鈴木秀美指揮 オーケストラ・リベラ・クラシカ 2018 in TOKAMACHI
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2018年3月10日(土) 14:30  越後妻有文化ホール 段十ろう
 
指揮:鈴木秀美
管弦楽:オーケストラ・リベラ・クラシカ
 


ベートーヴェン交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」

(休憩20分)

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」

(アンコール)
曲目不詳

 今日は新潟や長岡で行きたいコンサートがいくつも重なり、悩ましかったのですが、このコンサートに行くことにしました。
 鈴木秀美氏が主宰し、国内外の奏者を集め、オリジナル楽器により古典派の音楽を中心に演奏活動をしているこのオケを聴いてみたかったほか、昨年11月にオープンした十日町の新しいホールを見てみたかったからです。

 早めに家を出て、十日町市内の某温泉でひと休みして、ホールに到着。駐車場にはまだ雪がたくさん残っていました。近代的で斬新な外観が目を引きます。
 開場まで時間がありましたので、歩いて市内を散策。街中の某有名蕎麦屋で十日町蕎麦を美味しくいただき、商店街をぶらついてホールに戻りました。

 ホールは傾斜地に建てられているため、正面入り口から入ったロビー階は2階になっています。中央には1階に降りる大きな階段(だんだんテラス)があり、イベントにも使用できるようになっています。開場時間まで1階のラウンジで休憩し、時間となって2階のホールに入場しました。

 ちなみに、ホールの愛称である「段十ろう」は公募で決められ、「段」は施設に「だんだんテラス」という階段状になった交流スペースがあることに由来し、「十」は十日町の中心となる施設を表現、「ろう」はすでに活用されているまちなかステージの「分じろう・十じろう」から2文字を取り、中心市街地の施設間のつながりを持たせたということだそうです。

 ホール入り口は2階のロビーにあり、2階席へとつながり、1階席へは階段を降りていく構造になっています。1階席より2階席の方が広いというのも面白い構造です。
 ホール内は落ち着いた雰囲気であり、左右の壁に付けられた照明器具が邪魔ですが、ホールの壁と音響反射板が一体化し、非常に美しく感じられます。
 708席の中規模のホールですが、2階席後方でもステージが近く感じられるほど良い大きさです。椅子の座り心地も良く、客席に角度があって視界が遮られず、ステージを見渡せるのも良いです。

 開演時間となり、まずは鈴木さんが登場して、挨拶と解説がありました。「田園」と「運命」の初演の様子などを興味深く聞かせてくれました。(2つの交響曲は同時に初演され、ピアノ協奏曲第4番や合唱幻想曲も同じ日に演奏されたそうですね。)
 話が終わりそうな頃に、団員が静かに入場。話が終わったところで、鈴木さんが一旦退場してチューニングとなりました。
 弦5部は、9-8-5-5-4と小編成で、ヴァイオリンが左右に分かれ、コントラバスとチェロが左、ヴィオラが右の対向配置です。女性陣は色とりどりのドレスで、ステージは華やかです。

 前半は「運命」です。古楽器によるノンヴィブラート奏法で、現代のオケの音色に慣れ親しんでいる私には、最初は違和感を感じましたが、新鮮に感じました。ホールはデッドな響きで、残響が少ない分、楽器の音がダイレクトに聴こえてきました。
 演奏は速めのテンポで、躍動感があり、生き生きとしていました。古楽器ならではの音の不安定さが感じられる場面もありましたが、バロックティンパニの渋い音も良い味を出していました。特に第3楽章からフィナーレへと向かう高揚感はなかなかのものでした。

 後半の「田園」も同様であり、慣れ親しんだこの曲も、新鮮な気分で楽しむことができました。第2楽章はゆったりと歌わせ、その後は早めに飛ばしました。

 アンコールを演奏して終演となりましたが、全体的に早めに演奏し、躍動感、スピード感に溢れ、生き生きした音楽を創り出していました。
 ノンヴィブラートのピリオド奏法は初めはそっけなく感じましたが、小編成のオケと相まって、機動力を発揮していたように思います。軽自動車のオープンカーで高速道路を疾走している感じでしょうか。

 はるばる新潟市から聴きに来た物好きは私くらいかもしれませんが、遠征した甲斐のある良い演奏会でした。聴衆の皆さんも素晴らしかったです。
 3月21日には十日町市と交流のあるクロアチアのア・カペラの男声合唱団のコンサート(クラパコンサート)もあるそうです。この良いホールを有効に利用していただきたいと思いながら家路に着きました。
 

(客席:2階32-11、¥4000)