YAMATO String Quartet 30th Anniversary 2024
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2024年8月11日(日) 14:00 新潟県民会館 大ホール
YAMATO String Quartet
ヴァイオリン:石田泰尚、執行恒宏 ヴィオラ:榎戸崇浩 チェロ:阪田宏彰
 
A.ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番
E.モリコーネ:ニューシネマパラダイス
H.マンシーニ:ピンクパンサー変奏曲
伊福部 昭:ゴジラ

(休憩20分)

A.ピアソラ:
  アディオス・ノニーノ
  オブリビオン
  天使の死
  悪魔のロマンス
  リベルタンゴ
ビートルズ:ビートルズメドレー
クイーン:ボヘミアン・ラプソディ
レッドツェッペリン:カシミール

(アンコール)
H.マンシーニ:ひまわり
ディープ・パープル:紫の炎
 

 YAMATO SQ は、1994年に結成され、クラシックの枠を超えた多彩なプログラムで楽しませてくれています。今日は結成30周年記念公演で、昨日の富山公演に引き続いての新潟公演です。

 YAMATO SQ は、生演奏は今回初めて聴かせていただきますが、YouTubeで演奏が公開されており、その素晴らしさに感銘し、是非とも聴きたいと思い、チケットを買いました。
 プログラムは、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番を除いては、映画音楽やビートルズ、ピアソラなど多彩な演目が並び、特にクイーンやレッド・ツェッペリンが楽しみです。

 メンバーの中では、やはり石田泰尚さんが注目されましょう。神奈川フィルのソロ・コンサートマスターのほか、ソロ活動や石田組としての活動など、多彩な演奏活動をされており、一流のヴァイオリン奏者らしからぬ個性的な風貌・挙動とともに観客を魅了しています。
 7月30日には、石田組10周年ツアーで新潟に来演(にいがた音楽鑑賞会)しており、2週間も経たないうちに、再度の新潟での演奏会になります。
 ちなみに、この石田組の演奏会でも、今日の演目のクイーンのボヘンミアン・ラプソディやレッドツェッペリンのカシミールが演奏されていました。
 なお、YAMATO SQ としては今回が初めてですが、石田さんの演奏はこれまで何度か聴かせていただいており、直近では2021年9月のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会以来になります。

 お盆前の日曜日。山の日の休日でもあります。山にでも出かけるのが趣旨なんでしょうが、この暑さに山登りでもないでしょう。
 今朝は、某所で6時からの朝湯を楽しみ、さっぱりしたところで、昨日の記事を書き上げて、一旦アップして家を出て、会場の新潟県民会館へと向かいました。

 今日は、りゅーとぴあ・劇場では、APRICOTの最終公演があり、能楽堂では人気三味線プレイヤーの史佳さんのコンサート、コンサートホールでは、オルガンのファミリーコンサートがあります。さらに新潟まつりの花火大会があるため、陸上競技場の駐車場は早くから閉鎖され、白山公園駐車場の一部が使えないという情報を得ていましたので、早めにに家を出て、いつもの白山公園駐車場に車をとめました。
 ここもスムーズに駐車できたわけではなく、しばらく出庫待ちをして、入れ違いにとめることができました。早く来て良かったようです。

 県民会館に行きますと、ロビーの椅子は開場を待つ人たちで埋まっていましたので、りゅーとぴあに移動して、東ロビーでこの原稿を書きながら涼んでいました。気付きますと、既に開場時間が過ぎており、慌てて県民会館に移動しました。
 館内に入りますと、開場の列が長く伸びており、その列に並んで入場しました。席に着いてこの原稿の続きを書きながら、開演を待ちました。
 ホールは、2階席は使用されず、1階席のみでしたが、室内楽には大きすぎるように思います。りゅーとぴあなら良いのにと思わざるを得ませんでしたが、先にオルガンのファミリーコンサートの予定が入っていて、県民会館になったものと思います。
 観客は、石田さん人気と思われますが、若い人からお年寄りまで、圧倒的に女性客が多く、ジジイは、肩身が狭く感じられました。
 開演が近付くに連れて席は埋まり、開演を待つ熱気に満ちていました。前方はびっしりでしたが、後方は空席がありました。もしかしたら後方は販売されなかったのかもしれません。

 興醒めなブザーが鳴り、開演のアナウンスが流れて場内が暗転し、演奏前にチェロの阪田さんによるプレトークが行われました。
 入場時に渡されたプログラムは、曲名が書かれたA4の紙が1枚だけで、メンバーの名前もなく、曲目解説などあろうはずもありませんでした。
 そのため、曲の紹介をする目的でプレトークを行うことにしたそうです。前半のメインであるボロディンについての解説がありました。今日は曲を詰め込め過ぎて時間に余裕がないので、これ以上は話をすることなく、黙々と演奏をするとのことでした。

 阪田さんが下がって、少ししてから4人が登場しました。左から第1ヴァイオリン:石田泰尚さん、第2ヴァイオリン:執行恒宏さん、チェロ:阪田宏彰さん、ヴィオラ:榎戸崇浩さんです。

 まず最初は、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番です。柔らかな弦楽四重奏の調べにうっとりと聴き入り、この弦楽四重奏団の素晴らしさがすぐに実感されました。ただし、ホールの空調の音がして、やはりこのホールは繊細な室内楽には向かないことを再認識しました。
 第2楽章は、快活に明るくメロディを奏で、チューニングをして第3楽章へ。甘く切ないメロディが、しっとりと胸に滲みました。
 第4楽章は、激しく、せわしなく、うねりを作りながら熱量を上げて、石田さんの高音の美しい響きとともに曲を閉じました。

 以後、退場することなく、映画音楽の3曲が続けて演奏されました。2曲目のモリコーネの「ニューシネマパラダイス」は、少し速めでしたが、甘く切ないメロディに、うっとりと聴き入りました。

 3曲目は、ヘンリー・マンシーニの「ピンクパンサー変奏曲」です。お馴染みのメロディが形を変えながら演奏され、ジャジーな雰囲気の中で、編曲の面白さで楽しませてくれました。

 前半最後の4曲目は、伊福部昭の「ゴジラ」です。不気味さを漂わせる静かな序奏から、ゴジラのテーマが繰り返し奏でられ、反復するうちに熱量を上げ、緊迫感溢れる演奏に圧倒されました。

 拍手に応えて、石田さんが真っ先に立ち上がり、そのまま拍手に応えることなく、ステージから去っていきました。他の3人は普通に拍手に応えていましたが、石田さんだけ別行動で、個性を存分に発揮していました。

 休憩後の後半は、拍手に応えることもなく、席に着席したまま全曲を続けて演奏しました。プレトークでの阪田さんの言葉通りに、黙々と脇目も振らずに演奏に徹しておられました。

 後半最初は、ピアソラです。チューニングを始めたかと思うと、そのまま切れ目なく「アディオス・ノニーノ」の演奏が始まりました。タンゴのリズムとともに奏でられる切ないメロディに涙しました。
 「オブリビオン」は、しっとりと切なくむせび泣き、「天使の死」は激しく熱く燃え、「悪魔のロマンス」は、ゆったりと、しっとりと歌い、「リベルタンゴ」を情熱的に演奏して興奮をもたらしました。

 続いては「ビートルズメドレー」です。ゴールデンスランバー〜ミッシェル〜ノルウェーの森〜デイトリッパー〜エリナーリグビー〜イエスタデイ〜ヘイジュードと、お馴染みのメロディが次々と流れ、最後にサムシングのメロディがちらりと現れて終わりましたが、編曲の良さもあって、楽しく聴かせていただきました。

 続くクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」は、演奏を聴きながら心の中で一緒に歌いました。曲の良さを知らしめるいい演奏でした。

 そして、最後はレッドツェッペリンの「カシミール」です。これも原曲の持つエスニックな空気感が良く出ていて、激しいリズムの繰り返しとともに、高揚感を誘い、聴衆に興奮をもたらしました。

 演奏終了とともに、石田さんが真っ先に立ち上がり、拍手に応えることなく、すぐにステージから去ってしまいました。その後もステージに出たかと思うと、反対側に消えたりと、まさに石田ワールドの炸裂でした。
 
 アンコールにヘンリー・マンシーニの「ひまわり」をしっとりと、情感豊かに演奏し、「カシミール」の興奮を鎮める上質なデザートをプレゼントしてくれました。
 そして、ディープパープルの「紫の炎」を、熱く、激しく演奏し、ホールを埋めた聴衆に、否応のない興奮をもたらし、スタンディングオベーションの熱狂を巻き起こしました。
 これほど熱く興奮するコンサートは久しぶりであり、感動の演奏に、老いぼれた私もエネルギーをいただくことができました。
 
 奇抜な所作・行動の石田さんではありますが、ヴァイオリンから繰り出される音は潤いに満ちており、音楽の泉が沸き上がるようでした。他の3人も素晴らしいパフォーマンスであり、文句なく楽しませていただきました。
 弦楽四重奏団の演奏会で、これほどまでに熱狂と興奮をもたらすことなどありましょうか。大きな満足感を胸に、いい音楽を聴いた喜びとともにホールを後にしました。

 今夜は、新潟まつりの花火大会で、りゅーとぴあ周辺は封鎖されますので、早めに駐車場を出て帰途に着きました。今夜は花火で盛り上がることでしょうが、それ以上の感動と興奮をいただきましたので、今夜はその余韻を楽しみたいと思います。
 

(客席:1階10-17、¥5000)