直前まで開催案内もなく、チケット発売が2月末、出演者にフライヤーが届いたのもごく最近という聖籠町文化会館主催のこのコンサート。地元住民向けなんでしょうが、もうちょっと広報活動したほうが良さそうに思います。
実は昨年もこのホールで「春のジョイント・コンサート」が開催され、物好きな私は行ってみたのですが、客席が寂しかった記憶があります。
今回の出演はお馴染みの金子さんと加藤さんですので、内容の良さは想像できますし、ピアノ伴奏も平林さん、斉藤さんという強力な布陣です。斉藤さんは伴奏ピアノのスペシャリストですので、今さら申し上げることもないですが、平林さんも注目されます。昨年2月に演奏を聴く機会があり、感激したことが思い起こされます。
ということで、他にも興味ある公演もあったのですが、天気も良いことですし、客の入りに貢献せねばという使命感もあって聖籠遠征することにしました。
ゆっくりとと昼食を摂り、新新バイパスを快適に走り、それほど時間もかからずに聖籠町の町民会館に到着しました。ここは文化会館のほか、体育館や公民館などがいっしょになった複合施設で、各施設が大きなプロムナードで結ばれています。
当日券を買って、開場とともに入場しました。客席収納式の大きな直方体の多目的ホールですが、立派な音響反射板を備えています。ステージ中央にはベーゼンドルファー・インペリアルが鎮座して、開演を待っていました。客の入りとしましては、予想通りといいますか、それなりにというところでしょうか。私は前方に席を取りました。
けたたましいブザー音の後開演しました。前半はフルートの金子さんとピアノの平林さんです。金子さんは満開の桜を思わせるピンクのドレス、平林さんは上が黄土色、下が黒のシックな感じです。
今の季節にちなんでか「春よ、来い」で演奏が始まりました。柔らかなフルートの音が、春風のように爽やかでした。続いて定番の「メヌエット」で、フルートの魅力を知らしめてくれました。
ここで譜めくりしていた榎本さんの話と金子さんへのインタビューがあり、以後曲目紹介を交えながら演奏が進められました。
「シチリアーノ」を情感豊かに奏で、ピッコロに持ち代えた「白つぐみ」では超絶技巧で唸らせました。「ロンドンデリーの歌」をしっとりと演奏し、最後は現代アメリカの作曲家リーバーマンのソナタで占めました。
単なる名曲コンサートに終わらず、聴き応えあるソナタを加えてくれて、内容十分でした。演奏が難しくて逃げ出したいくらいと話されていた平林さんですが、ピアノも素晴らしい演奏だったと思います。今度はソリストとして是非聴かせていただきたいです。
後半はヴァイオリンの加藤さんとピアノの斉藤さんです。加藤さんは新緑を思わせる黄緑色のドレス、斉藤さんはアズキ色です。
最初はクライスラーの「序奏とアレグロ」で、いきなりの力強く、情熱あふれる渾身の演奏に圧倒されました。最初からパワー全開。さすが加藤さんですね。
後半も榎本さんの軽妙なMCで進行しました。続いてはドビュッシーのヴァイオリンソナタ。クライスラーで圧倒された直後のドビュッシーのソナタで、いきなりメインディッシュが出てきたような本格的内容に、聴く方も精神集中して臨みました。聴き応えある演奏に満足し、加藤さんの実力を再認識しました。もちろん斉藤さんのピアノも素晴らしかったことは言うまでもありません。
デザート代わりの「タイスの瞑想曲」で心を和ませ、歌心たっぷりの演奏に癒されました。最後は定番の「ツィゴイネルワイゼン」。卓越した演奏技術に支えられた情熱あふれる演奏に、聴き飽きた感のあるこの曲の素晴らしさを再認識させられました。
新潟のヴァイオリニストでは加藤さんが一番と、個人的には常々思っているのですが、加藤さんの演奏はますます円熟し、艶が出てきて、魅力を増しているように思います。素晴らしいです。
新潟を代表し、活発な活動をされている4人の演奏を500円で楽しませていただきました。榎本さんのトークも楽しく、地元の方々も楽しまれたものと思います。聖籠はちょっと遠かったですが、遠征した甲斐は十分にありました。
このコンサートの告知はごく最近であり、知らない人が多かったに違いありません。県内各地のコンサート情報には目を光らせている私ですが、このコンサートの存在を知ったのは、ほんの先週のことです。今後は広報活動をしっかりと行い、多くの人に聴いていただけるような配慮が必要だと思います。
(客席:E-15、¥500) |