梯 剛之 小児がんチャリティー ピアノコンサート
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2008年3月23日(日)14:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ピアノ:梯 剛之
 
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第17番 二短調 op.31-2「テンペスト」

(休憩15分)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 op.57「熱情」

(アンコール)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 op.10-3 第3章
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第19番 ト短調 op.49-1 第1楽章
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 op.110 第1楽章

 
 

 3月も下旬となり、いよいよ春本番を迎えようとしています。東京では昨日桜の開花宣言が出されました。新潟も冬の鉛色の空から解放されて、青空が心地よい日々が続いています。生活面ではいろいろありまして、冷静に考えれば音楽どころじゃないのですが、つかのまの現実逃避。今日は梯剛之さんのピアノコンサートに行ってきました。
 梯さんの演奏は2003年9月の東京交響楽団第22回新潟定期演奏会でヘンリク・シェーファーの指揮の下、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番を聴いて以来です。くしくも、同じく目の不自由な辻井伸行さんのコンサートをつい先日(3月5日)聴いたばかりであり、曲目も重なっています。どのような演奏をされるのか大いに興味が湧きました。

 薄曇りではありますが、過ごしやすい日曜日の昼下がり、行事もいろいろあるようで、駐車場は混雑していました。陸上競技場の芝生の緑も美しく、遊歩道を吹き渡る風が爽やかです。白山公園の桜もつぼみがかなり膨らんでおり、開花も近いかも知れません。
 開場時間の1時15分にホールに行くと、開場待ちの行列が長々とできていてビックリしました。最後尾に並んで入場しましたが、全席自由席なので、正面の席はすでに埋まっていてDブロックの席を確保しました。通常のピアノリサイタルでは3階席やステージ回りの席は使用されないことが常なのですが、今日は全席使用されていました。それでも3階のサイド以外は埋まっていて、客の入りは良かったです。小児がんのチャリティコンサートということも関係しているのかも知れません。

 主催者の挨拶の後いよいよ開演です。梯さんが手を引かれて登場。椅子に座り、手の位置を何度も確かめて演奏を開始しました。先日の猛スピードの辻井さんの演奏とは大違いに、大変ゆっくりした演奏であり、重厚なベートーヴェンです。楽章間の休みもゆっくり取り、気持ちを集中させているのが伝わってきます。「月光」「テンペスト」ともに力の入った演奏であり、聴く方も疲労感を感じました。休憩後の「熱情」も、曲名の如く熱の入った演奏でした。力強い音がホールを満たし、心に響いてきます。
 濃厚なベートーヴェン。重々しいベートーヴェン。さらりとした辻井さんのベートーヴェンとは大違いです。鶏ガラ薄味の辻井さんに比して、梯さんは濃厚な豚骨ラーメン。どちらがいいということでもないのですが、今日の私の心理状態では豚骨ラーメンはもたれてしまいます。さすがに「熱情」はほとばしる情熱に押し切られてしまいましたが、全体としては、もう少し力が抜けても良かったかなと感じました。
 大きな拍手に丁寧なお辞儀で応えます。花束が渡され、アンコールはサービス良く3曲。いずれもベートーヴェンのピアノソナタからです。アンコールは力が抜けて聴き良かったと思います。特に最後の作品110は一番いい演奏に聴こえました。

 予定終演時間を20分も超えて終演となりました。ほぼ満員の聴衆でしたが、子供さんも含めて皆さん熱心に聴いておられました。梯さんの真摯な、熱のこもった演奏に感銘を受けておられたようです。ただ、へそ曲がりな私は、疲労感を感じ、もっとクールな演奏が良かったかななどと感じていました。

 ホールを出て、携帯の電源を入れ、現実に戻ります。私には春は来そうにないなあ・・・。
 

(客席:2階D3-24、全席自由 3000円)