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(2011年1月)


1957年 / 川島雄三監督 / フランキー堺, 芦川いづみ

評判の映画だとは知ってはいたものの、日活が撮影した時代劇であるし、フランキー堺が主演であるし、そういうことで二の足を踏んでいたが、エイヤで思い切って観たら、これが意外によかった。

冒頭に1950年代の品川近辺の映像が出てきて、その景色に唖然とすると言うか呆然とすると言うか、それでハァーと思いつつ、すーっと画面に引き込まれていってしまった。

懐かしい俳優が次々に出てくるので、それに目を奪われたこともあるのだろうが、実に場面展開が軽快で、飽きさせることがなく、あっというまに観終わった感じがする。

いろいろな落語をまぜこぜにしているストーリーであることは、すぐに解ったが、見事に組み合わせてオリジナルな話に仕上げている。

台詞や動きに無駄はないし、画面のカットも綺麗だし、映画としてはあまり文句の付け所のない出来映えだと思う。セットのディテールも素晴らしい。

もちろん日活映画だから、主張にどうこうというものはないはずなのだけれど、どことなくスッキリした気分にさせてくれるのは、これはやはり練りに練った結果なのだ思う。

芦川いづみの可愛さは特筆物だが、それがちゃっかり、しっかり生き抜いていく様は、他の配役もそうだが、何だか勇気づけられる気がして実に爽快な気分にさせてくれる。

お奨めの映画だと思う。


2007年 / 平山秀幸監督 / 小泉今日子, 藤山直美

副題に「てれすこ」などと見慣れぬ文字が踊っているから、これはイタズラのようなものかと思っていたら、そうではなく重要な役割を果たしていることが後でわかった。

「やじきた」よりも先にこの「てれすこ」が登場するのだが、この冒頭部分からよく出来ていて、実に気持ちよく観賞し始めることができた。

無論のこと、目的は小泉今日子だったのだが、設定が29歳というのはちょっとツライとしても、これもなかなかの演技で満足した。

「てれすこ」の話と小泉今日子が演じる花魁の足抜けの話が、つかず離れずの感じで微妙に重なり合い、相互に補強し合って小気味よくどんどん場面が展開するから飽きさせない。

途中には、子狸の恩返し的な話が挿入されていたり、実際には荒唐無稽な話なので本来なら興がそがれてしまうのだが、そんなこともあるかも知れないと思わせる演出は見事だと思う。

本当なら、江戸の若者の気っぷの良さが売り物になる話だろうが、いかんせん主役が中村勘三郎と柄本明なので、いくらか気勢がそがれてしまうのは、ちょっと贅沢な注文だろうか。

映画に歌舞伎役者を配すると、全部が歌舞伎調になってしまうのでやめてほしいのだが、なぜか使いたがる傾向にあるから、このあたりは不思議に思っている。

最後には泣かせる場面もあるから、気分よく終えることができる。

余計なことかもしれないが、小泉今日子はチャラチャラしていないで、ちゃんと演技に精進すれば、優れた映画俳優になることは間違いないので、そのあたりをしっかり自覚してもらいたいな。


1987年 / スウェーデン映画

どんな映画でも、観終わったときには配役に不満が残ったり、出演者の演技に注文を付けたりしたくなるものだが、そういう気持ちが一切起こらない珍しい映画。

映画らしい映画を久しぶりに観賞した気分で、こういうのをこそ映画館の大画面で見ると本当に感動するのだろうなと思う。

ちょっとした事件が起こりつつも、静かに日々が過ぎて行く感じが非常によく出ているし、吹き替えになってもいるので、家族で一緒に見るには最適の映画になっている。

素晴らしい映像の連続に圧倒されてしまった。

原題:Mer om oss barn i Bullerbyn


1986年 / スウェーデン映画

最初に観た『やかまし村の春・夏・秋・冬』が続編で、こちらの『やかまし村の子どもたち』が第1作になる。

冒頭のシーンがどちらも同じなので一瞬迷ってしまうが、それで続編のほうを第1作だと勘違いしてしまっていた。

好みから言えば四季の移り変わりがある続編になるが、夏休みの出来事を丁寧に描いたこちらも見応えがあって、もちろん優劣はつけられないし、またそういう必要もない。

両方を観賞すると、また一段とスウェーデンやその自然について理解が深まると思う。

観客の気持ちを追い込まないようなストーリーになっているので、実に快適な時間が過ごせる。

例えば、二人で町に買い物に出かけるのだが、買い忘れをして何回も行き来して、最後は疲れてしまってどうなるのだろうかと、ちょっと心配させる場面でも、そこに荷物を運ぶ馬車がすっと現れて乗せてもらうというように、心理的な負担がまったくない。

ほんとうによく考えて製作されている映画だと思う。

原題:Alla vi barn i Bullerbyn


2006年 / 荻上直子監督 / 小林聡美

吉永小百合は別格として、自分の好みで言えば、女優としては宮沢りえと小林聡美が双璧だと思っているので、『かもめ食堂』もそういうことで観ることにした。

ロケ場所が実際にフィンランドのヘルシンキなのかどうかは分からないが設定はそういう地味なところだし、話も食堂と言うごくありふれた風景なので、話の展開としては、どこをどうしようが劇的なことは有り得ない。

もう淡々と時間は過ぎて行くわけで、本来ならあくびが出てもよいはずなのに、さすがに小林聡美がしっかりした演技で最後まで飽くことなくみせてくれた。

ヘルシンキと日本食の食堂を組み合わせることで異空間を創りだしているのだと思うが、そうすることで日本的な各種の煩わしさが捨象され、どこかファンタスティックな雰囲気が醸し出されている。

片桐はいりが登場した時、これでこの映画もぶちこわしかと思ったが、意外にすんなりと組み込まれていったので、これは彼女の別の側面をみるようで、ちょっとした驚きがあった。

片桐はいりで十分なところを、もたいまさこで追い打ちをかけるのは余計なことで、屋上屋を重ねている感じはあるが、まぁ無視すればよいと思ってそうした。

日常的なことが、ほぼ決まったように過ぎて行くということに感動を覚えるという非常によい映画だった。


2008年 / スティーブン・ソダーバーグ監督

チェ・ゲバラを主題にした映画は一度は観ておきたいと思っていた。

ゲバラに関心のない人には、退屈な映画になるだろうと、実際に観賞してそう思った。

モノクロの部分とカラーの部分が交互に入れ替わるのだが、モノクロは記録フィルム的な内容になっている。無論のこと映画の一部であって俳優が演技している。

全体の進行を図るうえでのことだろうが、こうした手法には異論を唱える人があるかも知れない。

キューバ革命については、書籍を呼んだこともないし、全く知識がなかったので、何か分かったような気分にはなったが、もちろん部分的なことに過ぎないとは思う。

これは「前編」ということなので、「後編(39歳別れの手紙)」も観ようと思うが期待は半ばといったところか。

原題:The Argentine

Che (1 of 20)


2008年 / スティーブン・ソダーバーグ監督

『チェ 28歳の革命』が前編で、こちらの『チェ 39歳 別れの手紙』が後編という構成になっている。

前編を観た後で、後編はどうしようかと思ったが、流れの一環として観ることにした。迷ったのは、デキの「善し悪し」というよりも、最後には退屈してしまうのではないかと感じたことによる。

前編は、キューバ革命の成功という結末が待ち構えているので、ストーリーへの期待感なり、あるいは高揚感なりを感じつつ、最終シーンまで気持ちを持たせてくれるが

後編は、ボリビア革命を題材にしているので、失敗の結末が分かっているし、そこの点を自分の気持ちの中では、どのように折り合いつけながら観てよいものかと思っていたが、意外に淡々と観賞することができた。

史実をそのままドキュメントしているとは思えないが、もう少し国際情勢とか、キューバ政府の関わり方とかを取り上げてくれていたらよかったのではないかとも思ったが、そのあたりは監督の関心外であったのかも知れない。

日本人の滅びの美学に通じるような映像展開だったので、それで最後まで観ることができたのかも知れない。

原題:Guerrilla


2008年 / 篠原哲雄監督 / 田中麗奈

キャピキャピ感が満載の田中麗奈が主演であるし、それに東山紀之が加わるとなると、傍目にも不安が募ってくるのだが、これが想像した以上によい映画であった。

藤沢周平原作の映画がすでに何本かあるなかで、それに敢えて挑戦するとなると、かなりの勇気が必要だと思うが、これをやり遂げた篠原哲雄監督を讃えたい。

原作はおそらく短篇小説であって、それを反映したのだと思うが、実に淡々と平板にストーリーは展開するが、田中麗奈の好演もあって飽きさせることがない。

この映画が成功した原因のひとつは、田中麗奈を除く出演者の登場回数あるいは登場場面をほぼ均等にしたことだろうと思う。

誰かが過剰に露出することがなく、それがこの映画の持つ簡素で静謐な雰囲気をさらに際だたせることになったような気がする。

ちょうど桜が咲く季節であったので、日本人の一人として、とくに興趣が高まったためかもしれない。

桜といえば、やはり野に力強く咲く山桜に限ると改めてそう思うとともに、日本の女性が着物を着れば、誰でも楚々とした風情を漂わせるものだということに、改めて感心してしまった。

もう4,5回は観ている。


1985年 / アメリカ映画 / ピーター・ウィアー監督 / ハリソン・フォード, ケリー・マクギリス

殺人場面のある映画はあまり好まないので、「刑事」というタイトルから絶対にそれはあるわけで、どうしようかと思ったが、主演がハリソン・フォードの一点が決め手になって観ることにした。

犯人はすぐに判明するので、犯人捜しのサスペンスものと言うよりは、ヒューマンなタッチの色合いが濃く、それで気持ち的には少し楽な感じで最後まで観ることができた。

収穫というか、参考になったというか、アーミッシュの生活がおそらくかなり正確に描写されていることで、文化の一端に触れた感じがして、これも満足度を高めた原因だと思う。

文化的なことを映画のセットで再現するのは大変なことだと思うが、なるほどと思わせる場面が随所にあって、アメリカ映画のよさというものを改めて感じさせてくれた。

英語の勉強にもなるので、購入するなら「英語/日本語字幕」をおすすめする。

原題:Witness


1979年 / スウェーデン映画 / ゴーラン・グラフマン監督

『やかまし村の子どもたち』によく似た映画だと思ったら、それもそのはずで、原作者は同じアストリッド・リンドグレーンだった。

そういうことを知らないから、『やかまし村の春・夏・秋・冬』・『やかまし村の子どもたち』・『川のほとりのおもしろ荘』と飛び飛びに観てしまっているから、これらの作品群を撮影した監督の意図するところが本当はつかめていないのかもしれないと、ちょっぴり不安にはなった。

楽しく、面白く、安心して観ることができる数少ない映画だから、そういう点では是非おすすめする。

原題:Du ar inte klok Madiken


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