イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル
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2016年12月3日(土) 14:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ピアノ:イリーナ・メジューエワ
 

ウェーバー:舞踏への勧誘」 Op.65 J.260

リスト:メフィスト・ワルツ第1番 「村の居酒屋の踊り」 S.514/R.181

ワ−グナー=リスト:イゾルデの愛の死 S.447/R.280

ラヴェル亡き王女のためのパヴァーヌ

ラヴェル:道化師の朝の歌

(休憩20分)

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

(アンコール)
プロコフィエフ:束の間」の幻影 Op.22より 第3番、第14番
スクリャービン:プレリュード op.74-1
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
シューベルト/リスト:連祷
メトネル:おとぎ話 Op.20-1
ショパン:マズルカ Op.6-2
ショパン:ワルツ Op.69-2

 昨夜は某温泉で開催された今シーズン最初の忘年会に参加し、二日酔いでボーっとしながらホールへ向かいました。すでに開場されており、私も入場しました。東響定期会員の特典で与えられた席は1階左側。私の前の席は空席で、見晴らしは良く、得した気分でした。

 ステージ上には見慣れないピアノ。スタインウェイのロゴがやたら大きいのが目立ちます。使用されたピアノは、よくあるハンブルク製のスタインウェイではなく、ニューヨーク製のスタインウェイ。それも1925年製の特別なピアノで、「NEW YORK STEINWEY CD135 'Art-Vintage'」というんだそうです。圧倒的なダイナミックレンジと多彩な音色が魅力とのことで、どんな音色で響くのか楽しみでした。

 メジューエワさんは新潟に何度か来演しており、すっかりとお馴染みです。りゅーとぴあでライブ録音されたCDもあり、感動が甦ります。りゅーとぴあでのリサイタルは2012年9月以来4年ぶりになりますが、4年前はチケットを買っていながら仕事で行けず悔しい思いをしました。その後2013年6月には新潟交響楽団第92回定期演奏会で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲で聴衆を圧倒したのも思い出されます。

 楽譜を抱えてメジューエワさんが登場。いつものように楽譜を見ながらの演奏です。今日の演目は「ピアノだけでなくオーケストラでも親しまれている作品」を集めたプログラムであり、前半はウェーバー、リスト、ラヴェルの多彩な曲です。
 演奏はパワーあふれる中に繊細さを併せ持つもの。細さを感じさせる容姿とは裏腹のパワフルな演奏が魅力です。ピアノの響きも美しく、確かにいつものスタインウェイよりはきらびやかな音色に感じました。フォルテシモでも音の濁りはなく、響きの良いホールと相まって、豊潤な音色で魅了しました。
 1曲ごとにステージから下がり、楽譜を持って登場という繰り返しで、多彩な演目で楽しませてくれました。手に汗握るようなパワフルな演奏も良かったですが、「亡き王女のためのパヴァーヌ」でのうっとりするような繊細な演奏も見事でした。

 前半だけでも十分満足できる内容でしたが、後半の「展覧会の絵」が圧巻でした。色彩感豊かで、総天然色映画を見ているような、豪華絢爛な演奏でした。オーケストラで聴く以上の色彩感を感じさせるのはさすがだと思います。ダイナミックレンジも広く、各曲のメリハリが十分に付けられ、「ビドロ」での重低音の迫力にも圧倒されました。

 当然ながらブラボーが贈られ、それに応えてのアンコールがまた素晴らしいものでした。1-2曲で終わるかと思ったのですが、新しい楽譜を抱えて登場し、延々とアンコールが続いたのは驚きでした。曲目も多彩で、30分にも及びました。サービス精神には脱帽です。

 豪快さで圧倒されましたが、楽譜を見ながらの一音一音に神経が行き届いた演奏で、荒っぽさはありません。特別なスタインウェイから特別な音を引き出していたと思います。メジューエワさんとピアノ、そしてホールが一体化し、一期一会の名演を創り出していました。それを陰で支えた譜メクリストにも拍手を贈りましょう。ずっと出ずっぱりでしたものねえ・・。

 こんな素晴らしいピアニストが日本にいるなんて、素晴らしいですね。またの来演を楽しみにしましょう。ボリュームいっぱいの演奏にお腹いっぱいになって家路に着きました。良かった、良かった。

 

(客席:1階13-8、定期会員招待)