Noism0+Noism1+Noism2 「春の祭典」
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2021年7月2日(金)19:00 新潟市民芸術文化会館 劇場
Noism Company Niigata
 
「夏の名残のバラ」
 演出振付:金森穣
 音楽:F.V.フロトー《Martha》より《Last Rose of Summer》
 衣裳:堂本教子
 出演:
井関佐和子、山田勇気

映像舞踊「BOLERO 2020」
 演出振付:金森穣
 編集:遠藤龍

「FratresV」
 演出振付:金森穣
 音楽:A.ペルト《Fratres》
 衣裳:堂本教子
 出演:
金森穣、ジョフォア・ポプラヴスキー、井本星那、林田海里、チャーリー・リャン、
      カイ・トミオカ、鳥羽絢美、スティーヴン・クィルダン、西澤真耶、三好綾音、中尾洸太


(休憩20分)

「春の祭典」
 演出振付:金森穣
 音楽:I.ストラヴィンスキー《春の祭典》
 衣裳:RATTA RATTARR
 出演:
井関佐和子、山田勇気、ジョフォア・ポプラヴスキー、井本星那、林田海里、
      チャーリー・リャン、カイ・トミオカ、鳥羽絢美、スティーヴン・クィルダン、西澤真耶、
      三好綾音、中尾洸太、杉野可林、池田穂乃香、カナール・ミラン・ハジメ、坪田 光、
      中村友美、青木愛実、兼述育見、小林亜優、土屋景衣子、渡部梨乃

 この公演は、本来なら昨年6月に公演されるはずでしたが、新型コロナ感染拡大のため中止されました。しかし、練習の成果の発表として、本公演で行うような演出を伴わない形でのプレビュー公演が、昨年8月に開催され、私も観させていただきました。
 プレビュー公演といいながらも、完成度の高い舞踊に感嘆し、スタンディングオベーションとなったことも記憶に新しいです。

 あれから1年を迎えようとし、いよいよ満を持しての本公演が開催されることになりました。この間に、「夏の名残のバラ」を演じた井関佐和子さんが芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したり、金森穣さんが紫綬褒章を受章したりなどがあって、Noismの評価はますます高くなり、この本公演への期待は高まるばかりでした。

 私がNoismの公演を観るのは、4月に開催された研修生カンパニーのNoism2の定期公演以来ですが、プロフェッショナルカンパニーのNoim0、Noism1としては、昨年のプレビュー公演を除けば、2019年12月の「森優貴/金森穣 Double Bill」以来になります。
 ほかに、本年1月22日から2月11日にかけて、スタジオBで「Duplex」という公演があり、3月にも「Noism1メンバー振付公演」がありましたが、チケット完売で観に行けませんでした。さらに、昨年12月の「りゅーとぴあ オルガン・クリスマスコンサート2020」に出演したのですが、このときはチケットを買っていたものの、仕事の都合がつかずに行けませんでした。
 ということで、Noism2を除けば、久しぶりのNoismの公演となりました。今日は、東海・関東を中心に大雨が降ったりしましたが、新潟は梅雨の中休みが続いて、青空が広がり、気温も上がって真夏を思わせる陽気となりました。仕事を早めに切り上げて、大急ぎでりゅーとぴあへと向かいました。

 開演10分前に入場。通常通りにチケットは発売され、ホールはたくさんの観客で埋まり、2階席後方に若干の空席があるのみです。今日が初日ということで、正式な初演に立ち会うことになります。

 最初は、2019年12月の公演で初演され、井関佐和子さんが芸術選奨文部科学大臣賞を受賞することになった記念べき作品の「夏の名残のバラ」です。
 場内が暗転し、「夏の名残のバラ」の歌に載せて、スクリーンに化粧をしてステージに向かう井関さんが投影されました。化粧が終わり、ウォーミングアップし、ステージ衣裳の赤いドレスを着て、ステージへの階段を上がりました。そして、ステージに踏み出すと共に、現実のステージへとシームレスにつながりました。
 ステージにはバラの花びら(?)が敷き詰められていて、井関さんの踊る姿を山田さんがカメラで撮影し、その映像がスクリーンに映し出されました。リアルに行われている舞踊とスクリーンの映像とが一体となり、虚実入り混じる幻想的な世界に引き込まれました。
 井関さんの Noismとの歩みと年輪の積み重ね、ステージに立つ思いが込められており、観る者の胸に熱く迫りました。最後に無人の客席が映し出され、今までの映像は夢だったのか、現実だったのか、混沌とした思いの中に、余韻を残して幕が下りました。この作品を観るのは2度目となりますが、その完成度の高さを再認識し、感動を抑え切れませんでした。

 間を置かず、スクリーンに、昨年映像で有料配信された「BOLEO 2020」が上映されました。アナログレコードに針が下ろされ、ボレロのメロディに載せて、一人ずつダンスをし、その様子が次々と画面に加わっていくという演出でした。最後は全員での群舞で感動をもたらしました。
 編集の素晴らしさもあって、見事な映像作品に仕上がっており、コロナ禍での自粛生活の中での各メンバーの舞踊への熱き思いが伝わってきました。

 ボレロの映像が終わり、スクリーンが上がりますと、ステージにはスポットライトが当てられた金森さんが一人スタンバイしていて、そのまま「FratresV」へとつながりました。
 「Fratres V」は、2019年7月に演じられた「Fratres I」、2019年12月に演じられた「Fratres U」に続く3部作の最終作となります。
 アルヴォ・ペルトの「Fratres」に載せて、Tは群舞で、Uは金森さんの単独の舞踊で演じられましたが、Vはその融合形であり、金森さんの単独での舞踊の後、10人のダンサーが加わっての群舞となりました。金森さん以外に白砂(米?)が降り注ぎ、最後は金森さんを取り囲んで、金森さんに白砂が降り注いで終わりました。
 プレビュー公演と演出上の違いはあまりないように感じましたが、どうでしょうか。ソロと群舞、個と集団、さらには個人と社会、この演目に込められた金森さんの思いは深いものと思いますが、3部作の最後を飾るに相応しい作品だと思います。

 休憩後の後半はメインとなる「春の祭典」です。ステージ前方に21脚の椅子が横一列に並べられ。無音の中に井関さんを先頭に、左右から一人ずつダンサーが登場して椅子に座りました。座る場所を変えたりしながら、21人のダンサーが全員が揃ったところで「春の祭典」の音楽が流れました。
 ダンサーがそれぞれの楽器を担当し、音楽に狂いなくシンクロしました。激しいリズムに合わせて、椅子のフォーメーションを変えながらの群舞に酔いしれました。
 この前半の演出はプレビュー公演と同様でしたが、その後は照明や舞台装置を駆使しての演出となり、完成形としての「春の祭典」を堪能しました。
 これはもう言うことなし。金森版の21世紀の「春の祭典」です。鍛えられた舞踊家たちによる群舞に圧倒され、興奮のフィナーレを迎えました。
 音楽が終わって、出演者が順に去り、無音の中に幕が下りて終演となりました。大きな拍手が贈られ、幕が上がりますと、出演者が横一列に並んでおり、カーテンコールとなりました。幾度となくカーテンコールが繰り返され、スタンディングオベーションの中に感動のステージは終了しました。

 初日に立ち会えた喜びと新潟にNoismがある幸せを胸に、大きな感動と共にりゅーとぴあを後にしました。3日、4日と公演が続き、その後は埼玉、札幌でも公演されます。どの公演も素晴らしいパフォーマンスで楽しませてくれるとでしょう。

 

(客席:2階17-24、¥5000)