東京交響楽団 第105回新潟定期演奏会
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2018年1月14日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:飯森範親
ピアノ:アレクサンダー・ガヴリリュク
 


プロコフィエフ:交響曲 第1番 ニ長調 作品25「古典交響曲」

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第1番 変ニ長調 作品10

 (ソリストアンコール)
  ムソルグスキー:展覧会の絵 より キエフの大門

(休憩20分)

ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲「展覧会の絵」

 新年最初の東響新潟定期です。今回の指揮者は飯森さん。昨年3月の第100回定期演奏会で、100回を記念するにふさわしいすばらしい演奏を聴かせてくれたことが記憶に新しいです。この演奏は昨年のマイ・ベスト10に選出させていただきました。毎回熱い演奏をしてくれるのが飯森さんの魅力であり、決してはずれがありません。今回も楽しみです。

 そして、今日の共演は、ガヴリリュクさんです。ガヴリリュクさんといえば、2006年1月の当地でのリサイタルが語り草になっていますが、私は聴くことができず、2007年11月に、長岡市の中之島文化センターまで聴きに行ったことがありました。神業というべき超絶技巧は大変な驚きでしたが、その裏にある音楽性の豊かさにも感嘆しました。あれから10年が経ち、今回はどのような演奏が聴けるか期待が高まりました。

 今日の新潟定期公演のプログラムは、12日のサントリーホールでの第657回定期演奏会、13日の川崎での名曲全集133回に引き続いて、3日連続3回目の演奏になります。通常以上に熟成された演奏が期待されますので楽しみにしましょう。

 さて、今週の新潟は8年ぶりに80cmの積雪という突然の大雪で大混乱。私も通勤に苦労し、行くはずだったワルシャワ国立フィルのコンサートに行けませんでした。昨日も朝から除雪作業で疲労困憊し、ひと休みしたものの、夕方までに再び15cmほど積もってうんざりでした。今日もどうなるのか危惧されましたが、3日連続の除雪に励み、天候も落ち着いて、無事コンサートに出かけることができました。ただし昼過ぎまで除雪に励んでいましたので13時からのロビーコンサートには行けませんでした。

 今日は隣の県民会館では15時から「シルク・ド・ラ・シンフォニー」というオーケストラ演奏に合わせてサーカスを演じるというコンサートが開催されており、先月末に新潟に「第九」で来演したばかりのキエフ国立フィルが演奏しています。開演時刻が微妙で、終演が東響定期の開演と重なってしまいます。普通に14時に開演なら私も観に行ったのですけれど・・。チケット完売だそうで、何よりと思います。でも、2つのオケが同時に来演する新潟も大したものですね。

 我が家は郊外にありますので、道路状況の悪さと駐車場の混雑を予想して早めに出かけました。除雪が十分されていないいつもの近道はやめて、バスが通る幹線道路で向かいました。デコボコの圧雪路に苦労しましたが、順調に到着し、駐車場にも余裕を持って駐車できました。
 ロビーで休憩し、開場とともに入場しました。ステージでは、コントラバス奏者が一人、その後二人になって練習に励んでいました。さらにグロッケンシュピールのお姉さんの練習を聴いているうちに開演時間が迫りました。

 さて、客の入りはいつもの通りでしょうか。県民会館に客を奪われるかと思いましたが、客層が違うんでしょうね。どちらも賑わって何よりです。
 開演時間となり拍手の中に団員が入場。オケの配置はヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、チェロとコントラバスが左、ヴィオラが右です。弦5部は12-10-8-6ー4のいわゆる12型です。

 飯森さんが登場して、最初は古典交響曲です。譜面台はなく、暗譜での指揮で、全身を使ったダイナミックな指揮で、軽快で小気味良く、生き生きした音楽を作り出していました。かといって軽すぎることなく、重心の低い安定感を感じさせました。オケのアンサンブルも素晴らしく、切れのある演奏に高揚感を感じました。

 続いてはガヴリリュクさんを迎えてのピアノ協奏曲です。弦は同様ですが、管楽器が増員され、開演前に練習していたグロッケンシュピールも加わりました。今度は譜面台が出され、楽譜を見ながらの指揮です。
 曲は3楽章からなりますが、続けて演奏されました。この曲は私にとりましては馴染みにくいのですが、ガヴリリュクさんの爆発するような演奏に圧倒され、それと互角に立ち向かう東響の素晴らしさに息を呑んでいるうちに終演となりました。時間的には短い曲でしたが、内容は濃かったです。
 ソリストアンコールは展覧会の絵よりキエフの大門。後半の曲のエンディングを選ぶなんて、何という心遣いでしょう。この選曲には参りました。演奏もすさまじく、2016年12月の、CDにもなったメジューエワさんの演奏を思い起こしました。

 休憩後は展覧会の絵です。オケは増員されて、弦は16型の大編成となりました。ステージいっぱいのオケは壮観です。指揮者用の譜面台はなく、暗譜での指揮です。
 出だしのトランペットがうまく決まって、今日の名演が確信されました。アクセントを大きめにつけて、いかにも飯森さんというような、豪華絢爛、総天然色の聴き映えのする壮大な音楽を作り上げました。聴かせどころのソロもうまくこなして、さすが東響という演奏でした。
 最後はこれぞオーケストラというような圧倒的迫力で、ホールは興奮のるつぼと化しました。芸術性がどうの、精神性がどうのと御託を並べるのは意味のないこと。音の洪水に身をゆだね、音楽の喜び、オーケストラの素晴らしさを有無を言わせず感じさせてくれました。飯森さんにブラボーを贈らねばなりません。

 カーテンコールの最後の飯森さんのスピーチにも泣かせられました。こんな心遣いが飯森さんの魅力です。毎回期待を裏切らない飯森さんの素晴らしさを再認識しました。早くも今年のコンサートベスト10候補に挙げておきたいと思います。
 
 

(客席:2階C*-*、S席:定期会員:¥5660)