東京交響楽団第139回新潟定期演奏会
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2024年10月6日(日)17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
ピアノ:小林愛実
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 
コネッソン:輝く者 ーピアノと管弦楽のための

ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調

(ソリストアンコール)
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作

(休憩:20分)

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
 今日は、9月に引き続いて2か月連続の東響新潟定期演奏会です。前回の第138回は9月15日の開催でしたので、わずか3週間で第139回の開催となりました。
 東響のスケジュールの都合でこうなったのでしょうが、次の第140回は、来年の3月23日に開催されますので、5か月半も空いてしまいます。第135回(2023年12月3日)と第136回(2024年6月16日)も半年以上空きました。このような開催間隔のアンバランスさは常態化しており、何とかならないものかと思います。
 開催期間が半年も空くということは、他の期間に密集して開催されるということを意味します。今回のようにわずか3週間と近接しての開催となりますと、行きにくい人も多いと思われます。集客減にもつながるのではないかと危惧しています。適度な開催間隔が集客増につながると思いますので、一考願いたいと思いますが、来年度も改善されないようですね。

 さて、先回の第138回新潟定期演奏会は仕事のため行けませんでしたので、前日の川崎での名曲全集第199回のネット配信を視聴して我慢しました。
 東響を生で聴くのは8月17日の「オーケストラはキミのともだち」以来ですが、新潟定期としましては、7月21日の第137回新潟定期演奏会以来ですので、久しぶりに楽しみたいと思います。

 今回の指揮者は、2015年10月の第92回、2016年5月の第95回、2021年11月の第123回と、これまでに3回新潟定期演奏会に来演し、スピード感・躍動感に溢れる演奏で感動をもたらしたウルバンスキさんです。3年ぶり4回目となる今回のメイン曲目は「展覧会の絵」です。きっと熱い演奏を聴かせてくれることでしょう。
 そして、今回ピアノで共演するのは、昨年11月にりゅーとぴあに来演してくれた人気ピアニストの小林愛実さんです。9月15日に柏崎でリサイタルを開催されたばかりですので、新潟県としては3週間ぶりの来演となります。私が好きなラヴェルのピアノ協奏曲を、ウルバンスキさんとともに、どのような演奏で聴かせてくれるのか期待が高まりました。
 ちなみに、東響新潟定期演奏会で「展覧会の絵」が演奏されるのは、2013年5月の第77回(指揮:ヴェデルニコフ)、2018年1月の第105回(指揮:飯森範親)、2021年7月の第121回(指揮:鈴木優人)以来、3年ぶり4回目です。
 また、ラヴェルのピアノ協奏曲は、2016年3月の第94回(指揮:飯森範親、ピアノ:萩尾麻未)以来、8年半ぶり2回目になります。

 今日の定期演奏会は、昨日ミューザ川崎で開催された名曲全集第200回と同じプログラムです。昨日はチケット完売で、大きな盛り上がりを見せたようですが、今日はどのような演奏会になりますか、大いに期待したいと思います。

 13時からの「東響ロビーコンサート」を聴き、りゅーとぴあを後にして、白山公園を抜けて、古町通りをゆっくりと歩きました。
 古町6番町ではゴスペルのライブで盛り上がっており、混雑を横目に柾谷小路を渡って7番町へと向かいました。
 ここでは、「Furumachi classic festa in mall 7」が開催中で、アンサンブル槙木の皆さんの演奏で盛り上がっていました。
 屋外のコンサートですので、当然ながらPAが使用されていましたが、多彩な楽器とソプラノの見事な演奏に、引き込まれました。最後にはブラボーの声も上がって、素晴らしい演奏を讃えました。

 その後は、再び古町通りをゆっくりと歩き、白山公園でひと休みして、りゅーとぴあ入りし、6階のラウンジでロビーコンサートの原稿を書き上げて、開場時間が迫ったところで2階に降りました。

 ロビーは開場を待つ人たちで賑わっていました。開場開始とともに、開場の列に並んで入場し、席に着いてこの原稿を書きながら開演を待ちました。ステージには既にピアノが設置されていました。
 客席で音楽仲間にお会いしましたが、札幌遠征のお土産をいただきました。いつもありがとうございます。この場で改めまして、お礼申し上げます。

 16時半になり、榎本さんが登場して、楽団長の廣岡さんを呼んで、恒例のプレトークが始まりました。廣岡さんにより、拍子についての話がありましたが、「展覧会の絵」の拍子の複雑さ、面白さを、榎本さんの歌を交えて解説してくれて、興味深く拝聴しました。ラヴェルのピアノ協奏曲の拍子の話も面白く、4分の3拍子と8分の6拍子との違いも面白かったです。
 その他、イングリッシュホルンの浦脇さんの話や、ウルバンスキさんの話などがあり、質問コーナーでは、チューニングの手順で、なぜオーボンエで始まるのか、その後のチューニングの順番なども興味深く、楽器は自前なのかなども面白かったです。そして、榎本さんの美声も聴けたのも良かったです。

 その後、ステージ上では、団員の皆さんが音出しを始め、気分も盛り上がってきました。今日の演奏会は、今シーズンの演奏会の中でも一般受けしやすいプログラムであり、昨日の川崎での公演はチケット完売でしたので、集客がどうなるのか楽しみでした。

 開演時間が近づくにつれて客席は次第に埋まり、いつもより集客は明らかに良かったですが、右側のサイド席には、若干空席が目立ちました。左側はびっしりでしたので、小林さん目当ての客が多いものと推測されました。
 もっと集客が期待できるプログラムだと思ったのですが、今の新潟では、これが精一杯でしょうか。それはさておき、私のすぐ近くに廣岡団長が着席されて、いよいよ開演です。

 拍手の中に団員が入場。最後にニキティンさんが登場して、大きな拍手が贈られ、ピアノの音を出してチューニングとなりました。
 オケの配置は通常型で、弦は12型でしょうか。指揮者用の譜面台が用意されていて、大きなスコアが置かれていました。ピアノにも譜面台が設置されて、楽譜が用意されていました。

 赤いパンツスーツの小林さんと、長身でイケメンのウルバンスキさんが登場して、1曲目は、コネッソンの「輝く者−ピアノと管弦楽のための」です。
 2008年に作曲され、2009年3月にグラスゴーで初演された曲ですが、ジャン=イヴ・ティボーテの委嘱により「ラヴェルのピアノ協奏曲続編」として作曲されたそうで、3つの楽章が連続して演奏されます。今回が日本初演だそうですが、昨日川崎で演奏していますので、厳密には2回目ということになりましょうか。
 かすみ立つような幽玄なオケの響きに始まり、ざわめき始め、ミステリアスなピアノが加わりました。きらめくような、色彩感を感じさせる音楽は、現代曲らしからず、美しく、聴きやすい音楽で、確かにラヴェルの流れを汲んでいるなあなどと愚考しました。
 第2楽章は、ゆったりと、穏やかに、心に沁みる音楽にうっとりとしました。第3楽章は、再び軽やかなリズムで走り出し、熱を帯びた興奮の中にフィナーレとなりました。
 10分弱のコンパクトな曲ながらも、ピアノとオーケストラが溶け合って、ピアノ協奏曲を聴いたという満足感が得られ、大いに楽しめました。
 本編のラヴェルのピアノ協奏曲へのリスペクトが感じられ、同じような空気感を漂わせる美しい曲でした。2008年に作曲されたという現代曲ですが、非常に親しみやすい曲で、この1曲だけでも十分に楽しめました。

 大きな拍手が贈られて、カーテンコールの後、指揮台前の譜面台から大きなスコアが片付けられて、ラヴェル用の小さなスコアが残されました。
 ピアノの譜面台と楽譜が片付けられ、団員の入れ替えがあって、チューニングとなり、いよいよラヴェルのピアノ協奏曲です。

 小林さんとウルバンスキさんが登場して演奏開始です。ムチの音とフルート・ピッコロ、ピアノのトレモロで演奏が始まりました。ジャズテイストを醸し出し、ゆったりと音楽が流れ、ピアノとオケが絡み合って軽快に走り始めました。緩徐部での情感豊かな美しさも格別です。蒸気機関車が駆け抜けるような疾走感・爽快感の中に、第1楽章が終わりました。
 長大な、穏やかで、ゆったりとしたピアノ独奏で始まる第2楽章。夢幻の世界に身を委ね、心は彼岸の世界へと誘われました。プレトークで話題に出た、浦脇さんのイングリッシュホルンを始め、木管群の美しさは特筆すべきものでした。
 そして、ドラムロールと金管の合図とともにピアノが走り出し、第3楽章へ。一転して、スピード感のある賑やかさの中に始まり、各パートともエンジン全開。途中「ゴジラのテーマ」を奏でながら猛スピードで突進し、興奮のフィナーレへと走り抜けました。
 小林さんのピアノは、熱く爆発するという感じでは全くなく、上品さを失わず、リミッターがかかったような、抑制された印象で、色彩感豊かというより、セピア色の落ち着いた音という印象でした。
 この印象は、昨年のリサイタルの印象ともつながります。これが第2楽章の、この上ない絶品の美しさを引き出していました。この楽章を聴けただけでも良いと思うほどでしたが、両端の楽章は、もっとパワフルに爆発しても良かったかなと感じました。この点では偏屈者の私の好みからは若干ずれてはいましたが、良い演奏には違いありません。
 ちなみに、この曲の私のお気に入りは、野田恵の演奏です。この演奏を聴いて、この曲が好きになりましたから。

 大きな拍手に応えて、小林さんが、アンコールとしてショパンのノクターン第20番を切々と演奏し、先ほどのラヴェルの興奮を鎮め、しっとりと心に沁み渡る感動を与えてくれました。このショパンは絶品と言えましょう。しばしの静寂の後に、割れんばかりの拍手が贈られました。

 休憩後の後半はムソルグスキー/ラヴェル編曲の「展覧会の絵」です。9月28日の「5台ピアノの秘密」で、中川賢一さんによるこの曲に関しての詳しい解説を聞いたばかりですので、多少ながらも曲への理解が深まっていて、期待が高まりました。
 弦は若干増員されたようで、14-12-10-8-7 となりました。ハープが2台にチェレスタ、様々な管楽器に、多彩な打楽器と、ステージを見るだけで気分は高まります。指揮台前の譜面台は片付けられており、暗譜での指揮になります。
 ウルバンスキさんが登場して演奏開始です。冒頭のローリー・ディランさんのトランペットが美しく響き渡り、総天然色の音楽絵巻が始まりました。
 助演も多いようでしたが、東響の管楽器群がその実力を遺憾なく発揮し、サックスやテナーテューバなど、重要な聴かせどころもばっちりでした。トロンボーンとテューバの地を這うような重厚なサウンドも聴き応えありました。多彩な打楽器群の演奏効果も素晴らしかったです。各曲の対比も鮮やかで、最後に鐘が左右で鳴り響き、豪華絢爛、壮大なフィナーレを迎えました。
 否が応でも胸は高鳴り、ホールは熱狂と興奮で満たされました。少しゆっくりめで、メロディの歌わせ方などに、あれっと思わせる独自性がありました。各曲が切れ目なく滑らかにつながり、ウルバンスキさん独自の味付けがなされ、これが新鮮な感動を生んでいました。もちろん東響の皆さんの抜群のパフォーマンスがあってのこと。特に超絶的なトランペットは良かったですね。
 ホールを満たす大音量のオーケストラサウンド。これはコンサートホールで生で聴いてこそ味わえる感動と喜びです。客席は満足感と興奮で満たされ、大きな拍手とブラボーが贈られました。

 カーテンコールでは撮影可でしたので、私も撮影させていただきました。最後は、ウルバンスキさんの指示でステージ後方のP席にも全員で礼をして、感動と興奮の演奏会は終演となりました。

 ラヴェルの続編としてのコネッソンの「輝く者」、そしてラヴェルのピアノ協奏曲にラヴェル編曲の「展覧会の絵」と、ラヴェルつながりの考えられたプログラム構成も良かったですし、東響から素晴らしい音と演奏を引き出したウルバンスキさんの手腕の凄さを再確認しました。来年度の来演予定がないのが残念ですが、またの来演を期待したいと思います。

 終演後のアフタートークには参加せず、良い音楽を聴いた満足感を胸に、駐車場へと歩みを進めました。明日からあわただしい1週間がまた始まりますが、エネルギーチャージできて良かったです。


(客席:2階C*-**、S席:定期会員:\6100)