ジョイント・コンサート in おんぶん
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2021年2月20日(土) 14:00 新潟市音楽文化会館
ファゴット:小武内茜、ピアノ:加藤桜子
サクソフォン:田村亮太、ピアノ:小林浩子
 

小武内 茜(ファゴット) 加藤桜子(ピアノ)

 フランセ:2つの小品
 サン=サーンス:「動物の 謝肉祭」より 第13曲 “白鳥”
 シューマン:歌曲集「ミルテの花」より “献呈”
 ビッチ:コンチェルティーノ


田村亮太(サクソフォン) 小林浩子(ピアノ)

 チック・コリア:スペイン
 ピアソラ:アディオス・ノニーノ
 モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス
 ドゥメルスマン:独奏曲 第2番「カヴァティーネ」
 ドゥメルスマン:創作主題による幻想曲
  

 りゅーとぴあでは、日頃ホールに来れない子供たちに生の音楽を届け、音楽の楽しさを体験してもらうアウトリーチ活動を行っています。
 オーディションで選ばれ、専門の研修を受けた新潟の音楽家が、新潟市内の小学校を訪問し、練られたプログラムとともに音楽を届けています。2019年度は、主に4年生を対象として、26の小学校で28公演開催されています。

 このジョイント・コンサートは、りゅ−とぴあアウトリーチ事業第4期登録アーティストによる1年間のアウトリーチ活動の集大成の演奏会です。
 本来なら2020年3月7日に、新潟市秋葉区文化会館で、「ジョイント・コンサート in 秋葉区」として、チェロの西谷牧人さんらをゲストに迎えて開催されるはずでした。私は早々にチケットを買って楽しみにしていたのですが、新型コロナ禍により6月3日(水)14時からに延期されました。何と平日の昼。これでは聴きに行けず残念に思っていたのですが、結局この延期公演も中止になってしまいました。
 その後どうなるのか心配していたのですが、今回新潟市音楽文化会館に会場を移して、ゲストなしで開催されることになりましたので、聴かせていただくことにしました。

 今回の第4期登録アーティストは、ファゴットの小武内茜さんとサクソフォンの田村亮太さんです。お二人は新潟の音楽界のこれからを担う期待の若手演奏家であり、新潟の子供たちに素晴らしい演奏を聴かせてくれたものと思います。

 私が小武内さんの演奏を初めて聴いたのは、音大を卒業された直後の2013年3月で、このときも今日の共演者の加藤桜子さんとの共演でした。以来、新潟ARS NOVA での演奏をはじめ、様々な場面で演奏を聴かせていただいており、若手という枠組みを外しても、新潟を代表するファゴット奏者であることは間違いありません。

 また、田村さんは音大を出られた後、上越教育大学大学院で研鑚を積まれ、奏者としての活発な演奏活動のほか、教育者として、吹奏楽指導者としての活躍もされています。今回共演する小林さんとは、活発なライブ活動をされており、今回も息の合った演奏が期待されました。

 そして、今回共演するピアニストは、加藤桜子さん、小林浩子です。お二人とも新潟出身で、新潟での演奏活動も活発にされていますので、この記事をお読みの音楽好きの方なら、ご存知のことと思います。
 加藤さん、小林さんの演奏は、ジョイントコンサートリサイタルなど、さまざまな場面で何度も聴かせていただいています。
 このお二人は新潟の若手を代表するピアニストであり、独奏者としてのほか、伴奏ピアニストとしても実力を発揮されており、小武内さん、田村さんの演奏を引き立ててくれるものと期待されました。


 今週は寒波が襲来し、再び雪となりましたが、週末は天候が落ち着き、気温も上がって過ごしやすくなりました。今日は強風が吹き、これが春一番だったそうです。

 今日は休みでしたので、ゆっくりと昼食を摂り、新潟市音楽文化会館へと向かいました。りゅーとびあに立ち寄りますと、某幼稚園の発表会が劇場で開催されていて、親子連れで賑わっていました。

 東側ロビーでこの原稿を書きながら時間調整して音楽文化会館に行き、開場とともに入場し、この原稿の続きを書きながら開演を待ちました。客席は1席おきに発売され、ゆったりと聴くことができて良かったです。ステージ中央にスタインウェイが置かれていましたが、蓋は閉められていました。

 開演時間となり、水色と銀色のドレスの小武内さんと黒のドレスの加藤さんが登場し、フランセの「2つの小品」で開演しました。1曲目をゆったりと歌わせ、2曲目は軽快に弾むように舞踊り、ファゴットの多彩な音色で楽しませてくれました。
 ここで小武内さんの挨拶があり、サン=サーンスの「白鳥」とシューマンの「献呈」が続けて演奏されました。原曲の良さが伝わり、ゆったりと美しい演奏に聴き入りました。
 一旦ステージから下がり、最後はビッチの「コンチェルティーノ」です。ちょっと暗さも感じる曲ですが、超絶技巧を駆使した演奏は聴き応えあるものでした。この難解さを感じさせる曲を、アウトリーチでは小学校4年生が聴いているわけであり、飽きずに聴かせる工夫は大変だったことでしょう。もっと聴きたかったのですが、アンコールもなく終演となってしまいました。

 
 ピアノの蓋が開けられ、鍵盤の清掃・消毒がなされた後、黒い衣裳の田村さんと濃紺のドレスの小林さんが登場し、先日亡くなったチック・コリアの「スペイン」をジャジーに、ノリノリに演奏してホールの空気を入換えて開演しました。
 ここで田村さんの挨拶があり、ピアソラの「アディオス・ノニーノ」とモリコーネの「ニュー・シネマ・パラダイス」を2曲続けて演奏しました。ともにメロディラインが美しい名曲ですが、柔らかなアルトサックスの響きが胸に染み入りました。
 特記すべきは小林さんのピアノ。サックスと同等以上にピアノが活躍する編曲であり、小林さんの素晴らしさを再認識させられました。大人の女性の妖艶さも感じさせ、さらに魅力あるピアニストに成長されている姿に感動しました。
 一旦ステージから下がり、ステージに椅子が用意され、バリトンサックスに楽器を替えて、ドゥメルマンの「独奏曲第2番」です。低音の魅力をたっぷりと味わわせていただきました。
 再びステージから下がって椅子が片付けられ、再びアルトサックスに替え、最後はドゥメルマンの「創作主題による幻想曲」です。速いパッセージで圧倒し、中間部はゆったりと歌わせ、そして歌い踊り、爽やかに小走りし、気分を明るくさせてくれました。サクソフォンの魅力を知らしめてくれるような、最後を飾るにふさわしい演奏だったと思います。

 カーテンコールで4人が出てきて拍手を受けて終演となりましたが、休憩なしで1時間ちょっとと、ヴォリューム的にはもう少し欲しかったように思います。途中休憩を入れて2時間のコンサートにして欲しかったというのが正直な感想です。

 でも、新潟の音楽界の次代を担う4人の演奏家の魅力があふれるコンサートだったと思います。これからのさらなる活躍を祈り、ホールを後にしました。

 外に出ますと強風が吹き荒れていました。もうすぐ3月。春はすぐそこです。
 

(客席:8-10、¥1000)