小山裕幾 フルートリサイタル
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2007年9月15日(土) 18:30  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ピアノ:與口理恵
賛助出演:ハープ:篠崎和子、ヴァイオリン:瀧村依里、ヴィオラ:原裕子、チェロ:木下通子
 
 
J.S.バッハ:ソナタ ロ短調 BWV.1030 (ピアノ:與口理恵)
メシアン:黒つぐみ (ピアノ:與口理恵)
ベーム:グランド・ポロネーズ ニ長調 作品16 (ピアノ:與口理恵)

(休憩20分)

モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 K.285
          (Vn:瀧村依里、Va:原裕子、Vc:木下通子)
ドビュッシー:フルート・ヴィオラ・ハープのためのソナタ
          (Va:原裕子、Hp:篠崎和子)
アンドレ:ナルテックス (Hp:篠崎和子)
ジョリベ:リノスの歌 
          (Vn:瀧村依里、Va:原 裕子、Vc:木下通子、Hp:篠崎和子)

(アンコール)(Hp:篠崎和子)
フォーレ:シシリエンヌ
ビゼー:「アルルの女」より メヌエット

 
 

 数々のコンクールで第1位を取り、今年の出光音楽賞を受賞した新潟県の星、小山裕幾さんのコンサートに行ってきました。当初は行こうか迷っていましたが、テレビの「題名のない音楽会」に出演したのを見て感激し、急遽行くことにしました。長岡高校から音大ではなくて慶応の理工学部へ進んだ秀才です。大学のサークルはテニスとのこと。それでいて音楽は国際コンクールに優勝するほどの逸材。大したものですね。

 天気はいいものの、残暑が厳しく、真夏へ逆戻りです。今日は「にいがた総おどり」なる催しがあり、いつもの駐車場には入れず、離れた駐車場に車をとめてホールに向かいました。開場前に余裕を持って行ったのですが、すでに開場待ちの長い行列ができていました。人気と期待のほどがうかがえます。地元の長岡からも観光バスで応援団が駆けつけたようです。

 前半はピアノ伴奏による演奏です。ホールの響きの良さもあって、最初のバッハからきれいな音色に感激しました。真面目な人柄が忍ばれるような演奏で、やや面白味や驚きには欠けましたが、実力を知らしめるに十分な演奏だったと思います。続くメシアンとベームは、初めて聴く曲でもあり、聴き応えがありました。こういう前衛的な曲は若さが活かされていいと思います。ホールにこだまする多彩なフルートの音色に驚嘆するばかりでした。與口さんのピアノも負けず劣らずで良かったと思います。

 後半は賛助出演の皆さんとの共演です。パステルカラーのドレスが美しく、ステージが華やかになってハッと息を呑みました。最初のモーツァルトは、超有名曲ということもあって聴きなれていますが、新鮮な感動を与えてくれました。ただ緩徐部はもっとロマンチックにソフトに演奏して欲しかったように思いました。ちょっと一本調子だったかも知れません。でも、ほかの奏者の皆さんの演奏もすばらしく、透明感と輝きを感じる音色で、音楽の喜びを与えてくれる演奏でした。
 次のドビュッシーはヴィオラとハープという珍しい組み合わせです。それぞれがいい音色を奏でて、感銘深い演奏でした。ハープの篠崎さんは、あの大御所の篠崎史子さんの娘さんとか。さすがにすばらしいですね。
 「ナルテックス」はハープだけですが、驚きの名演奏だったと思います。フルートを分解して吹いたり、指をつっこんだりと、通常ではあり得ない奏法にビックリ。もっと驚いたのはハープ。こすったり叩いたり大忙しです。ハープの胴体を太鼓のように叩いたりして、絶妙の効果を出していました。ハープって打楽器でもあるんだなあと感心しました。譜めくりも鮮やかな篠崎さんの熱演に感激しました。
 最後はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープという珍しい編成での演奏です。曲自身が神秘的なものであり、フルートの演奏、共演者の演奏ともすばらしく、馴染みにくい現代曲ではありましたが、曲に引き込まれました。
 アンコールはハープの伴奏で、定番の小品を2曲続けて演奏しました。緊張感を強いられる現代曲の後だったこともあり、ホッとさせるような優しい音色に気持ちが緩みました。

 まだまだ大学生。それも音大じゃなくて慶応大学。ただ者じゃありません。音楽の幅を広げるためには、音楽以外の勉強をすることはいいことだと思います。これから益々発展していくことは疑いようがありません。新潟から世界へ羽ばたくのを見守りたいと思います。この新潟市での初リサイタルを聴くことができたことは、大きな喜びです。いや、聴かなかったことが悔いになるやも知れません。
 最後に、共演の皆様方の演奏のすばらしさにも拍手を贈りたいと思います。本日のリサイタルの成功は彼女たちの貢献も大きいと思います。ピアノ、ハープは既に実績を重ねていらっしゃいますが、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの皆さんはまだ東京芸大の学生さんです。初々しさがあふれんばかりで、容姿端麗、清楚なドレス姿もチャーミングでした。演奏は学生とは思えない見事なもの。さすがに芸大生ですね。小山さんには申し訳ありませんが、彼女たちのコンサートも聴いてみたいと思いました。きっとすばらしい音楽家に育つことでしょう。

 元気のない新潟、いまひとつ一流になれない新潟ではありますが、小山さんのような若者が世界へ羽ばたいていくことは励みになります。新潟は意外にも優秀な若手音楽家を輩出しています。優れた指導者の存在が大きいのだと思います。チェロの横坂源さんも一昨年に出光音楽賞を受賞していますし、ヴァイオリンの鍵冨弦太郎さんも活躍しています。フルートでは長岡の五十嵐冬馬さんがこの夏にファーストリサイタルを開いています。頑張れ、新潟! みんなで応援しましょう。
 

(客席:2階C4-5、全席自由2000円)