フェニックス・コンサート
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2008年3月9日(日)15:00  新潟県民会館大ホール
 
ヴァイオリン:奥村 愛、フルート:小山裕幾、チェロ:横坂 源
テノール:笛田博昭、ソプラノ:鈴木愛美
 
第1部 
Vn:奥村 愛 Pf:青木京子
  ショーソン:詩曲 作品25
  クロール:バンジョーとフィドル
  ポンセ(ハイフェッツ編):エストレリータ
  ヴュータン:ヤンキードゥードゥル風アメリカの思い出

Fl:小山裕幾 Pf:西脇千花
  フォーレ:ファンタジー
  マルタン:バラード
  ジョリベ:ソナタ

(休憩15分)

第2部 
Vc:横坂 源 Pf:林 絵里
  ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ
  カサド:無伴奏チェロ組曲
  サン=サーンス:白鳥
  ポッパー:妖精の踊り

S:鈴木愛美 T:笛田博昭 Pf:谷地重紬子 
合唱:うおぬまLirica、上越市民オペラ、新潟オペラ合唱団   
  ヴェルディ:「アイーダ」より「凱旋の歌」(合唱)
  プッチーニ:「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」(笛田博昭)
  グノー:「ロメオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」(鈴木愛美)
  レオンカヴァッロ:「道化師」より「衣裳を着ろ」(笛田博昭)
  ヴェルディ:「リゴレット」より「あなたを愛します!」(鈴木愛美、笛田博昭、金泉晶子)
         「慕わしき人の名は」(鈴木愛美)
  ヴェルディ:「ナブッコ」より「行け我が想い、金色の翼にのって」(合唱)
  ヴェルディ:「椿姫」より「乾杯の歌」(鈴木愛美、笛田博昭、合唱)

 
 

 新潟県民会館は昭和39年の新潟地震の義捐金を元に建設され、昨年秋に開館40周年を迎えました。これを記念して、新潟県出身の若手音楽家を集めてガラコンサートが開催されました。災害からの復興のシンボルがフェニックスであり、県民会館の象徴として正面玄関前のポールの上にライトアップされています。
 今日は朝から快晴。太陽の光のありがたさを実感します。2時前に行ったのですが、駐車場は満車。どうにか別の駐車場に止めてホールに向かいました。今日はりゅーとぴあでは「音楽の絵本」という幼児向けのコンサートがあり、家族連れでたいそう賑わっていました。子供を連れた若いお母さん方を横目に県民会館に入ると自由席ということもあってか開場待ちの長い行列が既にできていました。こちらは平均年齢がかなり高く、隣と違って華やかさがありません。私も行列に身を投じましたが、考えてみれば私自身立派な中年オヤジでした。
 ロビーは大混雑となり、予定開場時間より10分早く開場となりました。今日の出演者はビジュアル的に期待できましたので、できるだけ前の席を確保しようと努力し、何とか11列目の席を取ることができました。客席はほぼ満席。ステージには花が飾られ、華やいだ雰囲気を醸し出していました。花のアレンジの仕方がかなり変わっていましたが、何流なんでしょうね。

 主催者の挨拶があった後、定刻に開演です。最初は奥村愛さんのヴァイオリン演奏です。ピアノ伴奏者が当初の発表とは違っていました。オレンジのドレスがスリムなボディに良く似合っていて、容姿を見ているだけでオジサンは満足してしまうのでした。もちろん演奏も良かったですけどね。トークコンサートを数多くこなしているだけあって、お話しも演奏もそつがなく楽しませてくれました。選曲も多彩であり、しっとりとショーソンを聴かせ、ヴュータンの楽しい曲で締めくくりました。この曲は以前聴いたことがあったように思いましたが、昨年11月に磯絵里子さんの演奏で聴いたことを思い出しました。奥村さんは最近新潟での活動も増えているようであり、昨年10月にもメンデルスゾーンのコンチェルトを聴いています。もっと聴く機会が増えるといいなあとにやけてしまうのでした。

 次はフルートの小山さんです。まだ大学生ですが、昨年の出光音楽賞を受賞し、活躍ぶりは目を見張ります。今日の曲目はチラシに出ていたものとは大きく変更されていました。日々研鑽を積み重ねているんでしょうね。昨年9月のリサイタルを聴いて感激しましたが、今日の演奏もじっくり聴かせてくれました。求道者のような音楽に向かう真摯な姿勢が感じられました。

 短い休憩の後、チェロの横坂さんの演奏です。日本の期待の若手としてすでに認知されていますので、今さら驚くこともないのですが、思わず唸ってしまうような演奏です。すばらしいテクニックと音楽性に息を呑みました。イケメンでもあり、人気チェロ奏者としてますます羽ばたいていくものと思います。

 これまでの3人のすばらしい演奏に既に満足してしまっていたのですが、最後に大物が控えていました。最後はソプラノの鈴木さん、テノールの笛田さんに合唱が加わっての演奏です。何といっても笛田さんの圧倒的存在感にホールがざわつきました。風邪を引いたとのことですが、ホールを振るわせるような声量に驚きました。ステージ映えする堂々とした歌いぶりに大物のオーラが感じられました。ブラボーの声も上がりました。昨年の第9回マダム・バタフライ世界コンクール(モルドバ共和国)で第1位を獲得しており、今後日本のみでなく、世界的にも活躍することが期待されます。
 鈴木さんも可憐なリリックソプラノで、容姿も端麗。笛田さんを前にすると影が薄くなってしまいますが、単独で考えるとすばらしい歌い手です。2月の新国立劇場の「サロメ」でも奴隷役で出演されていました。こんなにすばらしい歌手が新潟出身とは驚きです。すっかりファンになってしまいました。最後の「乾杯の歌」では衣裳替えして登場し、美しさが際だっていました。
 この2人に比べてしまうと、合唱は添え物としても貧弱に感じるというのが正直な感想でした。ご年配の方が多く、アマチュアとして考えてみてももう一息と思われました。

 最後に今日の出演者が再度登場して挨拶し、終演となりました。やっぱり笛田さんに対する拍手が際だっていたようです。3時間近くにも及ぶ長いコンサートでしたが、あっという間に思えました。出演者のすばらしさは言うまでもなく、ピアノの伴奏者も良かったと思います。
 余談ですが、ピアノはいい音を出していましたが、県民会館のピアノの外観は何故か光沢がなく貧相に感じます。建物同様に古くなったのでしょうかねえ。

(客席:1階11-17、全席自由 3000円)