クァルテット・インテグラ
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2024年9月16日(月) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
クァルテット・インテグラ
 第1ヴァイオリン:三澤響果、第2ヴァイオリン:菊野凛太郎
 ヴィオラ:山本一輝、チェロ:パク・イェウン
 
シューベルト:弦楽四重奏曲第7番 イ短調 「ロザムンデ」Op.29, D804

(休憩15分)

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 「ラズモフスキー第1番」Op.59 No.1

(アンコール)
シューベルト:弦楽四重奏曲第9番 第2楽章

 今回は、久しぶりに弦楽四重奏の演奏会です。弦楽四重奏といえば、最近では昨年10月のジュリアード弦楽四重奏団、今年6月のヴォーチェ弦楽四重奏団と、行く予定でチケットを買っていたものの、仕事で行けず、チケットを無駄にしてしまいましたので、今回こそはと意気込んでいました。
 チケットは、東響定期会員向けの割引セット券を購入していました。席は選べませんでしたが、1階席後方の良い席が割り当てられました。

 クァルテット・インテグラは、不勉強は私は、これまでその名前すら知りませんでした。2015年に桐朋学園在学中に結成され、今年結成9年を迎えた若い弦楽四重奏団ですが、ミュンヘン国際音楽コンクール第2位、バルトーク国際コンクール第1位など、数々のコンクールの受章歴を誇り、アメリカやヨーロッパでも活発な演奏活動をしており、現在はロサンゼルスを拠点としているそうです。
 なお、チェロは、今年になってから当初のメンバーの築地杏里さんからパク・イェウンさんに変更になっています。

 と、演奏会に期待していたのですが、連休ながらも昨日から仕事が入り、昨日の東京交響楽団第138回新潟定期演奏会には行けず、今日のこの演奏会も、当初は行けない予定だったのですが、幸いにして、予定が調整できて、この演奏会には行けることになりました。ありがたかったです。

 仕事を終えて、某所で休憩して昼食を摂り、白山公園駐車場に向かいました。昨日の雨が嘘のように空は晴れ渡り、強い日差しの中に、りゅーとぴあ入りしました。
 少し早めでしたので、東ロビーから外に出て、信濃川べりを散歩しました。雄大な川の流れを見ていますと、私のストレスなど些細なことにしか感じられず、気持ちが癒されるように感じました。

 館内に戻りますと、すでに開場されていましたので、私も入場しました。席に着いて開演を待とうと思いましたが、すでに私の隣の席にはほかの客が着席されており、密着するのもはばかられましたので、開演時間までロビーの椅子に座ってこの原稿を書いていました。

 今日のプログラムは、前半がシューベルトの弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」、後半がベートーヴェンの弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」です。
 同じ都市に住み、ベートーヴェンに憧れ、影響を受けたシューベルト。この2人の弦楽四重奏曲を並べたことには大きな意味があるのでしょうね。
 この2人の関係については、偶然にも、つい先日の仲道郁代さんのリサイタルで解説がありました。2人は直接の交流はなかったものの、ベートーヴェンの葬儀では、シューベルトがベートーヴェンの棺を先頭で担いだそうで、シューベルトのベートーヴェンへの尊敬の念がうかがわれます。
 この仲道さんのリサイタルでは「4つの即興曲」が取り上げられましたが、その曲集の中にも「ロザムンデ」の主題が使用された曲がありました。偶然とはいえ、つながりを感じます。

 さて、開演のアナウンスとともに着席しましたが、私の周囲は混み合っていたものの、客席はかなり余裕があり、空席が目立ち、少し寂しく感じました。弦楽四重奏の演奏会には、コンサートホールは大きすぎたかもしれませんね。音楽文化会館がちょうど良さそうですが、休館中ですから仕方ないですね。

 時間となり、4人が登場。左から第1ヴァイオリン:三澤響果さん、第2ヴァイオリン:菊野凛太郎さん、チェロ:パク・イェウンさん、ヴィオラ:山本一輝さんです。第1ヴァイオリンとチェロの女性2人は、赤いパンツルックです。

 前半はシューベルトの弦楽四重奏曲第13番です。第1楽章は、ゆったりと歌わせて始まり、緩急を繰り返し、緩徐部での切なく悲し気なメロディ、ときおりそれを切り裂くように感情の高ぶりをみせ、その対比を鮮やかに演奏していました。
 ゆったりと穏やかな中に秘められた切々たる思いが、胸に迫りました。緩急のメリハリも素晴らしく、弦楽四重奏団としての素晴らしさ、そして各奏者の素晴らしさが伝わってきました。
 第2楽章は、ゆったりと優しく、お馴染みの「ロザムンデ」のメロディが奏でられました。一昨日に仲道さんのピアノで聴いたばかりですが、優しく、ときに激しく、メロディを歌い上げました。
 第3楽章は、チェロの低音に導かれて、ためらいを見せながら、どこか悲し気に、心の内を吐露しました。感情のうねりに浮かぶ小舟のように揺れ動く中に楽章を閉じました。
 第4楽章は、明るく軽快さを取り戻し、おどけるようにステップを踏み、緩急・強弱のメリハリが心地良く響きました。激しく足を踏み鳴らすように感情を高ぶらせ、押し寄せる緩急の波の中にフィナーレとなりました。
 桐朋学園在学中の2015年に結成された若い弦楽四重奏団ながらも、卓越した演奏技術と音楽表現に驚くとともに、音楽世界に引き込まれました。

 休憩後の後半は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」です。第1楽章は、激しくリズムを刻んで演奏を開始し、緩急を大きく揺り動かし、大きくアクセントをつけて、穏やかな中にも緊張感を生みました。その心地良い緊張感を感じながら、美しい弦楽の音色に浸りました。
 第2楽章は、細かく刻むリズムが心地良く感じられました。この楽章も、大きく緩急・強弱を揺り動かして、小気味良さを感じました。乱れのないアンサンブルの素晴らしさ、激しさと弱音の対比の鮮やかさ、メリハリのはっきりした演奏は全く飽きさせません。一瞬たりとも気が抜けず、機関銃の連射の如く、これでもかと攻め込んできました。
 第3楽章は、ゆったりともの悲しく歌い、繰り返される切々とした訴えが胸に迫り、美しいサウンドに酔いしれました。
 シームレスに移行した第4楽章は、激しいリズムとともに、力強くエネルギーを増して行き、スピードアップを繰り返して、幾重ものうねりを作り出しました。どんどんと加速して全力疾走し、休む間もなくゴールへと突き進みました。一瞬立ち止まり、再びスピードアップしてフィナーレを迎えました。
 大きな拍手とブラボーが贈られ、その演奏を讃えました。躍動感、生命感にあふれる演奏は、心地良いものでした。弦楽四重奏には疎い私ですが、飽きることなく集中して聴くことができました。

 カーテンコールが繰り返された後、第1ヴァイオリンの三澤さんの挨拶があり、現在ロサンゼルスを拠点に活動していること、昨日新潟入りしたこと、新潟は初めてであることなどのお話がありました。
 そして、アンコールにシューベルトの弦楽四重奏曲第9番の第2楽章が演奏されました。優しくゆったりと歌い、極上のデザートをプレゼントしてくれて、感動の演奏会は終演となりました。

 奏でる音の美しさ、曲の歌わせ方がお見事であり、曲の良さを見事に表現してくれました。こんなにも楽しませてくれた弦楽四重奏団がこれまであっただろうかと振り返りながら、大きな感動を胸にホールを後にしました。

 今回まで名前すら知らなかった弦楽四重奏団でしたが、演奏を聴くことができて良かったです。このような演奏家を見い出し、招聘したりゅーとぴあの担当者の慧眼を称賛したいと思います。
 

(客席:1階13-18、S席バリューパック:\2700)