茂木大輔のオーケストラ・コンサート No.4
ベートーヴェン 交響曲第7番、交響曲第8番、戦争交響曲  
初演プログラム再現演奏会
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2008年4月6日(日) 16:00  新潟市芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮・解説:茂木大輔   
管弦楽:人間的楽器学管弦楽団
 

 
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92

ベートーヴェン:3重唱曲「おののけ、不敬な者ども」作品116

      ソプラノ:永崎京子、テノール:鈴木 准、バス:藤井大輔

(休憩15分)

ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93

ベートーヴェン:戦争交響曲「ウェリントンの勝利、またはヴィットリアの戦い」作品91

 
 

 新潟市の桜も開花し、いよいよ春本番です。白山公園の桜も咲き始めて、花見客で賑わいをみせていました。夕方4時の開演で時間がありましたので、信濃川の岸辺を万代橋まで歩いてきました。川面を吹き渡る風は暖かく、雄大な川の流れは心を穏やかにさせてくれます。新潟もいい町だなあと再認識しました。

 今日は茂木大輔のオーケストラコンサート。新潟では4回目になります。これまで「新世界」、「運命」、「英雄」をテーマに、毎回興味深い内容で楽しませてくれました。今回は趣向を変え、1814年2月27日に、ウィーンの宮廷舞踏会劇場でベートーヴェン自身が開催した演奏会を、曲目・曲順ともそのままに再現したものです。この演奏会では交響曲第8番が初演されたほか、2ヶ月前に初演されたばかりの交響曲第7番と戦争交響曲を再演し、3重唱曲「おののけ、不敬な者ども」も初演されています。当時は自分の作品を発表する演奏会を開催する機会はめったになく、自分の作品をあれもこれもと詰め込んで演奏し、観客も疲れてしまうような長いコンサートになるのが常だったのだそうです。今回のプログラムも相当なボリュームですが、これでもベートーヴェンの演奏会としては短い方だったとのことです。それにしても1曲目から交響曲第7番を聴かされたのでは聴衆は疲れてしまいますし、奏者も大変だったろうと思います。今回は、当時の聴衆の気持ちになって演奏会を体験できる貴重なプログラムです。さらに当時の演奏会を観客も協力して再現するというおまけ付きでした。

 さて、ホールはかなりの盛況で、これまでにない客の入りのように思います。当初チケットが発売されないはずだった3階席にも客を入れていました。ステージ上ではばらばらに奏者が入場して音だしをしていました。全員揃ったところで茂木さんが登場して簡単な解説がなされました。当時は楽章間の拍手あり、特に第2楽章の後には盛大な拍手があって、アンコールが行われたとのことで、われわれもその再現に協力することになりました。
 一旦退場した茂木さんが再登場して演奏の開始です。これがすばらしい演奏。軽快でメリハリがあり、心地よいリズムが心躍らせます。第2楽章のテンポも私好み。打ち合わせ通り拍手に応えてアンコール。続く第3楽章、第4楽章ともワクワクするような演奏であり、期待以上の演奏に大満足でした。人気曲だけあって、私も数多くの演奏を耳にしていますが、その中でも屈指の演奏じゃなかったかと思います。ただ、茂木さんの指示通り楽章間に拍手して、感動が途切れ途切れになってしまったのが残念でした。

 続く3重唱曲は単独のCDもないという珍しい曲です。ベートーヴェンがサリエリにイタリアオペラを習っていたときの課題だったとのことですが、なかなかいい曲だと思います。どうして演奏されないのか不思議に感じました。

 休憩の後、交響曲第8番です。これがまた軽快なすばらしい演奏であり、感激しました。7番と9番に挟まれて演奏の機会が少ない曲ですが、小粒ながらもいい曲だと思います。私は2006年11月にヤンソンス指揮コンセルトヘボウ管弦楽団で聴いて以来になりますが、今日の演奏はそれを凌ぐ出来映えじゃなかったかと思いました。曲の魅力を再認識させてくれました。

 そして最後は、戦争交響曲です。曲名は知っていても聴く機会がありません。私は大学時代に音楽の授業で聴いた覚えがあり、手元のLPを捜してみたら、カラヤン/BPOのLPがありましたが、記憶から失せてしまっていました。この手の曲としてはチャイコフスキーの「1812年」があり、似たり寄ったりのようにも感じますが、チャイコフスキーがたまに演奏されるのに比べてベートーヴェンは全く演奏されません。完成度の違いでしょうか。実演で聴くのはもちろん初めてであり、もしかしたら今後聴く機会もないかも知れません。イギリス軍とフランス軍の戦いを音楽で表現したものですが、ベートーヴェン最大の駄作と言われるだけあって、芸術としての内容の深遠さは乏しいかも知れませんが、スペクタクル感のある聴き映えのする曲です。生で聴いてこそ魅力を感じられる曲だと思います。埋もれされておくにはもったいない曲ですが、プロオケの定期演奏会では取り上げられそうにありませんね。でも、またいつか聴いてみたいものです。
 と書きましたが、この4月25日に、東京ニューシティ管弦楽団第55回定期演奏会(指揮:曽我大介)で演奏されることがわかりました。さすがひと味違った演目が特徴のニューシティ管ですね。

 以上のように、盛りだくさんの内容で、演奏もすばらしく飽きさせませんでした。演奏は人間的楽器学管弦楽団という臨時編成のオーケストラでしたが、演奏のすばらしさは常設のオケと何ら遜色はなく、その生き生きした演奏はむしろ上だったかも知れません。オケのメンバーも実力者揃いで、コンサートマスターをN響の永峰高志さんが努めたほか、要所をN響メンバーで固めていました。その中に、ヴァイオリンの磯絵里子さん、フルートの高木綾子さん、オーボエの古部賢一さんなど、どうしてこんな所にいるのか不思議なほどのソリストまで混じっていたのは驚きでした。そして何より、ここまでまとめ上げた茂木さんの実力に感服です。
 
 会場では、間もなく発売になる茂木さんの新作「拍手のルール」が先行発売されていました。私も買って、茂木さんにサインをしてもらいました。演奏に著作に大活躍ですが、茂木さんのコンサートは決して裏切ることがありません。新たな喜び、感動を与えてくれます。次はどんな曲をどんな切り口で聴かせてくれるのか、今から楽しみにしています。

(客席:S席:2階C4−34、¥3600、会員割引)