新潟交響楽団第112回定期演奏会
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2024年6月9日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:平川範幸
ヴァイオリン:須山暢大(大阪フィル・コンサートマスター)
 
シューマン:歌劇「ゲノフェーファ」序曲
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
(ソリストアンコール)
J.S.バッハ:独奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番より アンダンテ

(休憩15分)

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
 今日は、新潟交響楽団の定期演奏会です。昨年11月の第111回定期演奏会は、チケットを買っていて当日りゅーとぴあへ向かったものの、駐車場はどこも満車で、何度も周辺を走り回りましたが空きを見つけられず、参加を断念しました。
 その前の昨年6月の第110回定期演奏会は、北区フィルの定期演奏会と重なり、苦渋の決断で断念し、さらにその前の2022年11月の第109回定期演奏会は、チケットを買っていたものの健康上の理由により行けませんでした。
 従いまして、潟響を聴くのは2022年6月の第108回定期演奏会以来となりますので、実に2年ぶりになります。随分とご無沙汰してしまいました。
 その第108回から平川範幸さんが指揮をしており、今回も熱い演奏を聴かせてくれるものと期待しました。前半には、私が好きなブラームスのヴァイオリン協奏曲が演奏されるので、これも楽しみでした。

 昨日の新潟A・フィルハーモニックの感動の演奏会の記事が書き上がらないまま朝を向かえ、10時前になって漸くできあがりました。年をとるに従って、文章がどんどんと長くなって、まとまりきらず苦労しています。

 今日も薄い雲は広がっていますが、好天に恵まれました。雑務をこなし、簡単に昼食済ませて家を出て、りゅーとぴあへと向かいました。
 前回はイベントが重なって駐車場に入れませんでしたが、今回は混雑もなく、スムーズに駐車できました。むっとするような蒸し暑さの中に入館しますと、開場待ちの列ができ始めており、その列に並んで開場を待ちました。
 
 開場時間となり入場しましたが、2階正面は指定席になっていましたので、左のDブロックに席を取り、この原稿を書きながら開演を待ちました。開演時間が近付くに連れて席は次第に埋まり、なかなかの入りと言えましょう。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ちましたが、コンマスは一番最初に入場していました。
 全員揃ったところでコンマスが一礼してチューニングとなりました。コンマスは近藤将弘さんで、私がご無沙汰している間に、永遠のコンミスと思っていた松村さんがいなくなったのですね。寂しさを禁じ得ませんでした。オケは通常の配置で、弦5部は 13-12-9-8-8 です。

 平川さんが登場して、1曲目はシューマンの「ゲノフェーファ」序曲です。初めて聴く曲でしたが、美しい弦楽アンサンブルに感嘆し、堂々とした風格ある演奏に引き込まれました。コンサートの最初から聴き応えある演奏を聴かせてくれて、いい出だしでした。

 ステージが整えられて、2曲目はブラームスのヴァイオリン協奏曲です。独奏の須山さんと平川さんが登場して演奏開始です。
 長い序奏に導かれて独奏が入りましたが、しっとりとして重厚感のあるオケに比して、ヴァイオリンは艶やかさ欠けて、ちょっと枯れた音に感じました。緊張感溢れるヴァイオリンは、質実剛健で、実直な演奏でした。
 カデンツァでも直球勝負で、脇目も振らず、直進し続けました。このカデンツァは、通常のヨアヒム版ではなく、クライスラー版だったそうです。最後に多少の甘さを見せ、オケが加わって穏やかな空気感を醸し出し、楽章を閉じました。
 ここで大きな拍手が客席全体から沸きあがりましたが、聴き慣れていない人が多いのでしょうね。新しい客層を開拓できているようで、良いことだと思います。
 第2楽章は、一番の聴かせどころの冒頭のオーボエが頑張ってくれました。その後は、私が勝手に期待するロマンチックさもほどほどで、抑制された演奏に感じました。
 ギアチェンジして第3楽章へ。エネルギーに溢れるオケとともに、ヴァイオリン独奏も力強さを増し、ともに高め合いながら熱量を増していきました。ヴァイオリンは若干線が細い印象でしたが、オケは素晴らしく、見事な演奏だったと思います。

 大きな拍手に応えて、アンコールとしてバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番のアンダンテが演奏され、平川さんもホルンの隣に座って聴いていました。
 弱々しさ、不安定さと裏腹に感じましたが、重音の響きが穏やかに、しっとりと感じられ、コンチェルトの興奮を鎮めてくれました。

 休憩後の後半は、チャイコフスキーの「悲愴」です。拍手の中に団員が入場。後半もコンマスは最初から着席し、全員揃ったところで起立してチューニングとなりました。コンマスが近藤さんに代わって、こういうやり方に変更したのでしょうか。
 コントラバスとファゴットの重低音で演奏が始まりました。最初の出だしが不安定なパートがあり、あれっと思う場面があり、アマオケらしさも感じられましたが、その後は持ち直して、見違えるような安定した演奏が続きました。
 金管が炸裂し、甘美な弦楽のメロディの後の木管もお見事でした。聴かせどころのクラリネットの下降音がファゴットに引き継がれる場面も無難にこなし、迫力の全奏音で後半に突入しました。
 パワーと緊張感に溢れるオケが、スピードも速めにグイグイと突き進み、嘆きの音楽を作り上げました。最後は美しいピチカートとともに金管のコラールが美しく響き、静かに楽章を閉じました。
 第2楽章は、入りの乱れが若干あったものの美しいワルツが流れました。ちょっと早めで、アンサンブルが付いていけない面も垣間見えましたが、うまくまとめてくれました。
 第3楽章は、きびきびとリズムを刻み、オケは大爆発。大太鼓とシンバルもばっちりと決まり、大音響とともに興奮を誘いました。
 予期したことではありましたが、ここでぱらぱらと拍手が起こり、第4楽章へと続きました。嘆き悲しむ思いが幾重にも重なり、やがてその悲しみに耐え切れなくなり、感情を爆発させ、泣き疲れた後には重苦しい空気が立ち込めました。消えゆくコントラバスとともに無音の静寂が訪れ、指揮棒を下ろすとともに拍手が沸き起こりました。
 各楽章の対比も鮮やかであり、平川さんの曲作りと、それに見事に応えた潟響の素晴らしさに感動しました。聴き応えある演奏に胸を熱くし、力の限りに拍手を贈りました。

 前半も後半も、いい演奏だったと思います。アマオケ、市民オケということを忘れさせる場面も多々あって、感動のひとときを過ごすことができました。いい演奏会でした。

 大きな胸の高鳴りとともにホールを出ますと、県民会館周辺にはたくさんの若者がおられました。昨日も同じような若者が目立ったのですが、調べてみますと、昨日・今日と、人気アニメのイベントが県民会館で開催されているようでした。賑わっていて何よりと思います。

 次の演奏会は、11月24日(日)に開催される第113回定期演奏会です。指揮は平川さんでなく、永原裕哉さんで、オネゲルの「パシフィック231」、シベリウスのカレリア組曲、ベートーヴェンの「田園」が予定されています。その後も、12月22日(日)の第23回新潟第九コンサート2024が控えています。そちらの指揮は平川さんです。
 これからも潟響の演奏を楽しみに待ち、その進化を見届けたいと思います。
 
 
(客席:2階D5-31、自由席:¥1000)