東京都交響楽団ハーモニーツアー2009→2010 新潟公演
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2009年4月5日(日) 15:00  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮:エリアフ・インバル
ヴァイオリン:矢部達哉
 
 

 
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲 K.492

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61

(休憩20分)

ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 作品55 「英雄」


  
 
 

 昨日は雨模様でしたが、今日は朝から晴天。桜のつぼみも膨らみ、新潟の開花も秒読みとなりました。こんなすがすがしい日曜日の午後ですが、プライベートでは予期せぬ問題が生じてしまい、音楽どころでない状況が続いていました。このコンサートもキャンセル覚悟でしたが、どうにか時間が取れたため、つかの間の気分転換とストレス解消のためにホールへと向かいました。
 隣の陸上競技場ではアルビレックス新潟と浦和レッズのサテライトの試合が行われていて、駐車場はどこも満車。仕方なく少し離れたコインパーキングに駐車せざるを得ず、駆け足で向かう羽目となり、息切れしながらどうにか開演に間に合いました。

 さて、このコンサートはどういう趣旨なのか今ひとつ分かりにくいのですが、東京都歴史文化財団が主催者となり、東京文化発信プロジェクトの一環として、都響としては初の試みである全国ツアーを行うのだそうです。都響が「首都東京の音楽大使」として、ソウル、シンガポールを含め、国内外11ヵ所で公演を行い、その最初の公演地が新潟ということのようです。
 曲目は何となく地方向けという印象で、魅力的とは言えません。せっかくインバルが指揮するのですからマーラーを聴きたいところです。低料金ですから文句も言えませんが。
 私個人としては、都響を聴くのは15年前に東京文化会館での定期演奏会以来になります。また、インバルは2000年11月にフランクフルト放送交響楽団と新潟に来演し、マーラーの5番を聴いて以来となります。インバルは昨年から都響のプリンシパル・コンダクターとなり、活躍を始めていますので、どんな演奏を聴かせるか楽しみでした。
 今回チケットは正面以外の3階席は売り出されませんでしたが、販売されたエリヤはまずまずの入りのようです。通常S席となる3階正面の前方がA席になっていたので、懐さびしい私は迷わずそこを買いました。

 ホールに入ると木管の皆さんがステージに出ていて、音出しをしていました。その後に他の楽員が拍手の中入場して開演となりました。東響のやりかたに慣れている身としては違和感を感じてしまいます。

 インバルが登場して「フィガロの結婚」序曲で演奏が始まりました。慣れ親しんだ東響のサウンドに比べると雑味を感じ、東響を砂糖にたとえるなら、こちらはザラメという印象でした。だからといって音色が悪いということではなく、演奏そのものも良かったと思います。
 続いて矢部が登場してベートーヴェンの協奏曲です。演奏は悪くはないと思うのですが、繊細すぎて力強さは欠けるように感じました。何となく不安定さを感じてしまい、イマイチ乗りきれませんでした。私個人としてはちょっと欲求不満というところでした。

 休憩後の後半は編成が大きくなって「英雄」です。これはいい演奏でした。メリハリがあり、ダイナミックさを感じさせました。各奏者の演奏技術もすばらしく、特にホルンの三重奏がきれいでした。第3楽章、第4楽章は切れ目なく演奏され、フィナーレは盛り上がるかと思いきや、最後はやや抑えた演奏になったのは拍子抜けでした。でも、これまで聴いた「英雄」の中でも最も楽しめた演奏じゃなかったかと思いました。アンコールにレオノーレ3番あたりをやるんじゃないかと期待しましたが、アンコールなしで終演になったのは残念でした。

 東響ばかり聴いていると、他のオケは新鮮に感じます。都響を聴くのは本当に久しぶりでしたが、各奏者の技量のすばらしさは特筆できるように感じました。後で聞いた話では、フルートのトップはあの高木綾子さんがゲストでやっていたんだそうですね。うまいわけです。
 オケ全体としても、矢部がコンマス席に座った後半は、編成が大きくなったせいもありますが、素晴らしいまとまりをみせ、生き生きした迫力あるサウンドを聴かせてくれました。矢部は独奏者よりコンマスとしての才能が素晴らしいように感じました。
 なお、コントラバスには新潟県出身(栃尾)の佐野央子さんがいて頑張っていました。7日には、だいしホールで都響のメンバーの応援を得て、リサイタルが開催されます。是非駆けつけたいところですが、都合が付けられそうもありません。

 以上、前半はくもり、後半は晴れという感じでした。この低料金でこれだけの演奏を聴けるなんてお得だったと思います。
 

(客席 3階 I 3−9、A席:¥3500)