SanDo concert vol.74 フランスからの音手紙
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2017年2月18日(土)15:00 朝日酒造 エントランスホール
 
フルート:金子由香利、 ピアノ:平林弓奈、 チェロ:片野大輔
 
ピアノソロ
  ドビュッシー:子供の領分 より
           グラドゥス・アド・パルナッスム博士
           小さな羊飼い
           ゴリウォークのケーク・ウォーク

フルート&ピアノ
   ドビュッシー:ベルガマスク組曲 より 月の光
   ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
   シャミナード:コンチェルティーノ 作品107

(休憩15分)

ピアノソロ
   ショパン:バラード第1番 作品23

フルート&ピアノ&チェロ
   サティ:ジムノペディ
   サティ:ジュトゥブ
   ダマーズ:演奏会用ソナタ

(アンコール)
   春の歌メドレー 春よ来い〜早春賦〜春が来た〜花
 

 毎月第三土曜日に、朝日酒造の主催で開催される SanDo(さんど)コンサート。これまでも何度か聴かせていただいておりますが、2014年10月以来ですので、久しぶりになります。
 会場は朝日酒造のエントランスホールです。モダンな本社・工場の玄関ホールが、コンサート会場として使用されます。天井が高い空間で、残響は4〜5秒と長く、豊潤です。定期的な公演が行われている場所としては、県内で最も残響が豊かではないでしょうか。

 今日は、フルートの金子さん、ピアノの平林さん、そしてお馴染みの片野さんの出演です。金子さんは、2年間に渡るりゅーとぴあのアウトリーチ活動の集大成のコンサートを先月開催したばかりですが、私は聴くことができませんでしたので、楽しみにしていました。
 また、平林さんは、長野県松本市の出身ですが、長岡市に嫁がれて3年ということで、新潟での知名度は少ないかもしれませんが、数々の国際コンクールで好成績を収めておられる逸材です。2015年の10月に、この朝日酒造エントランスホールでコンサートを開催されておられます。私の知人のお子さんが以前ピアノの指導を受けていて、このコンサートの案内をいただきましたが、このときは聴きに行けませんでした。
 そして、片野さんは多彩な活動をされており、これまでに何度も聴かせていただいており、その演奏の素晴らしさは言うまでもありません。さらにこういうコンサート企画するプロデューサーとしての実力も特筆すべきでしょう。

 今日のテーマは「フランスからの音手紙」ということで、長らくフランスに留学して研鑽を積まれていた金子さん、平林さんを迎え、フランスがらみの音楽を演奏するという趣向です。(片野さんもフランスに行っておられたそうですね。)

 ホールにはたくさんの客が集まりましたが、多くの人は回数券を持っておられ、固定客が多いことが分かります。片野さんのプロデュースで毎月楽しい企画がされており、人気を博しています。
 私は正面やや右寄りの最前列に席を取り開演を待ちました。ピアノはフルコンサートではない小型のグランドピアノですが、スタインウェイです。

 まず、平林さんのピアノ独奏で開演しました。一礼の後、椅子に座るとともに演奏が始まりました。曲はドビュッシーの「子供の領分」からの3曲です。まず、響きが豊かなホールに響くピアノに感嘆し、響きを計算したピアノタッチの妙から平林さんの凄さがすぐに分かりました。
 2曲目の深遠な、透き通るような響きは心に突き刺さるようでした。ここで片野さんのMCが入り、3曲目の「ゴリウォーク・・」が軽快に、跳ねるように演奏され、躍動感ある音楽に聴きほれました。以後片野さんのMCで演奏が進められました。

 続いては金子さんと平林さんの演奏です。残響豊かなホールに響くフルートは、美しく、深遠であり、サポートするピアノと絡み合い、夢幻の世界を創り出していました。「牧神の・・」でのフルートの出だしはゾクッとすようでした。コンセルヴァトワールの入試の課題曲として作曲されたという「コンチェルティーノ」は金子さんの実力が遺憾なく発揮されていました。

 休憩後は平林さんのピアノで、ショパンの「バラード第1番」。これは平林さんの魅力が全開であり、情熱があふれる中にもノーブルさが垣間見え、只ならぬピアニストであることを知らしめました。演奏技術だけでなく、会場の残響も計算した音の美しさが素晴らしかったです。

 最後はフルート、ピアノ、チェロの三重奏です。編曲も良くできていて、先ほどのバラードの興奮を鎮めて癒しの世界へ誘う「ジムノペディ」。パリの街が思い浮かぶような洒落た「ジュトゥブ」。そして圧巻はダマーズの「演奏会用ソナタ」でした。平林さんはダマーズと会って話しをしたことがあったそうです。曲名にソナタとありますが、組曲となっていて、3人がぶつり合ったり寄り添ったりと、実力者3人ならではの、迫真の演奏を聴かせてくれました。

 アンコールに日本の歌曲のメドレーを演奏して終演となりました。金子さんは新潟市を中心にすでに活動が盛んであり、その実力はご存知の方も多いことでしょう。
 一方平林さんは長岡に来て3年ということで、これから活動を本格化していかれます。3月31日に、長岡リリックホールでリサイタルが開催されます。新潟県には知人もなく、チケット販売も苦労があるとのことで、片野さんに勧められて、終演後に本人自らチケット販売していました。
 平林さんは、12年もフランスで研鑽を積まれ活動しておられた実力者です。このような方が新潟に嫁がれ、新潟県人になられたということはすばらしいことであり、今後の活躍が期待されます。長岡だけでなく、新潟市でも活動の場ができると良いですね。

 最後に、このホールは高い天井にステンドグラスが美しく、非常に落ち着いた空間ですが、元をただせば玄関ホールであり、空調はありません。冬季は冷え込みが厳しく、防寒対策が必要です。平林さんも寒いということで、ショパンの演奏の後厚手のジャケットを着ての演奏となりました。
 でも、そんな寒さを吹き飛ばすような熱い演奏に心躍り、高揚した気分で新潟への帰路に着きました。

 

(客席:1列目やや右、当日券:¥1200)