かせないレパートリーだそうですが、実演で聴くのは今回が初めてです。
 全3楽章が切れ目なく演奏され、抒情的なメロディが美しく、オーボエの柔らかなサウンドが心地良く響き、うっとりと聴き入りました。
 曲の良さというより、広田さんの演奏の素晴らしさを賞賛すべきでしょう。のびのびとした音色での安定感ある演奏は、聴いていて心地良く、夢幻の世界へと誘われました。

 休憩後の後半は、マーラーの交響曲第5番です。オケのサイズは大きくなって、フルサイズの16型となりました。弦5部は16-14-12-10-8で、対向配置でない通常の配置です。ステージいっぱいのオケは、視覚的にも圧倒されます。

 大野さんが登場し、トランペットが朗々と響き渡って開演しました。大編成のオケにも関わらず、音の厚みが薄く感じられましたが、私の気のせいでしょうか。
 このホールでの東響サウンドを聴きなれた耳では、打楽器の高音がうるさく感じられ、弦楽も重厚感に欠けた印象でした。オケの個性なのか、大野さんの音作りなのか、アウェイのホールでの演奏のためなのか定かではありませんが、音響的にはイマイチのサウンドに感じました。
 とは言え、演奏は力が入っていたと思います。冒頭のトランペットを始め、聴かせどころの第3楽章のホルンもお見事でした。第4楽章のアダージェットの弦楽の美しさに涙し、第5楽章の勝利の音楽に興奮し、鼓動が高鳴る中にフィナーレを迎えました。
 と書ければ良かったのですが、大野さんが創り出そうとする熱い音楽は熱しきらず、ぬるま湯に終わりました。アダージェットをもっと切なく歌ってくれたら終楽章はもっと映えたのかもしれませんが、燃えきらなかったように思います。
 16型の大編成ですので、ホールいっぱいに響き渡るオーケストラの音の洪水に身を委ねたかったのですが、ほどほどの音響に終わり、フィナーレでの興奮も腹八分目というところでした。
 と、偏屈者の私は難癖つけてしまいましたが、いい演奏には違いはなく、感動に涙し、胸の高鳴りを抑え切れないという域には達しなかったものの、十分な感動はいただきました。

 前半のオーのエ協奏曲は素晴らしく、後半のマーラーもまずまずいい演奏でした。良い音楽を聴いた喜びを胸にホールを出ますと、外は冷たい雨が降り続いていました。
 冷え冷えとして、感動をクールダウンさせるような天候でしたが、久しぶりの生演奏を聴き、音楽の素晴らしさを実感し、気分良く家へと車を進めました。
 


(客席:3階 I 2-9、S席:¥8500)