今週も先週と同様に、県内各地でたくさんの魅力あるコンサートが開催されており、どこに行くか悩ましい日曜日になりました。
その中でも、魚沼市での「上野通明 無伴奏チェロリサイタル」は是非とも聴いてみたかったのですが、遠出できず断念しました。
新潟県民会館での石田組長率いる「YAMATO String Quartet 2025」に行くか悩みましたが、昨年8月に聴いていますので今回はやめにして、この新潟交響楽団を選びました。日時がずれていたら両方行けたのですが、見事に重なってしまい残念でした。
今回の指揮者は、2022年6月の第108回定期演奏会から指揮している平川範幸さんです。昨年11月の第113回定期演奏会だけは、なぜか永原裕哉さんでしたが、年末の「第23回新潟第九コンサート」は平川さんに戻りました。
今回のプログラムは、フンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲、シューベルトの「未完成」、そしてシベリウスの交響曲第5番です。
新潟交響楽団での演奏では、「ヘンゼルとグレーテル」は2015年12月の「第16回新潟第九コンサート2015」(指揮:伊藤
翔)以来で、シューベルトの「未完成」は、2007年6月の第80回定期演奏会(指揮:船橋洋介)以来です。
シベリウスの交響曲第5番は今回が初めてになります。ほかのオケでも、2011年11月の東京交響楽団第68回新潟定期演奏会(指揮:大友直人)で聴いて以来になります。
シベリウスの交響曲といえは、第2番は聴く機会が多く、その次は第1番ですが、第5番が演奏されるのは珍しく、せっかくの機会ですので、どのような演奏を聴かせてくれるか楽しみにしたいと思います。
ここしばらく、週末になるたびに天候が崩れて、昨日は午後から雨が降り、今日も朝起きましたら曇り空が広がっていました。気分も晴れませんが、天候はどうしようもありません。雨が降らないだけありがたいと思いましょう。
ゆっくりと昼食を食べ、白山公園駐車場へと車を進めました。車をとめて、YAMATO SQ のコンサートが開催される県民会館を覗いて見ました。ロビーはご婦人方が多数おられましたが、まだそれほどの混雑はありませんでした。当日券が販売されていましたが、集客はいかがでしょうか。潟響と重ならなければ良いのにと、あらためて感じました。
コスプレした若者たちを横目に、りゅーとぴあに入りますと、まだ開場待ちの列は短く、その列に並んで開場を待ちましたが、次第に列が伸びました。
開場とともに入場し、自由席エリアの2階Dブロック右端に席をとり、この原稿を書きながら開演を待ちました。2階正面の指定席は空きが多いようでしたが、自由席エリアはなかなかの入りになりました。
ステージを見回しますと、オケの配置は、通常の配置の12型で、弦5部は、12-10-9-8-8 でした。プログラムを見ますと、コントラバスに、トレーナーで、仙台フィル主席・東京交響楽団客演主席の助川
龍さんが賛助出演されるとのことでした。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場し、全員揃うまで起立して待ち、最後にコンマスが登場して礼をして、大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。
平川さんが登場して、1曲目の「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲の演奏開始です。柔らかに歌うホルンに始まり、弦が加わり、ティンパニと管も加わって、ゆったりと物語が始まりました。
賑やかさも見せて壮大に歌い上げ、おとぎ話の世界へと誘われました。弦楽アンサンブルの美しさに感嘆し、管も美しく響きました。潟響の良さが感じられて、うっとりと聴き入り、音楽物語の世界に身を委ねました。最初の曲として素晴らしい演奏であり、観客の心を一気につかみました。
管の編成が小さくなり、団員の入れ替わりがあって、2曲目は、シューベルトの「未完成」です。平川さんが登場して演奏開始です。
チェロとコントラバスの地を這うような響きに始まって、ヴァイオリンが加わり、ヴィオラ・チェロ・コントラバスのピチカートとともに、管が美しい主題を奏でました。ホルンに導かれてチェロが美しく歌い、ヴァイオリンがそのメロディを引き継いで曲が進み、不安を掻き立てながらメロディを歌いました。
これをもう1度繰り返して、暗黒の地底から沸き上がるようにエネルギーを増して、力強くメロディを奏で、さらに冒頭の主題をもう1度繰り返して、不安な空気感を高めて楽章を閉じました。
第2楽章は、ホルンとコントラバスのピチカートに導かれて、弦楽が美しく歌いました。聴き所のヴァイオリンのオクターブの跳躍は怪しげでしたが、まあこんなものでしょう。(さそうあきらの「マエストロ」の影響で、この部分にはこだわってしまいます。申しわけありません。)
中間部で不安を掻き立てるも、再び穏やかな弦楽とホルンに癒され、繰り返しが行われて、再度のオクターブの跳躍から、オーボエとクラリネットの聴かせどころも頑張ってくれました。
力強く奏でて盛り上がるも、再び穏やかさが訪れ、オクターブの跳躍を繰り返して、穏やかさの中に曲は終わりました。
名曲中の名曲で、個人的なこだわりもありましたが、美しい演奏だったと思います。弦も管も美しく、潟響の実力を示してくれました。
休憩後の後半は、メインのシベリウスの交響曲第5番で、全3楽章からなります。平川さんが登場して演奏開始です。
第1楽章は、ホルンとティンパニに始まり、その響きはまさに北欧です。シベリウスという先入観もありましょうが、澄み切った北欧の空気感を感じました。
不安を掻き立てる弦のトレモロから、トランペットが響き、どんどんと暗さを増して、弦楽アンサンブルの不気味さに不安感が増しました。
そして、ゆったりと壮大に音楽を奏で、北欧の大自然が眼前に広がりました。春が来たかのような明るさも垣間見えましたが、トランペットやホルンが歌い、不穏な空気は消えることはありませんでした。
エネルギーを増して、金管が炸裂し、壮大なフィナーレとなって高揚し、歯切れの良い和音とともに楽章が終わりました。
第2楽章は、ホルンとクラリネットに導かれて、ちょっとユーモラスにも感じられる牧歌的なメロディが、弦のピチカートで奏でられました。変奏曲のように形を変えながら、楽章を通じてこのメロディが奏で続けられました。
このメロディを聴くたびに、シュワルツネッガーによるCMにも使用されたショスタコーヴィチの交響曲第7番第1楽章を思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか。明るくのどかで、耳馴染みの良いこの楽章は個人的には好きです。
さまざまに形を変えながら、ひたすら同じテーマを演奏し続けて、穏やかな展開の中に、静かにこの楽章は終わりました。
第3楽章は、激しく奏でるヴィオラに始まり、ヴァイオリンが加わってスピードアップしました。ホルンが高からかにこの楽章のテーマとなるキャッチーなメロディを奏でました。
ゆったりと歌い、壮大な音楽は、眼前に北欧の自然が広がるような印象を感じさせました。コントラバスが弓を鳴らし、細かくリズムを刻んでスピードを上げ、ヴァイオリンとヴィオラが猛スピードで突き進みました。
穏やかさを見せて、ゆったりと歌い、大きなうねりを作って金管がファンファーレを奏で、音量を増して盛り上がり、その大きなうねりはピークを迎えました。最後の聴き所の、全休止をはさんでの6回の全奏和音の切れも良く、感動の演奏はフィナーレとなりました。
潟響の渾身の演奏と、その演奏を引き出してくれた平川さんに大きな拍手が贈られ、曲の良さを知らしめてくれた最高のパフォーマンスを讃えました。
カーテンコールが繰り返され、平川さんに花束が贈られましたが、平川さんはその花束を客演してくれたコントラバスの助川さんに贈りました。(さらに助川さんは女性団員に渡していました。)
大きな拍手に応えてのアンコールは、シベリウスの「アンダンテ・フェスティーボ」でした。美しい弦楽アンサンブルでメロディが奏でられ、その美しさに息を呑み、潟響の力を知らしめてくれました。
この美しいメロディは最近聴いたばかりのように思いながら曲を聴いていましたが、最後にティンパニが加わったところで、この曲だと確信しました。
この曲は、5月5日の新潟クラシックストリートでの北区フィルハーモニー管弦楽団スペシャルコンサートで演奏されていました。このときは北区フィルの弦楽アンサンブルの美しさに感嘆しましたが、潟響はそれ以上の美しさで、新潟のアマオケのトップとしての実力を示してくれました。
ちょっと終演時間は早かったですが、大きな感動で胸はいっぱいでした。外に出ますと、暑くもなく、爽やかな天気でした。
今日はたくさんの演奏会がありましたが、この潟響を選んで良かったという満足感とともに、足取りも軽く駐車場へと向かいました。
次回の定期演奏会は、11月23日にりゅーとぴあで開催されます。指揮者は平川さんで、シューベルトの交響曲第5番とマーラーの交響曲第5番が演奏されます。これは楽しみですね。
(客席:2階D5-31、自由席:¥1000) |