京都市交響楽団大656回定期演奏会は、緊急事態宣言の延長に伴い、無観客公演とすることになり、チケットは払い戻しされました。公演の模様は無料ライブ配信されることになり、せっかくの機会ですので、私も視聴させていただくことにしました。
今回の指揮は鈴木優人さんです。鈴木さんはテレビやラジオ出演も多く、その活躍ぶりは目覚しいものがあります。昨日も「題名のない音楽会」に出演されていました。
ご存知のように鈴木さんは、父がチェンバロ・オルガン奏者の鈴木雅明さん、叔父がチェロ奏者・指揮者の鈴木秀美さんという音楽一家に育ちました。指揮者、作曲家、チェンバロ・オルガン奏者として活躍され、古楽・バロック音楽のスペシャリストですが、様々なオーケストラでバロックから現代音楽まで、幅広い曲を指揮しています。
鈴木さんは昨年3月の東京交響楽団新潟定期演奏会でバッハの「マタイ受難曲」を指揮するはずだったのですが、新型コロナ感染にともなって中止され、演奏を聴けず残念に思っていました。(ちなみにお父様の鈴木雅明さんは昨年12月の東京交響楽団新潟特別演奏会に出演されています。)
昨年聴けなかった鈴木さんの演奏を、ネット配信ではありますが、この機会に聴かせていただこうと思います。前半は得意とするバロック物、後半はベト7ということで、配信を楽しみに待ちました。
開演は14時30分ですが、13時50分にニコニコ生放送のサイトに接続しますと、京都コンサートホールのステージが映し出されており、ステージ中央に置かれたチェンバロの調律が行われていました。
いつも思うのですが、このホールはどうしてあのようなデザインなんでしょうね。オルガンをわざわざ右に寄せた意味はなんでしょうか。まあ、どうでも良いのですけれど。
チェンバロの調律が終わり、14時に鈴木さんが京響のポロシャツを着てステージに登場し、プレトークが始まりました。サイトへの書き込みも見ながらのトークでライブ感バッチリでした。
前半はバロック音楽の弾き振りということですが、曲目の解説がありました。ヘンデル、ラモー、ヴィヴァルディですが、2曲目のラモーは、読響のために鈴木さんが編曲した6曲の組曲だそうです。さすがにテレビ出演も多い鈴木さんであり、トークはわかりやすいですね。楽しく聞かせていただきました。
鈴木さんがステージから去り、ステージ上では打楽器やコントラバス奏者が音出しし、その後クラリネットも音出ししておられました。無観客ではありますが、通常の開演アナウンスが流れていたのが面白かったです。奏者が準備する様子もアップで写し出され、カメラワークも抜群で飽きさせませんでした。
ステージから団員が去って、しばらくの静寂の後、開演のチャイムが鳴り、再び開演のアナウンスが流れました。まあ、目に見えない客がいるという前提でなんでしょうね。
開演時間となり、団員が入場。バロックということで小編成で、弦は私の目視で8-6-4-3-2の8型。コンマスと鈴木さんが登場してチューニングとなりました。さすがに鈴木さんはポロシャツじゃなかったです。コンマスは何と石田泰尚さん!黒マスクが異彩を放ち、組長のオーラを放っていました。
1曲目はヘンデルです。鈴木さんの弾き振りで、ゆったりと優雅な音楽が流れ、古き時代の世界へと誘われました。歯切れの良い弦楽とチェンバロにのせてのオーボエ2本の演奏が心地良かったです。前半のプログラムへの導きにぴったりだったと思います。
鈴木さんが退場して編成が変えられ、2曲目はヴァイオリンが減って6型となり、6-5-4-3-2。管楽器が増強されてラモーです。明るく楽しい音楽で、腰に付けて演奏する太鼓がいい味付けをしていました。管楽器も良く、特にピッコロの二重奏が楽しかったです。
団員が退場してステージ転換され、チェンバロが斜めに配置され、その右横にチェロの演奏台が設置されました。弦楽とチェンバロだけとなり、編成は減らされて、4-4-3-2-1です。コンマスの石田さんはマスクなしです。
青いドレスの上村さんが登場。エンドピンがないバロックチェロで、大きく開いた股に挟んで、楽譜を見ながらの演奏でした。さすがにバロックを得意とする上村さんだけあり、軽快で弾むような演奏が心地良かったです。
団員から拍手が贈られてアンコール。チューニングの後、鈴木さんのチェンバロとともに、ボッケリーニのチェロソナタ第6番イ長調より“アレグロ”が演奏されました。超絶技巧を駆使した演奏であり、お見事でした。初めて聴いたチェリストですが、なかなかですね。
休憩時間となり、ステージは大転換されました。その途中に鈴木さんが登場し、タブレット端末に表示されたコメントを見ながらトークが始まりました。素晴らしい演奏を聴かせてくれた上村さんがチェロを持って登場。バロックチェロの説明をしてくれました。ガット弦や弓の違いなどの説明が面白かったです。演奏中の真剣な顔と違って、リラックスした上村さんがチャーミングで魅力的でした。
開演のチャイムが鳴り、後半はベートーヴェンの交響曲第7番です。オケの編成は大きくなり、12-12-10-8-6の12型となり、ヴァイオリンが左右に分かれ、コントラバスとチェロが左、ヴィオラが右の対向配置になりました。オケのひな壇は高く設置され、すり鉢状になっていました。石田組長が最後に登場してチューニング。鈴木さんが登場して演奏開始です。
第1楽章は比較的ゆったりと進み、第2楽章は重くなりすぎず、第3楽章から次第に熱を帯び、第4楽章はスピードアップして興奮のフナーレへと突き進みました。
組長が率いる弦は一糸乱れず気分爽快なアンサンブルで、熱気にあふれていました。管楽器もお見事であり、ティンパニーの切れの良さも光っていました。日頃東響ばかり聴いていますが、京響の素晴らしさを再認識しました。
演奏が終わり、無観客の中でのカーテンコール。各パートを起立させ、最後は全員で手を振って終演となりました。終演後の団員の話し声も聴こえて、団員の皆さんを身近に感じられました。
前半はバロックの弾き振りで穏やかな時間を過ごしましたが、後半は一転して興奮に包まれた演奏で楽しませてくれました。無観客という緊急事態の中で興奮の演奏を聴かせてくれた鈴木さんと京響の皆さんにブラボーを贈りたいと思います。
画質も音質も素晴らしく、ホールにいるかのような臨場感を感じました。私はリアルタイムで視聴しましたが、来週まで見逃し配信も行われます。無料で聴かせていただいて感謝申し上げます。
(客席:PC前、無料) |