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新潟大学名誉教授で、数多くの合唱団の創設や指導に携わり、新潟の音楽界に多大な貢献をされた箕輪久夫先生は、2023年11月19日に、88歳でご逝去されました。
箕輪先生が創設された「合唱団にいがた」による追悼演奏会は7月27日に開催されましたが、今回は箕輪先生に指導受けた教え子ら105人が合唱団「合唱樹」を結成し、追悼演奏会が開催されることになりました。
前半は箕輪先生のご子息の箕輪 健さん、箕輪 豊さんらによる演奏で、後半は合唱樹と新潟交響楽団が共演して箕輪先生が愛したモーツァルトの「レクイエム」が演奏されます。
私は箕輪先生に指導を受けたわけではありませんが、箕輪先生が合唱指揮・指導をされた演奏会を何度か聴かせていただいている新潟の音楽好きの一人として、新潟の合唱文化に貢献された箕輪先生を追悼すべく、演奏会に参加させていただくことにしました。
なお、私が箕輪先生のお姿を最後に拝見したのは、コロナ禍中の2021年2月に開催された「モーツァルト
レクイエム 特別演奏会」でした。そのときの指揮者も本日指揮をする坂井悠紀さんで、箕輪 健さんも出演されていました。
ちなみに、その翌月の「東京交響楽団新潟特別演奏会 2021弥生」でもモーツァルトの「レクイエム」が演奏されており、1か月も空かずに2度聴くということになったことも思い出されます。今回はそのとき以来の「レクイエム」です。
今日は天候に恵まれて青空が広がり、過ごしやすい土曜日になりました。某所で昼食を摂って車を進めて、白山公園駐車場に車をとめようと思いましたが、イベントが重なっていたようで、駐車場は満車でした。仕方なく近くのコインパーキングに車をとめました。
上古町から白山神社を抜けてりゅーとぴあへと向かいましたが、外国の方がたくさんおられてびっくりしました。どうしたんでしょうか。
りゅーとぴあに入りますと、すでに開場待ちの列ができており、私もその列に並んで、開場とともに入場しました。自由席でしたので、いつもの2階正面に席を取りました。客はご婦人方が多く、合唱関係の方も多いようでした。周囲のご婦人方のお喋りに耐えながら、開演を待ちました。
ステージ中央にビアノが設置され、後方には合唱団席が組まれていました。客席は1階後方と2階正面はびっしりと埋まり、ほかも次第に埋まっていきました。
開演時間となって場内が暗転し、パイプオルガンだけに照明が当てられた暗いホールに、箕輪先生の新潟大学退官記念コンサートでの歌声(シューベルト:楽に寄す、ピアノ:田中幸治)の録音が流されて、しんみりと聴き入りました。
暗い中に女声合唱団(33人)が静かに入場し、箕輪先生のご子息であるバリトンの箕輪 健さん、ピアノの箕輪 豊さんが譜めくりとともに登場しました。
演奏会の最初の曲として、シューベルトの「セレナーデ」が歌われました。バリトンと透明感のある女声合唱の美しいハーモニーとが溶け合って、極上の響きを生み出し、うっとりと聴き入りました。特に女声合唱の素晴らしさには驚きました。
全員退場した後に、赤いドレス姿が麗しいソプランの橋 唯さんと、ピアノの澁木 薫さんが登場して、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」が歌われて、美しいリリックソプラノに魅了されました。
続いて小林秀雄の「落葉松」を、しっとりと歌い、切々とした歌声が心に沁みました。さすが全国を舞台に活躍している実力者ですね。新潟県出身ながら、新潟市では聴く機会がなく、今回歌声を聴けて良かったです。
ピアノが前方に移動されて、譜面台が外され、続いては箕輪 豊さんのピアノ独奏で、ショパンの幻想曲です。お馴染みの「雪の降る街を」と似たメロディで重々しく始まり、ゆっくりと行進するようでした。その後も重く、力強く音楽が流れ、最後はパワフルに熱く盛り上げて終わりました。
ピアノのが元の位置に戻されて譜面台が設置され、続いてはバリトンの箕輪 健さんとピアノの小林恵美さんにより、シューマンの「詩人の恋」からの8曲が歌われました。
切れ目なく各曲が歌われましたが、朗々としたバリトンと美しいピアノが感動を誘い、客席からはブラボーが贈られました。
前半最後は、バリトンの箕輪 健さんとピアノの箕輪 豊さんにより、R.シュトラウスの「献呈」が歌われました。声量豊かに、情感を込めて高らかに歌い、短い曲でしたが大きな感動をもたらして、前半を締めくくりました。
休憩後の後半は、いよいよモーツァルトの「レクイエム」です。まず合唱団が静かに入場し、続いてオケが拍手なしで静かに入場してスタンバイしました。
オケは小編成で、弦5部は 7-6-5-4-3 です。ほかにクラリネット2、ファゴット2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ1という編成です。ティンパニは左横に配置されました。
拍手の中に独唱者4人と指揮者が入場。独唱者はオケの後方、合唱団の前に着席しました。前半で美しい歌声で魅了したソプラノの橋
唯さんは黒いドレスに衣裳替えしておられました。指揮の坂井悠紀さんが指揮台に上がり、演奏開始です。
最初の「永遠の安息を(レクイエム・エテルナム)」で、一気にモーツァルトの世界へ誘われました。力強くも美しい合唱の素晴らしさ、新潟交響楽団の精鋭による小編成のオケの素晴らしさに息を呑みました。ソプラノが加わって演奏が進み、切れ目なく「憐みの賛歌(キリエ)」に続き、美しい歌声に聴き入りました。
「怒りの日(ディエス・イレ)」を力強く歌い、合唱団が着席して、「ラッパが響かせる(トゥーバ・ミルム)」を、トロンボーンに導かれてバスが朗々と歌い、そこにテノール、アルトの順に加わり、ソプラノも加わって美しい四重唱となり、うっとりしました。
合唱団が起立して、「恐るべき王(レックス・トレメンデ)」を力強くも美しい合唱で聴かせてくれて感嘆し、「Rex!、Rex!」と叫ぶように歌う男声合唱の迫力ある歌声が耳から離れず、合唱団の素晴らしさを実感しました。
合唱団が着席し、「思い出してください(レコルダーレ)」は、アルトとバスに始まり、ソプラノとテノールが加わって、美しい四重唱となりました。
合唱団が起立して、「呪われた者たちが(コンフターティス)」を、力強い男声合唱に引き続いて透明感のある美しい女声合唱が歌い、交じり合い、男声と女声の対比が美しく感じられました。
続けて「涙の日(ラクリモサ)」を、合唱団がしっとりと美しく、切々と歌って感動に浸りましたが、最後の「アーメン」のところで、客席から携帯の着信音が・・・。あまりのタイミングの悪さに唖然としました。
続いて「主イエス・キリストよ(ドミネ・イエス)」を合唱団が力強く歌い、さらに独唱者4人が加わって、劇的に歌い上げて盛り上げました。
続く「いけにえと祈りを(オスティアス)」は、合唱が穏やかに歌って始まりました。そして力を込めて歌い、輪唱となって熱量を上げて熱く歌い、そして静かに終わりました。
続く「感謝の賛歌(サンクトゥス)」は、「サンクトゥス」と力強く歌い、その後は輪唱となって、力強く歌って、盛り上がりの中に終わりました。
「祝福の賛歌(ベネディクトゥス)」は、独唱者によるしっとりとした美しい四重唱にうっとりし、合唱が加わって終わりました。
そして、「平和の賛歌(アニュス・デイ)」を合唱が悲しげに歌い、その後は力強く歌いました。切れ目なく最後の「永遠の光が(ルックス・エテルナ)」をソプラノが美しく歌い、合唱が加わりました。
力強く歌う合唱団。劇的に輪唱し、左右のステレオ効果も素晴らしく、熱量をどんどんと高めて行き、渦巻くような高揚感を生みました。全休止の後に大きく歌って、感動の「レクイエム」は終わりました。
大きな感動をホールにもたらし、ひと呼吸置いてブラボーの声も上がりました。合奏指揮の佐藤匠さんも呼び出されてカーテンコールが繰り返されて、熱演を讃えました。
最後は前半の出演者もステージに出てきて、全員がステージ前方に並んで拍手を受けた後、代表の挨拶があって、感動の演奏会は終演となりました。
新潟交響楽団とともに、素晴らしいパフォーマンスを発揮した合唱団の歌声に感動しました。これらの合唱団を指導し、育て上げた箕輪久夫先生も、教え子たちの素晴らしい演奏を聴いて喜んでおられるものと思います。
新潟の合唱団、新潟のオーケストラ、新潟の指揮者、そして新潟の独唱者も加えて、新潟の力でこのような素晴らしい演奏を作り上げたことは賞賛すべきことだと思います。
新潟の地に、このように素晴らしい音楽文化を根付かせてくれた箕輪久夫先生の功績を、改めて賞賛したいと思います。後半の「レクイエム」に関しましては、今年の「マイベスト10」の候補に挙げたいと思います。
大きな感動とともに外に出ますと、青空が広がり、穏やかな空気に満たされていました。白山神社には先ほどと同様に外国人グループがおられました。過ぎ行く新潟の秋を楽しんでほしいですね。
(客席:2階C5-11 ¥3000) |