だいしホールからゆっくりと東堀を歩いて、りゅーとぴあに到着しました。既に開場されており、私も早めに入場し、この文章を書き始めました。客の入りはいつもより多いようで、何よりと思います。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待つ新潟方式です。コンマスのニキティンさんが登場して一段と大きな拍手が贈られました。今日の次席は廣岡さんです。オケは14型。ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、チェロとコントラバスが左、ヴィオラが右でした。
アルバースさんとノットさんが登場して、前半はブラームスのピアノ協奏曲第2番です。この曲は、これまで東響新潟定期で2回演奏されています。2003年7月の第21回新潟定期ではスダーンとオピッツ、2013年11月の第81回新潟定期では大友直人とクン=ウー・パイクで演奏されていて、今回は5年ぶり3回目ということになります。
ピアノのアルパースさんはドイツ出身で、世界的に活躍されているそうですが、今回が日本デビューのようです。当然私は初めて聞く名前でした。
冒頭のホルンンのソロがばっちりと決まって、今日の名演が確信されました。4楽章からなる壮大な曲ですが、各楽章とも聴き応え十分した。
ピアノもさることながら、オケの響きに感嘆しました。重心の低いピラミッドサウンドは重厚感があり、この曲にピッタリに感じました。これまで100回以上このホールで東響を聴いているわけですが、これまでにない音響で、新鮮な感動を覚えました。
オケとピアノはせめぎ合うことなく調和し、まさに「ピアノ付き交響曲」を体現していました。第3楽章の伊藤文嗣さんによる長大なチェロのソロは美しく、うっとりと聴き入りました。
アルバースさんは大柄な風貌とは裏腹に、自己主張しすぎることなく、それでいて存在感を失うこともなく、繊細さを持ちながら軽やかに情熱をほとばしらせて、感動のフィナーレへと突き進みました。
ソリストアンコールはブラームスつながりではありますが、興奮を鎮めるような爽やかな曲。デザートに最適でした。この辺の選曲も良いですね。
音楽監督のノットさんに鍛え上げられた東響の素晴らしさ。この前半のプログラムだけでも聴きごたえ十分で、大満足でした。
休憩後の後半はラフマニノフの交響曲第2番です。オケの編成は大きくなり、16型となり、ヴァイオリンだけでも30人にもなり、ヴィオラ12人、チェロ10人、コントラバス8人と東響の弦は総動員で、エキストラも参加しているものと思います。ステージいっぱいのオケは壮観です。
ノットさんはオケを思うがままに操り、ゆったりと歌わせて、夢幻の世界へと誘いました。絢爛豪華、色彩感のあるオーケストラサウンドは極上の響きを醸し出し、オーケストラの醍醐味を否応なしに知らしめてくれました。
第3楽章は絶品。チラシのキャッチコピーの「落涙の旋律」そのままです。感動に涙した人も多かったのではないでしょうか。
弦は対向配置が絶妙の効果を生み、管楽器のソロもお見事。これほどまでに引き締まった演奏はめったになく、音楽監督・ノットと東響との蜜月関係が感じられます。
隅々まで注意が払われ、一音一音が美しく響く丁寧な音楽作り。鍛え上げられた絶妙のアンサンブル。かつて前音楽監督のスダーンと名演奏を聴かせてくれた東響は、ノットさんの下で、さらに高い極みへと踏み出しています。
心の奥底に溜め込まれた燃え上がるエネルギーが爆発し、興奮と感動のフィナーレを迎えました。甘い旋律が魅力のこの曲ですが、決してムード音楽になることなく、交響曲としての魅力を知らしめてくれました。
リピートをカットすることなく演奏され、おのずと演奏時間は長くなり、終演は19時半を過ぎていました。前半、後半ともに超重量級のプログラムであり、内容も演奏も文句のない演奏会でした。今シーズンのベストコンサート候補には当然入れるべき演奏だったと思います。
良い音楽を聴けたことを感謝し、大きな感動を胸に家路に着きました。
(客席:2階C*-*、S席:定期会員) |