2008年 / 西谷弘監督 / 柴咲コウ, 松雪泰子, 堤真一
ミステリー映画とか、推理映画とかに共通の弱点と言えるものなのだが、最終的にはナゾ解きをしなければ完結しないし、あたりまえだが犯人も登場人物の中からしか出て来ないわけで、なぁーんだという感じで観終わってしまうことになる。
この映画もそうだったのだが、シナリオがよく練られているためか、あるいは原作が優れているためか、最後まで映画のテーマの根幹部分が明らかにされないから、引き込まれた状態がずっと続いて飽きさせない。
種明かしをしてしまえば、ちょっとメロドラマ風のようなことなのだが、それが最後の10分ぐらいのことなので興味をそがれることはない。
福山雅治の棒を飲んだような演技や台詞については、そういうものだと思って諦めるしかないが、堤真一と松雪泰子が素晴らしくよかったので、逆に福山の存在をほぼ消し去ってしまってあまり気にはならなかった。
松雪泰子は美形であるがゆえに、女優としてはある意味においては「損」をしている面があるのだが、そうした点を微塵も感じさせせることがなかった。
彼女の持つ端正さによって、悲惨や凄惨といった気分が緩和され、気分的に楽に観賞することができたと言ってもよい。これがいわゆる演技派の女優であったら、ちょっと娯楽にはなりにくかったかもしれない。
ダンカンの滑舌の悪さは、この映画でもどうしょうもなく、彼を配した監督の意図するところが不明だが、これを除けば、本来は主役級の柴咲コウと北村一輝がしっかり脇を固めていて、多少のキズは覆い隠している。
普通はベテラン陣を起用してその役割を担わせるのだが、これを若手がしっかりこなしている点には、ちょっと驚いてしまった。
ベテランが彼方此方に登場すると、それはそれで重厚感は出てくるのだが、モタモタ感を醸し出すという負の側面もあるわけで、スピード感が求められる映画では、こういう配役もあり得るのかと思った。(柴咲コウは、こういう役回りが合っているのかも知れない。)
あまりお金をかけてないことはすぐに分かるが、シナリオと俳優の二大要素さえしっかりしていれば、ある程度の質を持った映画になるという好例のような気がする。
松雪泰子と堤真一のツーショット画像を探したが、これは見つからないのが当然で、これが重要な要素になっていることに改めて気付かされた。
|