新潟大学管弦楽団第60回定期演奏会
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2023年12月9日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:河地良智
 
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲

ビゼー:カルメン組曲より
    闘牛士、前奏曲、アラゴネーゼ、間奏曲、ハバネラ
    闘牛士の歌、ボヘミアの踊り

(休憩15分)

シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品46

(アンコール)
チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より ワルツ


 今週は晴れたり、大荒れになったり、目まぐるしい日々でしたが、今日は朝から晴れ渡り、関東の冬晴れのように、快晴の空が気持ちよい土曜日になりました。
 天気が良いと心も軽くなり、日光を身体に受けて青空を眺めていますと、ふさぎこんでいた心も元気を取り戻しそうです。束の間の好天を満喫しましょう。
 ということで、行楽に出かけるにも最適な天候になりましたが、今日は新潟大学管弦楽団の定期演奏会に参加させていただくことにしました。

 さて、新型コロナ禍は、学生オケの活動にも多大な制限をもたらし、2019年12月の第56回定期演奏会とそれに続く第9回東京公演を最後に、長期に活動が休止されました。
 2020年は対外的な活動はなく、2021年にオケとしての活動が再開されても、有観客での演奏会は開催できず、第58回定期演奏会は無人のホールからの配信を視聴させていただきました。
 2022年6月の第43回サマコンサートから、新潟県在住者に限定して人数を絞って有観客での演奏会が再開され、私はホールでは聴けませんでしたが、WEB配信を聴かせていただきました。
 そして、2022年12月の第59回定期演奏会から、一般公開の有観客での演奏会が再開されましたが、常任指揮者の河地さんは招聘できず、学生指揮による演奏でした。
 今年度になって、漸く河地さんを招いての練習が再開され、7月の第44回サマーコンサートから、河地さんの指揮による演奏会が再開されました。
 そして、今日の第60回定期演奏会が、コロナ禍後初めての、河地さんの指揮による、4年ぶりの本来の姿の定期演奏会であり、記念すべき演奏会といえましょう。

 一応私は新潟大学OBの端くれですので、十分に活動できなかったまま卒業しようとする学生たちのこれまでの苦労を思い、学生たちを応援するために参加させていただくことにしました。
 実は同じ時間に隣の新潟県民会館では「西川悟平インクルーシブコンサート」が開催され、そちらも気になっていたのですが、こちらを選ばせていただきました。

 今日は朝から快晴の空。気温も高く、春が来たかのような過ごしやすい陽気になりました。上古町の某所で昼食をいただき、好天に誘われて白山公園を散策し、新潟県民会館に行きますと、玄関前の鳳凰が青空に映えて輝いていました。
 奥の受付で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあに入館しますと、開場の列ができていましたので、私もその列に並んで開場を待ちました。
 程なくして開場となり、早々に入場し、2階正面に席を取り、ロビーコンサートを聴かせていただきました。木管楽器アンサンブルとトロンボーンのアンサンブルが残響豊かなロビーにこだまして、美しく響いていました。

 客席に戻り、この原稿を書きながら開演を待ちましたが、客の入りはほどほどでしょうか。若者たちのほか、私のような高齢者もかなりおられました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。最後にコンミスが登場しましたが、一礼なしで、すぐに客席に背を向けてチューニングになりました。先輩として申し上げるなら、ここは一礼があった方が良いかと思います。

 1曲目は、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲です。この曲は、はるか昔の新潟大学の入学式の式典演奏で聴き、今振り返れば、これが新潟大学管弦楽団との初めての出会いでしたので、想い出の曲と言えましょう。
 オケの編成やメンバーは曲ごとで変わり、曲ごとのメンバー表が配布されましたが、この曲では、弦5部は、7-10-7-10-7 というアンバランスな編成です。河地さんが登場して演奏開始です。
 弦の少なさ、アンバランスさが演奏にも現れれており、低弦は良く響いていましたが、高音域のボリュームがなくて、メロディラインが聴こえてこない場面が所々あったのが気になりました。でも、十分に聴き映えする音楽に仕上がっていたと思います。

 団員が全員下がって、新たな編成で入場し、2曲目はビゼーの「カルメン組曲」から7曲演奏されました。弦5部は、7-10-10-10-8 という編成に変わりました。
 この曲でも第1ヴァイオリンの少なさが気になりましたが、聴かせどころのフルートやオーボエが素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。一部力尽きたようなパートもあり、少々はらはらもしましたが、頑張って踏みとどまって、楽しませてくれました。

 休憩後の後半はシベリウスの交響曲第2番です。拍手の中に団員が入場し、最後にコンマスが登場しました。コンマスは男性に代わりましたが、前半同様に一礼なしですぐに客席に背を向けてチューニングに入りました。ここはやはり一礼があるとうれしいですね。
 弦5部は、12-9-8-9-6 となり、前半に比べればバランスの良い編成になりました。河地さんが登場して演奏開始です。
 弦がいわゆる12型となり、第1ヴァイオリンが増えた分だけ音に厚みを増して、アンサンブルも前半よりきれいになり、前半とは別のオケではないかと感じるほどでした。緊張感を保ち続けた引き締まった演奏の中に第1楽章を終えました。
 第2楽章は、冒頭の低弦のピチカートとファゴットの絡みも無難にこなし、金管のコラールも美しく、長大な楽章を重厚さの中に閉じました。
 第3楽章は、緊迫感の荒々しい暗闇から、一条の光がさすような木管による牧歌的メロディが美しく歌われました。荒波を越えて高揚し、切れ目なく第4楽章へとつながりました。
 勝利のテーマを奏で、さまざまに曲が展開された後、静けさの中から次第に力がみなぎり、壮大に朗々と勝利のテーマを歌い上げて熱量を増し、感動と興奮を誘ってフィナーレを迎えました。

 会場からは大きな拍手が贈られて、学生たちの頑張りを讃えました。河地さんとコンマスに花束が贈呈され、私も力の限りに拍手しました。
 カーテンコールの途中に団員が増強され、河地さんの挨拶の後、アンコールとしてチャイコフスキーの「ワルツ」が演奏されました。
 新型コロナ前最後の定期演奏会のアンコールもこの曲であり、新型コロナからの開放の喜びと、新たな出発への願いが込められた選曲ではないかと勝手に思っています。
 緊張感から開放されたのか、素晴らしい演奏だったと思います。先週東京交響楽団で聴いたばかりでしたが、学生さんたちの演奏も決して引けを取るものではなく、楽しく聴かせていただきました。最後はしっかりとコンマスの一礼があって、感動の奏会は終演となりました。

 挨拶で河地さんも話されておられましたが、コロナ禍で練習もままならず、現在の上級生たちは苦しい部活動を強いられてきました。河地さんが指揮するようになったのは今年のサマーコンサートからであり、そんな厳しい状況下で、今日の演奏を成し遂げたことは賞賛したいと思います。

 学生オケの宿命として、毎年団員の入れ替わりがあり、毎年別のオケともいえます。とんでもない名演を聴かせてくれることもあり、それが学生オケを聴く喜びでもあります。来年はどんな曲を、どのように演奏してくれるのか、楽しみにし、陰ながら応援を続けたいと思います。
 

(客席:2階C4-11、¥700)