セイジ・オザワ松本フェスティバル オーケストラ コンサート Bプログラム
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2021年9月5日(日)15:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館) 大ホール
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:シャルル・デュトワ
 
ラヴェル:組曲《マ・メール・ロワ》
 I. 眠りの森の美女のパヴァーヌ
 II. 一寸法師
 III. パゴダの女王レドロネット
 IV. 美女と野獣の対話
 V. 妖精の園

ドビュッシー:《海》〜3つの交響的スケッチ〜
 I. 海の夜明けから正午まで
 II. 波の戯れ
 III. 風と海との対話

(休憩20分)

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

ストラヴィンスキー:バレエ組曲《火の鳥》(1919年版)
 I. 序奏
 II. 火の鳥とその踊り
 III. 王女たちのロンド(ホロヴォート)
 IV. カスチェイ王の魔の踊り
 V. 子守歌
 VI. 終曲

 1992年に小澤征爾により創立され、毎年夏に松本市で開催されてきた音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」は、2015年から「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」と改称されました。
 小澤征爾を総監督として、世界で活躍する音楽家が松本に結集し、オーケストラや室内楽のコンサート、オペラ上演などを行うほか、小澤征爾音楽塾による教育プログラムにより、若手音楽家の育成や、地元の子どもたちに、音楽の素晴らしさを啓蒙してきました。
 私も、「サイトウ・キネン・フェスティバル」時代の2009年と、「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」になってからの2017年に、松本まで遠征してオーケストラコンサートを聴かせていただいたことがありました。

 今年は、8月21日〜9月6日までの予定で開催され、数々のコンサートやイベントが予定されていましたが、新型コロナ感染症の拡大により、オープンイベントや全有料プログラムの中止が決定されました。
 メインとなるオーケストラコンサート(A、B)については、事前に抗原検査キットを配布して、安全策を講じての開催を最後まで模索しましたが、全国的な感染拡大と医療体制の逼迫を鑑みて、8月24日に中止が発表されました。
 しかし、小澤総監督とサイトウ・キネン・オーケストラのために集まったメンバーは、演奏を全て中止するのではなく、音を出して記録に残し、ひとりでも多くの人に聴いてもらいたいとのことで、無観客での演奏を収録し、配信することになりました。
 
 8月31日から3日間に渡り、シャルル・デュトワの指揮で綿密なリハーサルが行われ、9月3日15時から、95人のメンバーが通常通りに正装して、コンサートの収録に臨みました。演奏は通常のコンサート通りに休憩を挟んで演奏され、16時56分に終演しました。小澤総監督も連日リハーサルに駆けつけ、収録にも客席で立ち会ったそうです。
 
 収録された演奏は、本来の公演予定日時の、9月3日(金)19時からと、9月5日(日)15時からの2回のみ、YouTubeで無料配信されることになりました。
 3日は平日で所用があって視聴できませんでしたので、日曜日の5日15時からの配信を視聴させていただくことにしました。

 配信開始15分前にサイトに接続しますと、オケの出演者全員が一人ずつ順にメッセージを話してくれました。団員の意気込みが伝わってくるとともに、身近に感じられて良かったです。

 開演時間となり、無人のステージが映し出されました。無音の中に団員が入場。全員揃うまで起立していました。最後にデュトワが登場して、その後にチューニングとなりました。
 コンマスはロングヘアの女性(田中さん?)でしたが、マスクをされていて誰か確認できませんでした。コンマス以外はマスクなしがほとんどでしたが・・。 

 1曲目は、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」です。指揮台や譜面台はなく、指揮棒なしで暗譜での指揮です。美しい管楽器のソロ、透き通るような弦楽アンサンブル。5曲からなる組曲を、各曲の対比も鮮やかに色彩感豊かに演奏し、澄みきった美しい響きにうっとりと聴き入りました。

 2曲目はドビュッシーの「海」です。ステージ転換されて編成が大きくなり、ステージいっぱいになりました。大編成のオケは壮観です。
 今度はチューニングの後にデュトワが登場。コンマスは代わって、マスクをしていて確認できませんでしたが、矢部さんでしょうか。先ほどのコンミスは2列目に下がりました。1曲目同様に、指揮台、譜面台はなく、暗譜で指揮棒なしでの演奏です。
 夜明けの海から始まって、刻々と表情を変え、大きなうねりとなる海の様子が眼前に広がり、ドビュッシーが描く色彩感豊かな世界が見事に表現され、音の洪水に身を委ねました。

 休憩時間となり、デュトワへのインタビューが流され、小澤さんやSKO、曲目への思いが語られました。小澤さんも元気な姿を見せてくれて感激しました。その後松本のプロモーションビデオが流され、しばらくして休憩を終えました。

 休憩後の後半最初は、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」です。コンマスはまた代わりましたが、豊嶋さんでしょうか。後半も前半同様に指揮台なし、指揮棒なしです。
 管楽器のソロはこの上なく美しく、透き通るような弦のアンサンブル、コンマスのソロにもうっとりとしました。ゆったりと時間は流れ、深遠なドビュッシーの世界に酔いしれました。極上の音楽に心が洗われるようでした。

 最後はストラヴィンスキーの「火の鳥(1919年版)」です。地を這う低弦の序奏から一気に引き込まれました。管楽器のソロが光る「王女たちのロンド」にうっとりし、「カスチェイ王の魔の踊り」で気持ちを高ぶらせ、「子守唄」でひと休みして「終曲」へ。弦のトレモロの静けさの中から光が差し込み、暗い世の中を明るく照らし、高らかに勝利のファンファーレを奏でました。
 今の世界にぴったりな選曲であり、コロナ禍にあげぐ暗く沈んだ世界に、ひと筋の光明を与えてくれるような力強い演奏に、勇気と元気をいただきました。

 無観客ではありましたが、ホールにはブラボーの声がこだましているかのようでした。最後に全員が手を振って、感動の演奏会は終演となりました。

 さすがに名手が世界から集まったSKO。デュトワとともに素晴らしい演奏を聴かせてくれました。来年こそ開催できることを祈念して、サイトを後にしました。

  

(客席:PC前、無料)