石田泰尚×津田裕也 
ベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会 Part 1
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2021年9月26日(木)13:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ヴァイオリン:石田泰尚
ピアノ:津田裕也
 
ベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ

 第1番 ニ長調 Op.12-1
 第2番 イ長調 Op.12-2

 (休憩15分)

 第3番 変ホ長調 Op.12-3

 (休憩15分)

 第4番 イ短調 Op.23
 第5番 ヘ長調「春」 Op.24

 昨年はベートーヴェン生誕250年というメモリアル・イヤーでしたが、新型コロナ感染の拡大により、記念イベントの数々は中止せざるを得ませんでした。この公演も本来なら昨年開催されるはずでした。

 1年遅れの今年は感染と共存しながら、数々の記念公演が行われています。りゅーとぴあでも、先週土曜日の長富彩さんのベートーヴェン三大ピアノ・ソナタの演奏会に始まり、日曜日の東響新潟定期のオールベートーヴェンプログラム、そして今日の演奏会というベートーヴェンウィークが企画されました。

 今日は、1日でベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを全曲演奏するという画期的な、といいますか、ちょっとクレイジーにも思える演奏会です。
 Part 1、Part 2 に分けて、それぞれ5曲ずつ計10曲を、休憩を挟みながら13時から20時30分までの予定で演奏されます。演奏する方もさることながら、聴く方も体力勝負となります。

 これに挑戦するのは、石田泰尚さんと津田裕也さんです。この二人によるベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会は、2018年3月に、横浜みなとみらいホール(小ホール)で開催されて話題となりました。これを新潟でもやってほしいと二人に依頼して、1年遅れで実現したのが今日の演奏会です。

 さて、石田さんは神奈川フィルのソロ・コンサートマスターとして活躍するほか、京都市交響楽団の特別客演コンサートマスターも務めており、5月にネット配信された京響の定期演奏会でも存在感たっぷりでした。
 そのほか、弦楽アンサンブルの石田組や他のアンサンブルのメンバーとして、度々新潟に来演しており、最近では東京グランド・ソロイスツのメンバーとして、5月に新潟に来られたばかりです。
 
 一方、津田さんは、2009年5月にりゅーとぴあで開催されたヴァイオリンの松山冴花さんとのコンサートで初めて聴き、その後は聴く機会はありませんでした。

 ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタといっても、標題付きの「スプリング・ソナタ」や「クロイツェル・ソナタ」くらいしか知らない私ですので、CDは何組か持っているものの、全曲を1日でまとめて聴くのは今回が初めてです。
 私の年齢を考えれば、もう二度とこういう機会はないと思われますので、このチャンスを大事にしたいと思い、早々にチケットを買って楽しみにしていました。


 今日は秋分の日。昨日は雨が降り、どうなるかと心配しましたが、今日は天候が回復し、暑すぎることもなく、過ごしやすい休日になりました。
 長期戦に備えて、いつもの上古町の楼蘭で極上の冷やし中華を大盛りでいただき、りゅーとぴあへと向かいました。中に入りますと、すでにコンサートホールは開場されており、インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、検温と手の消毒をして入場しました。
 ちょっとマニアックなプログラムであり、長時間のコンサートになりますので、どうかなと思いましたが、次第に客席は埋まり、なかなかの集客のようでした。
 開演までの間、プログラムを読みましたが、飯尾洋一さんの解説が非常に分かりやすく、勉強になりました、第1番から第9番までは6年間で書かれているものの、次の10番まで9年もかかっているんですね。

 開演時間となり、黒い衣裳の石田さん、津田さん、譜メクリストが登場。石田さんはいつものように、背中を丸めた姿勢で、前かがみで登場しました。さすが組長!

 まずは、第1番と第2番です。次の第3番とともに、作品12の3作で、サリエリに献呈された作品だそうです。ヴァイオリンは控えめで、ピアノが前面に立つような曲です。
 石田さんの容姿とは裏腹の、繊細な音色で聴かせてくれました。2曲とも似たような曲調ですが、2番の方が味わい深く感じました。第2楽章は泣かせてくれました。ちょっと小粒なこの2曲もなかなか魅力的ですね。

 休憩を置いて第3番です。これは前の2曲より聴き映えする曲でした。第1楽章から堂々とした感じで、風格を感じさせます。
 ここまでの作品12の3曲は、ヴァイオリンよりピアノの比重が高く、安定感があり、力強い津田さんのピアノの上に、ヴァイオリンが舞うかのような印象でした。解説にありましたが、確かにヴァイオリン付きのピアノ・ソナタという印象です。そういう意味でも、津田さんのピアノが引き立っていました。

 2度目の休憩の後は、第4番と第5番です。この2曲は、本来いっしょに出版されるはずだったそうです。第4番は、前3作とは異なり、短調の曲であり、第1楽章は、陰影も感じさせ、劇的で、奥深さも感じさせました。第2楽章は明るさを感じさせ、第3楽章は再び暗い空気が流れながらも、熱く燃え、ちょっと不完全燃焼のなかに曲を閉じますが、ヴァイオリンとピアノが対等に渡り合い、なかなか魅力的な曲ですね。

 第5番「春」は、さすがにいい曲ですね。これまでの曲と異なって明るく親しみやすく、人気曲だけはあります。まさに春の気分です。ここまでは日頃聴かない曲でしたので、漸く馴染みの曲になり、ほっとしました。
 演奏はこれまでの印象と同様に、ピアノに比してヴァイオリンが繊細で抑え気味に感じられましたが、メロディをたっぷりと歌わせて、明るく爽やかな音楽で楽しませたくれました。

 これで全曲演奏会の Part 1 の終了です。ピアノは豊かに響いていましたので、もう少しヴァイオリンの音量が欲しかったかなと思いましたが、ホールが大き過ぎたためかも知れません。もう少しコンパクトなホールだともっと違った印象だったかも知れませんね。

 ここまで2時間以上経過しており、飽きるかと思ったのですが、決してそんなこともなく、楽しませていただきました。二人の演奏の賜物と思います。後半は17時の開演です。それまでひと休みすることにしましょう。

  

(客席:2階4-5、セット券:¥3000)