小林浩子 ピアノリサイタル
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2019年3月16日(土) 14:00 だいしホール
 
ピアノ:小林浩子
 


シューマン=リスト:献呈 S.566

リスト:巡礼の年報・第2年 「イタリア」 S.161 より
       V.ペトラルカのソネット第104番

リスト:巡礼の年報・第3年 S.163 より
       IV.エステ荘の噴水

ラヴェル:水の戯れ

(休憩20分)

ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番 ヘ短調 Op.27 「熱情」

(アンコール)
ドビュッシー:月の光

 3月も半ばが過ぎ、春もすぐそこです。気分も盛り上がりますが、年度末で仕事も立て込んで、慌ただしい毎日の人も多いのではないでしょうか。

 そんな中、今日は聴く度に感動をいただき、その人柄の良さもあってファンとなり、陰ながら応援させていただいている小林浩子さんのピアノリサイタルです。

 小林さんは若手ピアニストとして活躍が目覚しく、県内外でたくさんの演奏をこなしておられますので、今回が初のリサイタルというのは意外に感じてしまいます。
 私もいろんな機会で演奏を聴かせていただいていますが、これまでは他の奏者との共演であったり、伴奏であったりで、単独のまとまった演奏会は、確かに今回が初めてのようですね。満を持してのリサイタルということでしょうか。

 記念すべき初リサイタルですので、万難を排してでも聴きに行かねばなりませんが、外せない仕事が入ってしまいました。時間的に微妙で、全部は聴けないと思われ、途中退場するのも失礼と考えて行くのは諦めていました。しかし、「万難を排して」という思いは捨てきれず、前半だけでも聴かせていただこうと考えてホールへと向かいました。

 ホールに着きますと既に開場時間を過ぎており、多くの人たちで賑わっていました。途中退場を考えて、いつもの席ではなく、最後方右手の出口に一番近い場所に席を取りました。ステージには華やかな生花が飾られ、初リサイタルを祝っていました。

 開演時間となり、柄入りの薄ピンク色のドレスか麗しい小林さんが登場し、シューマンの「献呈」で開演しました。豊潤なピアノの響きに乗せて奏でられる柔らかな音楽が心地良く、一気に小林ワールドへと引き込まれました。

 続いてはリストの「ペトラルカのソネット」です。ゆったりと、存分に歌わせ、とうとうと流れる大河のような感情のうねり。時おりはっとさせる高音のきらめき。美しい音楽にうっとりと聴き入りました。曲に込められた思いは別にして、全く例えは適当ではありませんが、なぜか松浜橋から見る阿賀野川の雄大な眺めを思い起こしながら聴いていました。

 続いては同じくリストの「エステ荘の噴水」です。「エステ荘」といってもどのような所か想像もできませんが、緑豊かな自然の中にたたずむ別荘、花に囲まれた大理石造りの丸い噴水。爽やかな風が吹き抜け、小鳥がさえずる。噴水が落ちる池の水面にキラキラと太陽が反射している。そんな風景が眼前に広がりました。

 前半最後はラヴェルの「水の戯れ」。うっそうとした森の中に佇む小さな泉。水面に木漏れ日が反射し、キラキラと輝いている。そんな光景を思い浮かべながら聴いていました。このホールが誇るベーゼンドルファーから、これほどきらめきのある音が聴けるのは珍しいのではないでしょうか。

 ここで小林さんの挨拶があって休憩に入りました。当初は前半で退場することも考えましたが、前半がかなり早く終わりましたので、後半も聴かせていただくことにしました。

 後半はベートーヴェンの「熱情」です。赤いドレスに衣装替えした小林さんが登場してはっとさせられました。曲が曲ですので、前半のきらびやかな演奏とは一転して、パワー溢れる演奏です。感情の高ぶり、激しくほとばしる情熱を感じさせ、燃え上がる感動を誘いました。

 アンコールはドビュッシーの「月の光」。上品なデザートをいただいた感じで、「熱情」の後のクールダウンには最適でした。

 終演は予想より早く、結局最後まで聴くことができました。次に待っていた仕事には余裕をもって間に合いました。私のために早く終わってくれたのかなあ。まあ、そんなことはないですが、全部聴けて良かったです。

 誠実な人柄をうかがわせる真摯な演奏の奥に秘められた燃え上がる情熱に胸を熱くし、初リサイタルの成功を見届け、爽やかな気分で仕事へと急ぎました。今後の益々のご活躍を祈念したいと思います。

 

(客席:M-15、\2000)